やっと牧子の暮らしぶりに話題が移り、彼は身構えながら聞き耳を立てた。
「まあ、ねえ。なかなかうまくいかないのよ。何度かお見合いはするんだけど、こればっかりはねえ。
といって、変な妥協だけはしたくないし。もう今じゃ、誰も話を持ってきてくれないわ。
そろそろ三十路も近いことだし、とは思うんだけど。
それに、実家がうるさくって。今、思案中なの」 . . . 本文を読む
ちょっと話がそれますが、長崎県は松浦市海水浴場でのエピソードをふたつほど。
すみませんねえ、いつも。話がそれてばかりで。
そもそも、出雲大社参詣の話なのに、(六)だというのに、まだ岐阜駅に着いたばかりなんですよね。
これから名古屋に行き、そこから新幹線で岡山へ。
岡山からは[やくも13号]に乗り換えて、出雲市へ。 . . . 本文を読む
「おばさん、久しぶり。元気だったあ?」
玄関の床にモップをかけていた管理人は、胡散臭そうな表情でその声の主に顔を上げた。
「あらあ、牧子ちゃんじゃないの。ホント、久しぶりねえ。
あんたこそ、元気だった? 今日はまた、おめかしなんかしちゃって。
ひょっとして、おデートなの?」 . . . 本文を読む
「いいや、諦めた。一晩徹夜したところで、何とかなるさ」
そう呟くと、牧子とのデートに思いを巡らせた。
どうする? 部屋まで来て貰おうか。
待てよ、牧子さんには部屋番号までは教えてないぞ。
やっぱり、外で待つべきか。 . . . 本文を読む
am9:10ごろ
にしても、わたしの住む地区では、毎日のように「ピーポ、ピーポ」ですわ。
大きな団地がありますし、住宅街もありますし。
高齢者が増えてもいますしねえ。
もっとも、かく言うわたしもお世話になりましたが。 . . . 本文を読む
am8:57 9時前でした。
ハハハ、勘違いをしてしまいました。
バスの時刻表で、10:02を見てしまったようです。
どうも決められた予定というのが苦手なわたしだということを、再確認することに。
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土曜日の夜、寝付かれないまま何度も寝返りを打っていた。
相合い傘の中でのことが頭の中を駆けめぐり、興奮状態が収まらなかった。
あの夜もそうであったが、今夜はそれ以上に興奮していた。
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今さら縁結びを求める気はさらさらありませんが、来世では是非とも運命の女と結ばれるべく、お願いの参詣です。というのは建前でして、いつまでひとり旅が続けられるか分かりませんが、旅先でのアバンチュールを求めて…。というのも、実は建前でして。本音は、まあいいじゃないですか。 . . . 本文を読む
「いいわ、迎えに行ってあげる。で、何時?」
「そうだなぁ。十時で、どう?先ず映画を観て、それから食事。その後は、・・。いいや、その時考えよう。」
玄関前での立ち話は、幾人かの住人の挨拶で中断された。”部屋に招き入れようか”とも考えた牧子だったが、さすがに思いとどまった。年下とはいえ、もう立派な大人である。仕事が待っているのも事実であり、少し独りで考えたいこともあった。
「いいわ、そうしましょう。で、どこなのアパートは?」
「うん。〇〇というコンビニ知ってるでしょ?あの角を右に折れて、二つ目の四つ角を今度は左に。まどか荘というアパートなんだ。」
喜々とした表情で、彼は身振りも大きく説明した。
「えっ?!ちょっと待って。まどか荘なら知ってる。二年前まで住んでたの、私。偶然ねぇ。管理人のおばさん、元気してる?うわぁ、懐かしいわぁ。そう、そうなのぉ。」
目を輝かせながら、牧子は彼を見つめた。まじまじと見つめる牧子に、彼は気恥ずかしさを覚えた。
部屋に入った牧子は、大きくため息をついた。仕事が待っているせいではなかった。牧子にとって、人生の岐路に立たされているといっても、過言ではなかった。もうすぐに三十路の声を聞く牧子に対し、田舎の両親から矢の催促が入っていた。
=もういい加減に帰ってきなさい。こちらには、お前のような娘でも貰ってくれるという男性が、たくさんいます。十年ですょ、そちらに行ってから。いい加減にしなさい。=
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「そうなの、独り住まいなの。実は、私もよ。東北の田舎から、上京して来たの」
「だから、牧子さんの肌って、こんなに白いんだあ!」
大仰に体を反らせる彼に、牧子もおどけて返した。
「そうよお。私は、雪の精なのよお」
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