人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ファジル・サイの交響曲第1番を聴く~東響オペラシティシリーズ第82回定期演奏会

2014年10月12日 07時25分45秒 | 日記

12日(日)。モコタロがわが家に来てから15日目を迎えました 

 

          

            小屋の周りに散歩に出たんですけど、なにか?

 

  閑話休題  

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団の東京オペラシティ-シリーズ第82回定期演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「歌劇”後宮からの誘拐”序曲K.384」、②同「ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467」、③ファジル・サイ「交響曲第1番”イスタンブール・シンフォニー”」(日本初演)で、指揮は飯森範親、②のピアノ独奏はトルコの鬼才ピアニスト、ファジル・サイです

 

          

 

なぜ、1曲目にモーツアルトの歌劇「後宮からの逃走」序曲が選ばれたか? それは2曲目がモーツアルトの曲で、3曲目がトルコ出身のファジル・サイが作った交響曲だから つまり、「後宮からの誘拐」はトルコの太守の後宮に捉われの身となっている貴族の娘コンスタンツェを救い出すべくスペインの貴族ベルモンテが活躍する歌劇だから。トルコがらみだからですね モーツアルトはこの時期、コンスタンツェ・ウェーバーとの結婚を控えて多忙だったと言われています。云わば許嫁のコンスタンツェをヒロインにして受け狙いを図った訳ですが、実を言うと、モーツアルトの本命はコンスタンツェではなく、その姉のアロイジア・ウェーバーだったのですね 姉にフラれたしまったモーツアルトは2番手の妹コンスタンツェにプロポーズをしたのです モーツアルトって本当に幸せだったのでしょうか

オケは左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、正面後方にコントラバスという対向配置をとります 古典派の序曲ということで人数的には小編成です。中央には2曲目を見据えてグランド・ピアノがスタンバイしています。コンマスのグレヴ・ニキティンの合図でチューニングが行われ、指揮者の登場を待ちます

飯森範親のタクトのもと軽快な序曲が始まります。トライアングルやシンバルが活躍する極めてトルコ情緒溢れる曲です

指揮者に伴われてソリストのファジル・サイが上下黒の衣装で登場します モーツアルトの「ピアノ協奏曲第21番K.467」は1785年3月に完成しました。この協奏曲は、すぐ前に完成した第20番K.466とよく比較されますが、K.466が短調でデモ―二シュな曲想であるのに対して、K.467は明るく希望に満ちた曲想です

飯森のタクトで第1楽章が開始され、サイのピアノが入ってきます。この曲はなぜか女性奏者で聴く機会が多いのですが、彼女たちの演奏が優雅なのに対し、サイの演奏は優雅とは対極にある力強く元気な演奏です サイはメロディーを口ずさみながら」演奏します。カデンツァは初めて聴く曲想ですが、サイ自身が作ったものでしょう。跳ねるような感じですが、見事な演奏です

第2楽章アンダンテは映画「短くも美しく燃え」で使われた名曲ですが、これぞロマンティシズムの極致といった曲想です サイは第1楽章で見せた力強さから、一転して男のロマンを語ります。そして間を置かずに第3楽章に入りますが、サイは再び力強い元気溌剌な演奏に戻ります。演奏姿を見ていると、モーツアルトを演奏するのが楽しくて仕方がないといった様子が窺えます

会場一杯の拍手 とブラボーに、この日のテーマに相応しいアンコール曲としてピアノ・ソナタ第11番から「トルコ行進曲」を演奏しました あまりの速さと打鍵の強さに圧倒されているうちに、あっという間に終わってしまいました。これでまた会場は興奮の坩堝です

 

          

 

20分の休憩の後はオケのメンバーが拡大し、フルオーケストラがステージ狭しと配置されます コントラバスは左サイドに移ります。指揮者に伴われて、トルコの民族楽器を演奏する3人のソリストが登場します。ブルジュ・カラダーは尺八のような楽器”ネイ”を吹く女性です セルカン・ハリリはチェンバロンのような鍵盤楽器”カーヌーン”を演奏する男性です そして、アイクト・キョセレルリはパーカッションを演奏する男性です

演奏するサイの「交響曲第1番”イスタンブール・シンフォニー”」は、作曲者自身の解説によると「イスタンブールという都市を描いたもの。この美しい都市の本質を捉えることを目指している」という曲です 全体的には「ネイとカーヌーンとパーカッションによる協奏交響曲」とでも言えるような7つの楽章から成る交響曲です

第1楽章「ノスタルジア」は、冒頭の波の音がイスタンブールへの旅に誘う役割を果たします 第2楽章「教団」はサイがリスペクトするストラヴィンスキーの影響があるように思います 反復とリズムが印象的です。第3楽章「ブルー・モスク」はネイが主役になって演奏を展開します 第4楽章「プリンス島行きのフェリーに乗った陽気に着飾った女性たち」はフルートが速いパッセージを奏でます

第5楽章「ハイダル・パシャ駅からアナトリア方面に向かう旅人たちについて」は列車の動きのような曲想が聴かれます 第6楽章「オリエンタル・ナイト」はカーヌーンが、まるで琴の音のように夜の音楽を奏でます そして第7楽章「フィナーレ」を迎えます。ネイもカーヌーンもパーカッションも、すべてが再度活躍し、最後は再び冒頭の波の音に戻り、静かに曲を閉じます

終演後の拍手大喝采とブラボーの嵐を聴きながら日本初演のこの曲について思ったのは、行き場を失った無調の”現代音楽”に対するアンチテーゼではないだろうか、ということです

 

          

          

コメント (2)
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