人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

メッツマッハ―+新日本フィルでR.シュトラウスとヴァレーズを聴く~最後に花束を!

2015年04月19日 09時00分13秒 | 日記

19日(日)。わが家に来てから193日目を迎え,コードをかじって観られなくなったテレビの前でリラックスするモコタロです 

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第540回定期演奏会を聴きました プログラムは①R.シュトラウス「ティル=オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、②ヴァレーズ「アメリカ」、③同「アルカナ」(日本初演)、④R.シュトラウス「交響詩”死と変容”」です 指揮はインゴ・メッツマッハ―です

 

          

 

メッツマッハ―は1957年,ドイツのハノーファー生まれ.とくに現代音楽にかけては定評がある指揮者です この日のプログラムは管弦楽器・打楽器奏者総動員といった趣きで,これ以上は舞台に載らないのではないかと思うほど楽員で埋め尽くされています オケはヴァイオリンが左右に分かれる対向配置です.コンマスのチェ・ムンスの合図でチューニングが行われ,指揮者メッツマッハ―の登場です

この日の公演は,昨年生誕150年を迎えたリヒャルト・シュトラウスと,今年没後50年を迎えたヴァレーズをフィーチャーしたプログラムです 1曲目のリヒャルト・シュトラウス「ティル=オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は1894年から翌年にかけて作曲されましたが,内容は「陽気な道化者は騎士になり,やがて裁判にかけられ絞首刑になる」という短くも波乱万丈の物語です

メッツマッハ―の指揮ぶりを見ていると,鋭い切れ味の日本刀のような感じを受けます ここぞという時にオケを煽り立ててバッサリいきます オケも鋭く反応します.オーボエの古部賢一,フルートの白尾彰,クラリネットの重松希巳江といった木管楽器群はいつも通り素晴らしい演奏を展開しています

2曲目はヴァレーズの「アメリカ」(アメリクス)です.エドガー・ヴァレーズ(1883-1965)はパリに生まれ,ブルゴーニュとトリノで育ちました.アメリクス(南北アメリカ大陸)は1918年から作曲を開始し22年に完成した作品で,単一楽章の交響詩です 冒頭のアルト・フルートのテーマとその後に続く鋭いリズムを聴く限り,ストラヴィンスキーの春の祭典を聴いているような感じです まるでジャングルに迷い込で彷徨っているような感覚です そうかと思っていると,急にサイレンの音が聞こえてきて,ここはコンクリート・ジャングルだったのか,と思ったりもしました.一言で言うと「混沌」です.ヴァレーズはアメリカをこういう風に捉えていたのか,と感慨深いものがあります

 

          

 

休憩を挟んで,3曲目は同じくヴァレーズの「アルカナ」の日本初演です.1925年から27年にかけて作曲されました.この曲もどちらかというとリズム主体の推進力の強い音楽です ヴァレーズは「自分の生きている時代を解釈する,それがモダンであるということだ」と語ったそうですが,この曲も「混沌とする時代」を写し取ったと言えるかも知れません

最後の曲はリヒャルト・シュトラウスの「死と変容」です.1889年から翌年にかけて作曲されました.彼はこの曲について「高邁な理想に向かって努力する芸術家としての人間の死の瞬間を表現しようと着想した」と述べています 初演の際に,敬愛したリッターにまとめさせた次のような詩が総譜の冒頭に掲げられていたといいます

「死と闘う病人が眠り,憂愁な微笑を浮かべる.生への執着と死の力が闘争するが決さず,静寂が訪れる.生涯を次々に回想し,心深く憧れたものを求めるが未だ見出せずに,死の一撃がくだる.しかし,天界から彼に救済と浄化が響く」

展開部の死と生の闘争の場面では,メツマッハーのタクトが冴えわたり,オケから最強音を引き出します この曲でもオーボエの古部,フルートの白尾,クラリネットの重松の演奏は光っていました

演奏後,今月が契約期間満了となるメッツマッハ―に対し,コンマスのチェから大きな花束 が贈呈され,会場から,舞台上の楽員から大きな拍手が送られました

2013年9月から今年4月まで,1年半の短いConductor in Residence でした それ以上の契約については,メッツマッハ―側のもっと20世紀の音楽を取り上げたいという意向と,新日本フィル経営側のもっとポピュラーな曲を取り上げてほしいという意向とが対立したのかも知れませんが,これは私の推測に過ぎません 後任として今年4月から上岡敏之氏がアーティスティック・アドヴァイザーとなり,2016年9月から音楽監督に就任することが決まっています 上岡敏之に期待したいと思います

 

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