人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新日フィル「室内楽リシーズ」でモーツアルト「グランパルティータ」他を聴く~神は降りたか

2015年04月02日 07時01分25秒 | 日記

2日(木)。わが家に来てから176日目を迎え、一度フラれた彼女に再チャレンジするモコタロです 

 

          

           ねえカノジョ~ また会ったね お茶でもどうよ~ 抹茶だけど

 

  閑話休題  

 

昨夕、すみだトりフォニーホール(小)で新日本フィル「室内楽シリーズ」新年度第1回目「管楽アンサンブルの夕べ」を聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「クラリネット、バセットホルンとピアノのためのコンツェルトシュテュック第2番」、②プーランク「ピアノ、オーボエとファゴットのための三重奏曲」、③モーツアルト「セレナード第10番変ロ長調”グラン・パルティータ”K.361」です

自席は6列1番。会場は8割以上埋まっているでしょうか。前期より多いのではないかと思います。開演に先立ってオーボエ奏者・古部賢一氏によるプレトークがありました プレトークは第2ヴァイオリン奏者の篠原英和氏が長い間ナビゲーターを担当され、コントラバス奏者の村松裕子さんに引き継がれましたが、出産のため篠原氏がピンチヒッターを務めるという経緯がありました 新年度は、その日出演の”楽団員プロデューサー”がナビゲーターを務めることになったようです

ステージに登場した古部氏は緊張の面持ちでこの公演の趣旨を説明します

「エー、皆さま、今日は年度初めのあわただしい中、エー、お出でいただきありがとうございました エー、今日は珍しいバゼットホルンという楽器が登場します。(以下エー、を省略)バゼットというのはバス(低音)のことで、言わば”ちょっと低音”という意味です クラリネット奏者が吹きますが、なぜホルンというかというと、ファの音を基調とする楽器はホルンと呼ぶのです。オーボエ属のイングリッシュホルンもファを基調としています モーツアルトのグラン・パルティータの第3楽章『アダージョ』は映画『アマデウス』でサリエリがモーツアルトの天才性に気づくきっかけになった曲です。サリエリはモーツアルトに”神が降りた”と感じるのです ところで、ホルンの井出詩朗氏は3月31日付で退職され大学の先生に成られたので、今日は特別ゲストとしてお迎えしています。これまでの感謝の気持ちを込めて共に演奏したいと思います

楽団員プロデューサー・シリーズの第1回目のナビゲーターということで、古部氏は慣れない役割に緊張気味でした やっぱり、トークの天才・篠原英和氏にははるかに及ばない話術でしたが、一生懸命の気持ちは通じました 一つ注文するとすれば、エーという口癖は直した方良いと思います

 

          

 

1曲目のメンデルスゾーン「クラリネット、バセットホルンとピアノのためのコンツェルトシュテック第2番」は、作曲者が23歳の時の作品です。クラリネットの重松希巳江が濃紺の衣装、ピアノの仲地朋子が黒の衣装でバセットホルンのマルコス・ペレス・ミランダとともに登場します

第1楽章「プレスト」は楽器同士のおしゃべりのような曲想です。第2楽章「アンダンテ」は一転オアシスです。第3楽章「アレグロ・グラチオーソ」は再びおしゃべりに戻ったような曲想です。10分足らずの曲ですが、変化の妙のある面白い曲でした

2曲目はプーランクの「ピアノ、オーボエとファゴットのための三重奏曲」です。この曲は1926年に作曲されました。ファゴットの河村幹子が黒の衣装でオーボエの古部賢一、ピアノの仲地朋子とともに登場します

第1楽章「プレスト」は、最初ゆったりとしたペースでピアノからファゴット、そしてオーボエへと受け継がれていき、これがプレスト?と思っていると、急にテンポが上がり本来の”プレスト”で演奏されます 第2楽章「アンダンテ」は3つのアンサンブルが美しく心和みます。第3楽章「ロンド」はプーランクらしい軽妙な曲想です。聴いている方が楽しいのだから、演奏している方はもっと楽しいのだと思います

 

          

 

休憩後はいよいよ待ちに待ったモーツアルトのセレナード第10番「グラン・パルティータ」K.361です。この曲は「13楽器セレナード」とも呼ばれています。12の管楽器とコントラバスの組み合わせですが、コントラバスに代えてコントラファゴットが用いられることもあり、「13管楽器セレナード」とも呼ばれます。7つの楽章から成ります

出演者の登場です。前列の左から重松希巳江、鈴木高通(以上クラリネット)、濱崎由紀、マルコス・ペレス・ミランダ(以上バセットホルン)、河村幹子、坪井隆明(以上ファゴット)、森明子、古部賢一(以上オーボエ)、後列右から井手詩朗、藤田満理絵、根本めぐみ、梁川笑里(以上ホルン)という配置です ホルンの女性3人はそれぞれ赤、緑、黄色のドレスを身にまとっています。あえて”信号トリオ”とは呼ばないことにします 古部氏が選んだ若手の俊英揃いなのですから

第1楽章「ラルゴ~モルト・アレグロ」の冒頭、管楽器群の深く豊かな響きが会場を満たします。「おっ、これはいけるぞ!」と思いました 会場が狭くステージと客席とが近いこともあり(特に自席は5列目なのでなおさら)、直接的に音の波が耳に届いてきます こういう演奏を聴くと、やっぱりモーツアルトはいいな グラン・パルティータはいいな と思います。クラリネットの重松、オーボエの古部を中心に見事なアンサンブルを奏でます。バセットホルンもいい味を出しています。ファゴットは軽快なリズムを刻みます

楽章間は、とくにクラリネット属が楽器の掃除に専念します 管の中に唾が溜るので布を入れて掃除をする訳ですが、一番大変そうなのはバセットホルンのミランダ氏でした。古部氏の「まだ?」という無言の視線を感じながら楽器の掃除にいそしみます

第3楽章「アダージョ」はファゴット、クラリネットのアンサンブルからオーボエのメロディーが立ち上がってきます。「アマデウス」でサリエリが”神が降りた”と感じる瞬間です 何度聴いても感動します。聴く意志のあるところに神は降ります。ここの部分を聴くと確かにモーツアルトの天才を確信します

第7楽章「フィナーレ:モルト・アレグロ」はエネルギー感溢れる”元気溌剌”なフィナーレです これは当時のハルモ二―ムジーク(管楽合奏)の集大成と言っても過言ではありません。この1曲だけでもモーツアルトの名前は後世に残ったことでしょう

何度目かのカーテンコールで、楽団を去ったばかりに井手詩朗氏に女性ホルン奏者から花束 の贈呈があり、出演者、客席から大きな拍手を受けていました

新年度初めての今回の公演は大成功のうちに終了しました それは出演者の粒が揃っていたからだと言っても過言ではないでしょう。プロデューサーとしての古部賢一氏が声をかけてメンバーを集めたのでしょうが、彼の実力と人徳が今回の成功をもたらしたと言うべきでしょう。神は降りました

 

コメント (2)
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