人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「アナと室内楽の名手たち~アナ・チュマチェンコ女史とともに」を聴く~ベートーヴェン「七重奏曲」他

2015年04月28日 07時04分42秒 | 日記

28日(火)。わが家に来てから202日目を迎え、「一人綱引き」をするモコタロです 

 

          

              何事も 押してもダメなら 引いてみな、ってか 

 

  閑話休題  

 

「アナと室内楽の名手たち」公演を聴きました アナというのはアナ・チュマチェンコのことです。プログラムは①モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493」、②ベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」です 出演はピアノ=菊池洋子、ヴァイオリン=アナ・チュマチェンコ,ヴィオラ=鈴木学(都響ソロ・コンマス)、チェロ=中木健二(東京藝大准教授)、コントラバス=池松宏(都響首席)、クラリネット=齋藤雄介(神奈川フィル首席)、ファゴット=福士マリ子(東響首席)、ホルン=福川伸陽(N響)です

チュマチェンコはウクライナ人の両親のもと,イタリアのパドヴァに生まれ,幼少時に家族とともにアルゼンチンへ移住し,レオポルド・アウアーの愛弟子にあたった父の下,4歳でヴァイオリンを始め,9歳でデビューしました 11歳でメンデルスゾーンヴァイオリン協奏曲を演奏したと言います.1963年にヨーロッパに渡り,シャンドール・ヴェーグ,ヨーゼフ・シゲティ,ユーディ・メニューインら名伯楽の下で研鑽を積みました.1990年からミュンヘン音楽・演劇大学教授に就任,ユリア・フィッシャー,アラべラ・シュタインバッハ―,日本人では玉井菜採らを育てました

 

          

 

自席は1階12列5番,左ブロック右通路側です.会場は9割方埋まっている感じです 客層を見ると高齢者に片寄っていることもなく,老若男女バランスが取れているように思われます.テレビの中継録画があるとのことで,ステージ上には2台のリモコン・カメラが,1階席後方には大型カメラが設置されています

1曲目のモーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番K.493」は3日前にJTアートホールで聴いたばかりです モーツアルトがこの曲をアルタリア社から出版したのは1786年のことでしたが,その年の3月にはピアノ協奏曲第23番,第24番が,4月にはオペラ「フィガロの結婚」が初演されています 一言で言えば30歳のモーツアルトが乗りに乗っていた時期に当たります

菊池洋子が純白の,アナ・チュマチェンコが黒の衣装で,鈴木学,中木健二とともに登場します チュマチェンコが大きく振りかぶって第1楽章に入ります.この曲特有の前へ前へという推進力のある音楽が展開します チュマチェンコは思ったより身体全体を使って演奏します.やはりヴァイオリンの主導で演奏が進められますが,菊池洋子のピアノが粒立っていて綺麗です

休憩後はベートーヴェンの「七重奏曲変ホ長調」です.この曲は1799~80年にかけて作曲されましたが,当時のウィーンの趣味に合わせた作品でした 全体的に明るく軽快で,いかにも大衆受けする曲想です.ベートーヴェンは,あまりにも大衆受けのするこの曲ばかりがもてはやされることに不満を抱いていたようです

ソリスト達の登場です.向かって左からチュマチェンコ,鈴木学,中木健二,池松宏,福川伸陽,福士マリ子,斎藤雄介という態勢です チェロの中木だけが椅子に座り,他のメンバーは立って演奏します.一番背の高いのはコントラバスの池松宏で,一番小柄なのがファゴットの福士マリ子です

第1楽章は,チュマチェンコが大きく振りかぶってアダージョの序奏部に入ります そしてヴァイオリンが軽快な主題を奏でます.前半のモーツアルトではいく分控えめかと思われたチュマチェンコのヴァイオリンが俄然存在感をアピールしています 座って演奏するよりも立って演奏する方が力の入れようが違うのでしょうか.第2楽章はヴァイオリンとクラリネットがテーマを歌い継いでいきます 第3楽章は主題がピアノ・ソナタにも使われていることで知られている軽快な音楽です.第4楽章ではヴァイオリンの速いパッセージの演奏がありますが,チュマチェンコは鮮やかに弾き切りました

第5楽章はホルンのユーモラスな演奏で始まります.ホルンの福川は曲の神髄を掴んでいます 第6楽章は,ホルンに導かれた序奏の後に,ヴァイオリンとチェロの二重奏がテーマを奏でますが,前へ前へという推進力が,いつ聴いても興奮します さらに,後半にヴァイオリンのカデンツァがありますが,チュマチェンコの演奏は見事でした

会場いっぱいの拍手に,ベートーヴェンの「七重奏曲」の第5楽章がアンコールされ,それでも帰らない聴衆のために第3楽章がアンコール演奏されました

この日の演奏を振り返ってみると,今まで聴いた「七重奏曲」の演奏は,例えば第1ヴァイオリンとクラリネットの対話であるとか,左サイドにスタンバイする弦楽器群と右サイドにスタンバイする管楽器群との対話であるとか,そういうやり取りが面白かったように思いますが,この日の演奏は,むしろチュマチェンコを中心として,全体的なアンサンブルを楽しむという傾向が強かったように思います それには,演奏者の一人一人が優れたソリストであることが絶対的な条件になることは言うまでもありません

 

          

 

コメント
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