人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

岡本誠司ヴァイオリン・リサイタルを聴く~「紀尾井 明日への扉」 / 「クラシカル・プレイヤーズ東京」最終公演のチケットを取る

2017年05月25日 08時05分42秒 | 日記

25日(木).昨日の日経朝刊・文化欄に「マウスピース  心吹き込む ~ トランペット奏者と共に理想の音色求め手作り」という見出しのもと,亀山敏昭さんのエッセイが載っていました 超訳すると

「35年間トランペットを中心に手製のマウスピースを作り続けてきた もともとヤマハの社員としてトランペットの設計を担当していたが,1970年代末に社命でドイツに赴任し,ヤマハの楽器の普及と,ベルリン・フィルなど一流の演奏者から改良のための情報収集をすることに務めた その時,彼らから言われたのは『マウスピースを作れないか』ということだった 真ちゅうの素材に旋盤で穴を開け,息の吹き込み口のカップと呼ばれる部分を刃の付いた機械で円錐形に削るのだが,ただ作るのでなく奏者の求める音が出る1本に仕上げなければならない たとえば,『明るい音』というオーダーなら,カップの削りを浅くする.そうすると『張りのある音』になる.逆にカップの削りを深くすれば広がりのある音になるので『豊かな音』になる 努力の結果,81年には”トランペットの神様”モーリス・アンドレから注文がきて,それ以来,内外から注文が殺到するようになった 他社と契約するプロやアマチュアからも注文がきたが,会社員なので断らざるを得なかった 悩んだ結果,会社を早期退職して独立し,浜松市に工房を開設した 独立後も姿勢は変わらない.唇に当たる感触の好みなど細部に至るまで奏者の要望を聞く.理想に限りなく近づけるのが役目と肝に銘じている

私がこのエッセイを読んで「さすがはプロだ」と思ったのは,「浜松市に工房を開設した」と書きながら工房の名前を伏せていること,それと関連して,最後に掲載された職業が「職人」となっていることです ドイツ風に言えばマイスターでしょう.いかなる組織にも属さず一匹狼として名前と実力だけで生きていく,という自信と誇りが見て取れます 日本にはこういう「職人」が探せば何人もいるのでしょうね

ということで,わが家に来てから今日で967日目を迎え,米中央情報局(CIA)のブレナン前長官が23日,ロシア政府による米大統領選挙の干渉疑惑について下院情報特別委員会で,トランプ陣営メンバーとロシア政府関係者との間に「接触や交流があった」と証言し,「FBIの捜査には十分な根拠がある」と語った というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプ大統領は

 

       

                         見 ざ る

 

       

                         聞 か ざ る

       

       

                    話 さ ざ る

                  なんだろうな

 

                       

 

昨日,夕食に「ハッシュドビーフ」と「生野菜とアボガドとタコのサラダ」を作りました 「ハッシュドビーフ」は玉ねぎをレンジで3分チンしてから炒めています

 

       

 

                       

 

クラシカル・プレイヤーズ東京の最終公演のチケットを取りました 10月13日(金)午後7時から東京芸術劇場です.オール・モーツアルト・プログラムで①交響曲第39番変ホ長調K.543,②ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595,③交響曲第41番ハ長調K.551”ジュピター”」です ②のフォルテ・ピアノ独奏は仲道郁代,指揮は有田正広です

 

       

 

       

            

                       

 

昨夕,紀尾井ホールで「紀尾井  明日への扉 岡本誠司ヴァイオリン・リサイタル」を聴きました プログラムは①バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調BWV1006」,②C.P.Eバッハ「ヴァイオリン・ソナタ ハ短調」,③メンデルスゾーン「ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調」,④シューマン「ヴァイオリン・ソナタ第1番イ短調」,⑤グリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ長調」です

この日のプログラムについて,岡本は巻頭の「ご挨拶」の中で,

「今夜のプログラムのテーマはずばり ”ライプツィヒの風”です 2014年7月に第1位を戴いたバッハ国際コンクール,そして翌年のバッハ音楽祭の折にも長期滞在した思い入れのある街,ドイツ・ライプツィヒ.その街に所縁のある作曲家と作品を集めてプログラムを組んでみると,選曲としてはやや渋め,内容も濃いめ,しかし爽やかな風が吹き抜けていくような曲が集いました

と書いています.その言の通り,J.S.バッハ,C.P.Eバッハ,メンデルスゾーン,シューマン,グリーグは全員ドイツ・ライプツィヒにゆかりがあります 正直言って,グリーグがライプツィヒ音楽院の出身者であることは初めて知りましたが

岡本誠司は1994年生まれの弱冠23歳.2014年7月にドイツ・ライプツィヒで開かれた第19回J.S.バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝,2016年10月にはポーランド・ポズナンでの第15回ヴィエ二ァフスキ国際ヴァイオリンコンクールで第2位に入賞しています 今年3月に東京藝大を卒業,秋から欧州に留学予定とのことです

ピアノ伴奏は2007年ロン・ティボー国際コンクール第1位の田村響です 蛇足ですが,兄の直貴さんは新日本フィルの第1ヴァイオリン奏者です

 

       

 

自席は1階17列5番,左ブロック右通路側です.会場はほぼ満席,よく入りました 折り目正しい岡本誠司が登場し楽譜に向かいます

1曲目はJ.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調BWV1006」です バッハは「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を6曲書きましたが,おそらく1720年以前に作曲されたと言われています.今から300年近く前のことです この曲は「プレリュード」「ルール」「ロンド風ガヴォット」「メヌエット1,2」「ブーレ」「ジーグ」から成ります

岡本は,果たしてこれが1挺のヴァイオリンから出ている音か,と疑いたくなるほど豊穣な音楽を紡ぎ出します 私がこの曲で好きなのはヴァイオリンが天を翔る「プレリュード」と楽しい「ロンド風ガヴォット」ですが,十分楽しめました

この曲はイダ・ヘンデルのCD(1995年録音)で予習しておきました

 

       

 

2曲目は大バッハの2人目の息子C.P.Eバッハの「ヴァイオリン・ソナタ ハ短調」です 1763年に作曲された4つのソナタの一つです.この曲からピアノの田村響が加わります.この曲は「急ー緩-急」の3つの楽章から成りますが,二人の演奏で聴くこの曲は,どちらかと言えば,モーツアルトの初期のヴァイオリン・ソナタのような「ヴァイオリン伴奏つきピアノ・ソナタ」といった印象を受けます しかし,順番から言えば,C.P.Eバッハの作曲法がモーツアルトに影響を及ぼしたことになります 田村響のピアノは雄弁でした

3曲目はメンデルスゾーン「ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調」(第1楽章のみ)です この曲はメンデルスゾーンの書いた3番目のヴァイオリン・ソナタですが,1838年(29歳時)に書いたものが気に入らず,翌39年に改訂に取り掛かったものの第1楽章の途中で中断し お蔵入りになっていたものです その後,いろいろ経緯があって第1楽章だけの改訂稿が出来上がったとのことです

演奏を聴く限り,メンデルスゾーンらしい明るく瑞々しい音楽です 第1楽章だけの,しかも後の人の改訂が加わった形の音楽ですが,二人の演奏はメンデルスゾーンの作曲への意欲が伝わってくる想いのこもった演奏でした

 

       

 

休憩後の1曲目はシューマン「ヴァイオリン・ソナタ第1番イ短調」です この曲は1851年(41歳時)秋にわずか5日間で作曲されました 3つの楽章から成ります.岡本は第1楽章冒頭から情感のこもった音楽を奏でます とても5日間で完成した作品とは思えないほど充実した音楽です 二人の演奏家はシューマンのロマンティシズムを心ゆくまで表出し,楽しませてくれました

最後の曲はグリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ長調」です この曲は,グリーグがライプツィヒ音楽院を卒業して3年目の1865年(22歳時)夏に作曲されました.3つの楽章から成ります

二人の演奏で聴く第1楽章は,作曲者名を伏せて聴けばドイツ・ロマンの音楽と言いたくなるような,グリーグの生まれ故郷のノルウェーの面影はあまり感じません しかし,第2楽章,第3楽章に移るとグリーグらしい北欧の雰囲気が盛り込まれてきます そうした変化を面白く聴きました

この曲はリディア・モルトコヴィチのヴァイオリン,エレーナ・モルトコヴィチのピアノによるCD(1992年録音)で予習しておきました

 

       

 

満場の拍手に応え,二人はアンコールに,やはりライプツィヒに所縁のあるクララ・シューマンの「3つのロマンス」から第1曲をロマンティックに演奏,次いで,メンデルスゾーンが11歳の時(1820年)に書いた「ヴァイオリン・ソナタ  ヘ長調」から第3楽章を弾むように演奏し,大きな拍手を浴びました 演奏を聴いて,「やっぱりメンデルスゾーンは天才だ」と思いました

演奏は言うまでもなく,統一性を持たせたプログラミングなど,岡本誠司というヴァイオリニストは,超絶技巧で一時的にパッと花咲き すぐに飽きられる演奏家ではなく,音楽に対するしっかりした考えと演奏技術を持ったアーティストだと思います 今秋からヨーロッパに留学するとのことですが,数年後に帰国してリサイタルを開く時にはチケット代が跳ね上がっていることでしょう それを期待しています

 

       

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