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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

井上ひさし著「十二人の手紙」を読む ~ 手紙に隠された十三の仕掛け

2020年04月21日 07時18分51秒 | 日記

21日(火)。わが家に来てから今日で2029日目を迎え、トランプ米大統領は18日の記者会見で、北朝鮮の金正恩委員長から「素晴らしい書簡」を最近受け取ったことを明らかにしたが、北朝鮮は19日に外務省対外報道室長の談話を発表し、「最近、北朝鮮最高指導者は米大統領にいかなる手紙も送っていない。朝米首脳の関係は余談のように持ち出す話題ではない」とするコメントを発表したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       フェイクを平気で言いふらして 国の信用を失墜させるのがトランプの悪い癖だ

 

         

 

昨日は寒かったので、夕食に「クリームシチュー」と「生野菜サラダ」を作りました。シチューは鶏もも肉を使いました

 

     

 

         

 

井上ひさし著「十二人の手紙」(中公文庫)を読み終わりました 井上ひさしは1934年生まれ。上智大学フランス語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など放送作家として活躍後、戯曲・小説などの執筆活動に入る。小説では「手鎖心中」で直木賞、「吉里吉里人」で日本SF大賞および読売文学賞受賞など、数々の文学賞を受賞 戯曲では「道元の冒険」で岸田戯曲賞を受賞するなど受賞多数

 

     

 

この本は「婦人公論」1977年1月号から1978年3月号まで連載した短編小説を、1978年6月に刊行したものです この本は次の短編小説から構成されています

「プロローグ 悪魔」

「葬送歌」

「赤い手」

「ペンフレンド」

「第三十番善楽寺」

「隣からの声」

「鍵」

「桃」

「シンデレラの死」

「玉の輿」

「里親」

「泥と雪」

「エピローグ 人質」

これらの短編は「赤い手」を除き、最初から最後まで複数の人物の手紙の文面によって書かれています 「赤い手」だけは主人公の女性の「出生届」「転入届」「洗礼証明書」などの届出書類が羅列され、最後に女性の手紙が登場します

いずれの作品も、巧妙な”仕掛け”が施されていて、読み終わった後に「してやられた」と思うのです。扇田昭彦氏による「解説」を読むと、「かつて井上ひさし氏は、氏の戯曲の上演に際して、『芝居は趣向。これが戯曲を執筆するときの私の、たったひとつの心がけである。芝居においては、一が趣向で二も趣向、思想などは百番目か百一番目ぐらいにこっそりと顔を出す程度でいい』と書いたことがあるが、この『十二人の手紙』でも、趣向家としての井上氏の面目は躍如としている」と書かれています 言うまでもなく、その「趣向」(仕掛け)は作品によって異なります

例えば、最初の「プロローグ 悪魔」は、故郷から単身で上京し小さな商事会社で働くことになった柏木幸子が、両親や弟・弘や恩師の上野先生や友人の光代に当てた手紙で構成されています 最初のうちは、ほのぼのとした気持ちで読み進めていくのですが、途中から”何でも言える間柄”の光代に当てた手紙の内容に大きな変化が現れます 実は妻子ある社長・船山太一と愛し合うようになったという内容に。そして社長夫婦が自分のことを「悪魔」と呼んでいることを知り、彼らの子どもの首を絞めたという内容に

「シンデレラの死」は、高校を中退して地元の新潟県長岡市を飛び出した塩沢加代子と、恩師の青木貞二先生との手紙のやり取りが綴られていますが、最後に登場する四谷警察署の警察官の手紙を読んで、読者は愕然とします。「してやられた」と この作品は極めて戯曲的と言っても良いかもしれません

「玉の輿」は主人公の長田美保子が酒造会社に嫁ぎ、死産のうえ離婚するまでが、恩師の高橋忠夫先生に宛てた手紙や「結婚挨拶状」など13通の手紙で綴られていますが、このうち11通は巷に流布している手紙の「例文集」からの引用だというオチに、またしても「してやられた」と愕然とします

そして筆者の”仕掛け”は最後の「エピローグ 人質」で集大成を迎えます ここでは、これまでの12の物語に登場した人物たちが、米沢市のホテルに閉じ込められた人質となって再登場するのです さらに、その犯人は「プロローグ 悪魔」に登場した人物だったのです。彼は身内の敵をとるため、その相手を含めた宿泊者全員を人質に取ったのでした 彼が相手を追い詰めていくプロセスはほとんどミステリー小説です もっとも、それを言うなら、この本に収められた全ての小説が極上のミステリー小説と言うべきでしょう

 

     

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