3日(金)。新日本フィルの2日付ホームページによると、17日~20日の「第九」公演の指揮者はシモーネ・ヤングから鈴木秀美に変更となりました 落ち着くべきところに落ち着いたといった感じでしょうか
また、都響WEBチケットからのメール配信によると、新型コロナ・オミクロン株に伴う外国人新規入国停止措置のため、12月20日開催予定の都響定期Bシリーズの指揮者はサッシャ・ゲッツェルから大野和士に変更となりました また、24日~26日の「第九」公演の指揮者は準・メルクルから大野和士に変更となり、15日開催の都響定期Aシリーズの指揮者はジョン・アクセルロッドに、ヴァイオリニストは南紫音に変更となりました
ということで、わが家に来てから今日で2519日目を迎え、新型コロナウイルス対策として政府が調達した「アベノマスク」を含む布マスクが大量に保管されている問題で、厚生労働省が1日、朝日新聞に保管状況を公開したが、8千万枚を超える布マスクが、10万箱に及ぶ段ボール箱に詰め込まれていた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
今年度の保管費が3億円以上だと 困っている国に無償で配った方がましだと思う
諸般の事情により昨日の夕食づくりはお休みしました
昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」で「第4回 哀しみのモーツァルト ~ モーツァルトの短調作品を中心としたプログラム」を聴きました オール・モーツァルト・プログラムで、①幻想曲(未完)ニ短調K.397(385g)、②2台ピアノのためのフーガ ハ短調K.426、③ピアノ・ソナタ第14番ハ短調K.457(2台ピアノ用にグリーグ編曲)、④ピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478、⑤レクイエム ニ短調K.626より第1曲~第8曲ーです 演奏はピアノ独奏=仲道郁代、百瀬功汰、ヴァイオリン=崔文洙、ビルマン聡平、ヴィオラ=篠崎友美、チェロ=植木昭雄、ソプラノ=稲村麻衣子、アルト=野間愛、テノール=金沢青児、バス=押見春喜、エレクトーン=清水のりこ、指揮=初谷敬史、お話=三枝成彰です
このコンサートはウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1.27-1791.12.5)の命日にちなんで短調の作品を中心に演奏することを目的に始められたシリーズです 今年はモーツアルトの没後230年に当たります
自席は5列17番、センターブロック右から2つ目です
開演時間になると、一人の男がマイクを持って挨拶を始めました 聴いているとどうやらこれから開催されるコンサートのPRのようです ここでハタと気が付きました。その人こそこの公演の進行役である作曲家の三枝成彰氏であると マスクをしているので顔が良く判りませんでしたが、声を聞いてやっと判りました 寄る年波には敵いませんね。三枝氏は今後1年間に手がけるコンサートのPRをしたうえで、やっと挨拶らしい挨拶に移りました
「クラシック・コンサートは”団塊の世代”と言われる人たちが中心となって聴いていますが、今回のコロナ禍によりその層の人たちがコンサートに来なくなってしまいました このままいけばクラシック・コンサートは消滅するのではないかと本気で懸念しています クラシックは今、危機的状況にあります」
「今日取り上げるのはモーツアルトの短調の音楽ですが、モーツアルトの短調作品は全作品の4.8%に過ぎません しかしそのすべてが名曲です ちなみに交響曲における短調の割合は、モーツアルトが4.4%、ベートーヴェンが22%、ラフマニノフに至っては100%です」
「なぜ、モーツアルトやハイドンの時代は長調が主で短調が少なかったのかと言えば、短調の曲が人の心を揺さぶる音楽だったからです 当時は明快で分かりやすい長調の音楽こそ「神がもたらす調和」であり、悲しみやメランコリーを感じさせる短調の音楽は”違法”だったのです」
ここで、三枝氏が「違法」と言う言葉を使っていますが、当時「短調の作品を作曲するのは”違法”である」という法律はなかったはずなので、ニュアンスとしては「短調の曲は当時の常識からは”異端”であり”異質”である」と考えられていたということだと思います
さて、演奏に入ります 1曲目は「幻想曲 ニ短調K.397」(385g)です この曲は1782年に作曲されました プログラム・ノートを見て初めて知ったのですが、この曲は最後の10小節が残されていない、つまり未完の曲だということです 誰が補筆したのかは解っていないようです
仲道郁代により演奏されました 彼女の演奏は何度か生で聴いたことがありますが、2度ほど演奏が途中で乱れたコンサートに接したことがあるので心配しました 2度ともモーツアルトの曲だったのでなおさらです 今回は暗譜でなく楽譜を見ながらの演奏だったので問題はありませんでした
2曲目は「2台ピアノのためのフーガ ハ短調K.426」です この曲は1783年に作曲されました 演奏は仲道郁代と百瀬功汰の師弟コンビですが、どこかで聴いたことがある曲だと思ったら、1788年に弦楽合奏用に編曲した作品を聴いたことがあったのです
3曲目は「ピアノ・ソナタ第14番ハ短調K.457」です この曲は1784年に作曲、1785年に幻想曲K.475と共に作品11としてウィーンの音楽出版社アルタリア社から出版されました 第1楽章「モルト・アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ」の3楽章から成ります 今回はエドワルド・グリーグが2台のピアノ用に編曲した版により演奏されます
仲道郁代と百瀬功汰の師弟コンビによる演奏ですが、はっきり言って、なぜグリーグが2台のピアノ用に編曲したのか分かりません 特に第2楽章の中間部で強音で盛り上がるパッセージを聴くと、編曲しない方が良かったのではないか、と思いました
プログラム前半の最後は「ピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478」です この曲は1785年にK.493のピアノ四重奏曲とともにホフマイスターとの契約により作曲された作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「ロンド:アレグロ・モデラート」の3楽章から成ります
演奏はピアノ=仲道郁代、ヴァイオリン=崔文洙、ビルマン聡平、ヴィオラ=篠崎友美、植木昭雄で、弦楽器は新日本フィルでお馴染みのメンバーです 崔はコンマス、ビルマン聡平は第2ヴァイオリン首席、篠崎友美は元新日本フィル首席で現・都響首席、植木昭雄はフリーですが新日本フィルの公演にたびたび客演しています
まず第1ヴァイオリンの崔文洙を中心とする弦楽合奏のアンサンブルが素晴らしい そこに仲道のピアノが絡んできますが、楽譜を見ているのでこれも素晴らしい
プログラム後半は「レクイエム ニ短調K.626」より第1曲~第8曲です この曲は最晩年の1791年にヴァルゼック・シュトウバハ伯爵の依頼により作曲しましたが、モーツアルトの死去により未完となり、弟子のジュスマイアーによって完成されました この日は第1曲から、モーツアルト直筆の後が残る最後の第8曲「ラクリモーサ」までが演奏されます
エレクトーンの清水のりこが中央に位置し、崔文洙以下弦楽奏者の4人が向かって左サイドに、ソリスト歌手の4人が右サイドにスタンバイします 指揮者の初谷敬史が登場し第1曲「イントロイトゥス」の演奏に入ります この演奏で明らかになったのは、弦楽合奏の4人の熱演に負けないほどの4人のソリスト陣による圧倒的な”合唱”です たった4人の”合唱”ですが、4人とも声が気持ちよいほど良く通ります 特にソプラノの稲村麻衣子(東京混声合唱団メンバー)とバスの押見春喜は破壊力があります 会場が小ホールということもあるでしょうが、これがたった4人で歌っているのか、と驚くほど迫力があります また、清水のりこのエレクトーンが素晴らしい ティンパニやトロンボーンの音が確かに聞こえてきました 指揮者を含めてたった10人のレクイエムですが、これほど感動的な演奏も珍しいでしょう
毎回感心するのは充実したプログラム冊子です 特に日本モーツアルト協会の会員番号K465の小澤純一氏による以下の論考は力作ぞろいです ①短調のモーツアルト、②モーツアルト 短調作品一覧(全48曲)、③モーツアルト 長調作品における短調楽章一覧 ~ 全29楽章、④1787年、短調の年のモーツアルト ~ モーツアルトの短調作品のうち4分の1がこの年に作られた、⑤モーツアルトの200人の妻(誰を一番愛したか)、⑥モーツアルトの女性関係とオペラ、⑦モーツアルトの女性関係とオペラ創作の相関、⑧日本語で読めるモーツアルト書籍です いずれも「よくもこれまで調べたものだ」と感心するほど詳細に調べられています また、三枝氏構成によるクラシック音楽「年表 ~ 世界情勢と比較する西洋音楽の歴史」は、現代において演奏されているクラシック音楽は1750年から1900年ぐらいまでの約150年の間に95%が書かれたことを国別に表していて興味深いものがあります これも力作です これらの資料は後でゆっくり読みたいと思います
この日のコンサートは、最後の「レクイエム」を中心に小編成ながら素晴らしい演奏で、久しぶりに感動を覚えました 来年も是非聴きたいと思います