人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

マーラー「交響曲第6番」のハンマー打撃回数と客席トラブル / N響2023-2024シーズン定期会員券継続案内届く ~ 座席変更希望で継続へ / 原田ひ香著「まずはこれ食べて」を読む

2023年05月22日 06時42分22秒 | 日記

22日(月)。昨日午前、池袋の豊島区役所1階の特設会場で、6回目の新型コロナワクチンを接種してきました 5回までモデルナだったので6回目も、と思ったのですが、予約を入れる段階でどの会場もファイザーしか扱っていなかったので、初めてファイザー(オミクロンBA.1)を打ちました それにしても、もう6回かと驚きます 夕方になっても注射した腕が痛くならず 体温も平熱だったので、夕食に餃子・シュウマイを食べ ビールを飲みました 言っときますけど、私はアル中ではありません

先週末にN響から「2023-2024シーズン 定期会員券継続案内」が届きました 現在私はAプロ2日目公演(NHKホール)とBプロ2日目公演(サントリーホール)の定期会員ですが、両方とも継続することにしました ただし、双方とも座席を変更したいと思います。Aプロは現在1階センターブロックの通路側ですが、もう少し前の席に移りたいと思います Bプロは1階センターブロックの最後列の1つ前の列で、通路側でもないので、もっと前の通路側に近い席に移りたいと思います

「WEBチケットN響」のチケット販売が6月下旬から「ぴあ株式会社」との提携となることに伴い、利用登録をやり直す必要があります 6月1日以降に登録した上で、席替え手続きを7月9日以降に行うことになります

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で3051日目を迎え、ロシア連邦軍の将校が、ロシア軍の主力戦車「T-90」のエンジンを盗み、ブラックマーケットに横流しして逮捕された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ロシア軍の士気も地に落ちたようだね 盗みを働くほどロシア軍の給料は安いのか?

 

         

 

昨日のブログにノット ✕ 東響によるマーラー「交響曲第6番」の第4楽章におけるハンマーの打撃回数について書きましたが、kusuさんから「もし5回だったのであれば、作曲者の初期の自筆譜に従ったものでしょう。マーラーは初版楽譜出版の時点で2回削って3回に、3度目の出版時に最後の1回を削って2回にしたと伝えられています」というコメントをいただきました これについてWikipediaで調べたところ、次のような記述がありました

「マーラーの自筆稿では、作曲当初にはハンマーの導入は考えられておらず、後にハンマーを加筆したときは、第4楽章で5回打たれるようになっていた。第1稿を出版する際にこの回数が減らされ3回となった。さらに初演のための練習過程で、マーラーは3回目のハンマー打撃を削除し(代わりにチェレスタを追加)、最終的に2回となった(第2稿)」

勉強不足、調査不足を痛感しました これからは、より一層 作品の背景を調べてから書こうと思います ご指摘くださったKusuさんにあらためてお礼を申し上げます

ついでに20日のサントリーホールでの東響公演における客同士のトラブルについて書いておこうと思います

第1楽章が終わった時、ステージの方から誰かが大きな声で話している声が聞こえてきました 自席はステージから遠い1階最後列の近くなので、何を言っているのか分からなかったのですが、後でツイッターを見たらどうやらP席で客同士のトラブルがあったようです ある人のツイッターによると、楽譜を見ながら聴いていた人(仮にA氏)に対し誰かが何らかの理由で注意したら反論した、といったような内容で、どうやらこの人(A氏)は過去にも同様のトラブルを起こしているトラブル・メーカーのようです 1階最後列辺りまで言い争いの声が届いたのですからステージに一番近いP席の声はノットや楽員には当然良く聴こえたはずです ノットは落ち着いて第2楽章に入りましたが、さすがはプロだと思いました

具体的に何が原因で言い争いになったのかは分かりませんが、楽章間の「間」は休憩時間ではなく演奏時間であることを十分理解すべきです 聴衆は演奏中には声を出すべきでなく、やむを得ない時は 小声でやり取りすべきです ひと言でいえば この行為は「演奏妨害」であり、ノットと楽員に対して失礼千万です さらに言えば、P席を中心に聴衆を不愉快にする原因を作ったことで「ホール出入り禁止」にしても良いくらいです コーラングレの素晴らしい演奏をしてくれた最上峰行氏は「ルールとマナーは大切だと思うんですが、言い争いとか、撮影時のフラッシュは本当にやめてね。頼む!」とツイートしています 聴衆は演奏者にこういうツイートをさせるような非常識な行為をしてはいけないのです 当該者は恥を知れ

 

     

 

         

 

原田ひ香著「まずはこれ食べて」(双葉文庫)を読み終わりました 原田ひ香は1970年神奈川県生まれ。大妻女子大卒。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK制作ラジオドラマ大賞、07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞 当ブログでもご紹介した「三千円の使い方」は大ベストセラーになりました

学生時代の友人同士で立ち上げたベンチャー企業「ぐらんま」で働く社員やアルバイトたちは超多忙な日々を送っている 不規則な生活のせいで食事がおろそかになり、社内も整理整頓が行き届かず殺伐とした雰囲気になっている そんな状況を改善するため、社長の田中は会社で家政婦を雇おうと提案する 採用された50代の筧みのりは、不愛想だが完璧に家事をこなし、心温まる食事を作ってくれる 筧の作る食事を通じて、社員たちは自分たちの生活を次第に見つめ直していく

 

     

 

本書は2019年12月に双葉社から刊行された単行本を、加筆・修正のうえで文庫化したものです

タイトルの通り、本書では「焼きリンゴにアイスクリーム」「牛挽肉ハンバーガー」「辛ラーメン海苔チーズ乗せ」「だし巻き玉子」「カレーうどん」などの料理が登場し、いかにも美味しそうで、すぐにでも真似して作りたくなります しかし、著者の「ランチ酒」や「ランチ酒おかわり日和」などと異なり、本書はミステリー的要素が含まれていて意外な驚きがありました 失踪して行方の知れない起業の中心人物・柿枝の存在が、田中をはじめとする社員たちに大きく影を落としており、一方の筧も秘密を抱えています 全く関係ないように見えるこの二人が、表に見えないところで繋がっていたという”どんでん返し”に驚きを感じます 後半にいくにしたがって面白くなる本でした お薦めします

 

     

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ジョナサン・ノット ✕ 小埜寺美樹 ✕ 東京交響楽団でリゲティ「ムジカ・リチェルカータ 第2番」、マーラー「交響曲第6番 イ短調 ”悲劇的”」を聴く ~ ハンマーは5回!?:第710回定期演奏会

2023年05月21日 00時01分23秒 | 日記

21日(日)。わが家に来てから今日で3050日目を迎え、米国の各州が相次いで中国人や中国企業による土地の買収制限に踏み切っているが、南部フロリダ州では中国人が土地を買収することを原則禁じる異例の法律が成立した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     日本だって油断できない 北海道辺りで中国人が土地を買い占めていると聞いてるし

 

         

 

昨夜、サントリーホールで東京交響楽団「第710回 定期演奏会」を聴きました プログラムは①リゲティ「ムジカ・リチェルカータ 第2番」、②マーラー「交響曲第6番 イ短調 ”悲劇的” 」で、休憩を入れることなく続けて演奏されます 演奏は①のピアノ独奏=小埜寺美樹、指揮=東響音楽監督ジョナサン・ノットです

 

     

 

ノットのマーラーということでしょうか。いつもより客入りが良いようです

オケは14型で 左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置。コンマスはグレブ・ニキティンです チェロのトップには伊藤文嗣とともに客員首席の笹沼樹がスタンバイします もしかして本公演が東響デビューか。彼は背丈があるから目立ちます ステージ上手にはハープ2台とピアノが配置されます

最初の曲はリゲティ「ムジカ・リチェルカータ 第2番」です     この曲はジェルジ・リゲティ(1923-2006)が1951年から53年にかけて作曲、1969年11月18日にスウェーデンで初演されました  全11曲から成るピアノ・ソロのための作品ですが、たったの3分で終わってしまいます 沼野雄司氏がプログラム・ノートを書いていますが、読んでも分からないので、書いても意味がないため割愛します

ノットが指揮台に上ると、ステージの照明が落とされ、ピアノのある上手のスペースにスポットライトが当てられ、新国立劇場研修所講師として活躍する小埜寺美樹さんのピアノ・ソロで演奏が開始されます 「ソ」の音で全曲を閉じると、再び照明が点き、ノットの指揮で低い「ラ」の音で始まるマーラー「交響曲第6番」の第1楽章が開始されます

「交響曲第6番 イ短調 ”悲劇的” 」はグスタフ・マーラー(1860-1911)が1903年から05年にかけて作曲、1906年5月27日にエッセンでマーラーの指揮により初演されました    第1楽章「アレグロ・エネルジコ、マ・ノン・トロッポ:激しく、しかし活発に」、第2楽章「スケルツォ:重々しく」、第3楽章「アンダンテ・モデラート」、第4楽章「フィナーレ:ソステヌート ~ アレグロ・モデラート ~ アレグロ・エネルジコ」の4楽章から成ります なお、中間楽章の順序は初版総譜では「スケルツォーアンダンテ」でしたが、初演にあたり「アンダンテースケルツォ」と入れ替えたことから、順番を巡り論争が続いています ノットは初版の順番で演奏します

 

     

 

第1楽章は予想していたよりかなりゆったりしたテンポで開始され、意外に感じました ノットは最初から飛ばしてくると思っていたのです 大地に根の張ったどっしりした演奏とでも言うべき重心の低い演奏が続きました 中盤ではクラリネットがベルアップ奏法を見せ、音がダイレクトに届きました 第2楽章は一転、かなりの高速テンポで開始され、マーラーらしいエキセントリックな音楽表現が見られ、楽員がよくノットに着いていっているものだなと感心しました しかしノットは、フルートやオーボエに歌わせるべきところはテンポを落として存分に歌わせていました 第3楽章では弦楽セクションを中心に美しいアンサンブルが奏でられ、オーボエの荒絵理子、コーラングレの最上峰行、ホルンの上間喜之が素晴らしい演奏を展開しました そして運命の第4楽章に入ります テューバの重低音が会場に響き渡ります。時にホルンが、オーボエが、そしてクラリネットがベル・アップ奏法を見せ、直接的に音を届けますが、このパフォーマンスはマーラーの指示通りなのでしょう

さて、この楽章における聴衆の最大の関心事は「ハンマーが何回叩かれるか?」です マーラーの妻アルマによれば、ハンマーは「マーラー自身の破滅、もしくは彼が後に述べたように、彼の英雄の破滅」を描くものだといいます 餅つきの杵のような大きな木槌(ハンマー)を頭上から振り下ろすパフォーマンスは、視覚的にみても「運命的に破滅すべきもの」の象徴に思われます この日のハンマーは、私の理解では4回でした それだけでも多すぎるのに、ツイッターを見ていたら「5回叩いた」と書かれていて、さすがに5回ではなく誤解ではないか、と思いました しかし、2人の方が5回と書いていたので「Nott 4回、But 5回」で、私の方が誤解していたのだと思い直しました ツイッターの内容から、どうやら私は「第4楽章」冒頭で打ち下ろされたハンマーを見逃して(聴き逃して)いたようです 「まさか冒頭でハンマーが叩かれる訳がない」という先入観が邪魔したようです しかし、マーラーは最初に3回叩くとしたものを2回に減らしたのに、ノットは5回に増やしたわけで、どういう根拠があって5回も叩かせたのか疑問です これだけ叩かれたらさすがのマーラーだって二度と立ち直れないでしょう 指揮者の解釈はどこまで許されるのか ノットの見解を聞かせてほしいところです

主催者側の思う壺ですが、この日も熱い拍手に包まれたノットのカーテンコールを写メしてきました

 

     

     

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鈴木優人 ✕ ミシェル・カミロ ✕ 読売日響でモーツアルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲、同「交響曲第28番」、カミロ「ピアノ協奏曲第2番」、ラヴェル「ボレロ」を聴く

2023年05月20日 00時02分46秒 | 日記

20日(土)。わが家に来てから今日で3049日目を迎え、ロシアによるウクライナ侵略で、最激戦地の東部ドネツク州バフムトを巡る戦闘に露軍側で参加している民間軍事会社「ワグネル」トップのプリゴジン氏は18日、「バフムトの北方で露正規軍が570メートル後退し、ワグネル部隊の側面をがら空きにした」と非難する声明を交流サイト(SNS)上で発表、「戦線をなお数日間は保持するよう露国防省上層部に要求する」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     プーチンもプリゴジンを止められないようだ 仲間割れ大歓迎! 相撃ちしたらいい

 

         

 

昨日、夕食に「チキンステーキ」と「シメジの味噌汁」を作りました 「チキンステーキ」は久しぶりに作りましたが、柔らかく焼けて美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで読売日響「第662回 名曲シリーズ」を聴きました   プログラムは①モーツアルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲、②カミロ「ピアノ協奏曲第2番”テネリフェ”」(日本初演)、③モーツアルト「交響曲第28番 ハ長調 K.200(189k)」、④ラヴェル「ボレロ」です 演奏は②のピアノ独奏=ミシェル・カミロ、指揮=鈴木優人です

 

     

 

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります コンマスは長原幸太です

1曲目はモーツアルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲です このオペラはウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1787年に作曲、同年10月29日にプラハのエステート劇場で初演されました 本番2日前になっても「序曲」が出来上がっておらず、モーツアルトは妻コンスタンツェとおしゃべりしながら、1晩で作曲したというエピソードが残っています 天才モーツアルトにとっては、頭に浮かんだメロディーをそのまま譜面に写すだけで良かったのでしょう そうでなければ初演までの写譜(当時はコピー機などない!)やリハーサルの時間が取れません

鈴木の指揮でデモーニッシュな序奏が開始されます 徐々に緊張感が高まっていきますが、一転して軽快な音楽が展開します モーツアルトのオペラの「序曲」にはオペラのエッセンスが凝縮されていることが良く分かります

2曲目はカミロ「ピアノ協奏曲第2番”テネリフェ”」の日本初演です この曲は1954年ドミニカ生まれのジャズ・ピアニスト、ミシェル・カミロが、カナリア諸島の最大の島テネリフェの「アウディトリオ・デ・テネリフェ」から委嘱されて作曲、2009年3月13日に初演された作品です 第1楽章(第1部・第2部)「マエストーソ、アレグロ・デチーソ、モデラート、ヴィヴァーチェ、マエストーソ、ヴィーヴォ」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「アレグロ・アラ・ダンツァ」の3楽章から成ります

聴衆のみならず楽員からも大きな拍手で迎えられたカミロが登場し、ピアノに対峙します 鈴木の指揮で第1楽章に入りますが、この楽章は「テネリフェ島のテイデ火山を訪れた際にインスピレーションを受けた音楽」とのことで、序奏部こそ低弦による静かなメロディーが奏でられますが、すぐに鋭角的なリズムを中心とするアレグロに移ります 本人しか演奏できないのではないかと思わされる超絶技巧曲を、オケとの丁々発止のやり取りで、またソロによる超高速演奏でガンガン弾きまくります 「スペクタル」とでも言いたくなるような、映画音楽として使えるような音楽です しかし、終結部は静かに閉じます 第2楽章は一転、ピアノ・ソロとオケとのハーモニーが美しく響きます 第3楽章に入ると、ピアノ・ソロと打楽器奏者総動員によるダンスのリズムが展開し、弦楽器の渾身の演奏とのコラボによりエキサイティングなフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーの嵐にカミロは、手に持ったハンカチを上空に投げ上げました それはあたかもトライを成功させたラグビー選手が、直後にボールを投げ上げる光景と同じに見えました カミロは会場いっぱいの拍手に応え、ゴールキックをする代わりに「カリブ」という超絶技巧の自作曲をアグレッシブに演奏、再び大きな拍手とブラボーの嵐に包まれました 再びボールを、もとい、ハンカチを投げ上げたことは 言うまでもありません

 

     

 

プログラム後半の1曲目ははモーツアルト「交響曲第28番 ハ長調 K.200(189k)」です この曲は1774年にザルツブルグで作曲されました 第1楽章「アレグロ・スピリトーソ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「プレスト」の4楽章から成ります

鈴木の指揮で第1楽章に入りますが、軽快なテンポ設定に好感が持てます モーツアルトはテンポが肝心です 金子亜未のオーボエが素晴らしい 第2楽章では第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる対抗配置の効果が表れていました 第3楽章では松坂隼の柔らかいホルンが冴えています 第4楽章はモーツアルトらしい愉悦感に満ちた軽快な演奏が繰り広げられました 同じ時期に作曲された作品では「交響曲第29番」が有名ですが、この第28番もセレナーデのような素敵な作品です

最後の曲はラヴェル「ボレロ」です この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が1928年にバレエ・ダンサーのイダ・ルビンシテインの依頼により作曲、同年11月22日にパリ・オペラ座で初演されました 飯尾洋一氏のプログラム・ノートによると、「ラヴェルは当初アルベニスのピアノ曲『イベリア』をオーケストレーションするつもりだったが、編曲の権利にまつわる問題から諦め、バレエ初演の3週間前になって、新たにオリジナルの作品を書くことを決心した ラヴェルは時間がないのだから『ごく単純な譜面を考えるしかない』として、ボレロを書き上げた」とのことです この曲の大きな特徴は、基本パターンの反復と、全曲を通した大きなクレッシェンドにより構成されることです 小太鼓のリズムに乗せて、エキゾチックな主題が次々と楽器を変えながら奏でられていき、最後にどんでん返しで曲を閉じる、というものです

鈴木の指揮で演奏に入ります。フルート ⇒ クラリネット ⇒ ファゴット ⇒ エス・クラリネット ⇒ オーボエ・ダモーレ・・・という順に楽器を変えて同じメロディーが奏でられていきます   読響と言えども完璧な演奏とはいかず、2,3の楽器ソロが不安定になったところがありました それだけこの曲は演奏者からすればプレッシャーが大きいのでしょう

そうは言うものの、最後の大団円の終結部ではステージに乗ったすべての楽器が咆哮し、炸裂し、刻みました 会場は満場の拍手で温度が2度上昇しました この曲は誰が指揮をしてもそれぞれのソリストが名人芸で役割を果たし、オケがバックアップすればこういう結果になる、と思ってしまうのは素人考えでしょうか

振り返ってみると、この日のコンサートはカミロの「ピアノ協奏曲第2番」の日本初演が一番印象に残りました ステージ上に収音マイクが林立し、テレビカメラが数台稼働していたので、いずれ日テレで放送されると思います

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新国立オペラ、ヴェルディ「リゴレット」を観る ~ ロベルト・フロンターリ、ハスミック・トロシャン、イヴァン・アヨン・リヴァス、マウリツィオ・ベニーニにブラボー! / 葵トリオのチケットを取る

2023年05月19日 00時57分40秒 | 日記

19日(金)。10月9日(月・祝)14時から第一生命ホールで開かれる「葵トリオ」のチケットを会員先行発売で取りました 「葵トリオ」は第67回ARDミュンヘン国際音楽コンクールで日本人団体として初の優勝を果たした俊英メンバーによるピアノ三重奏団です メンバーはピアノ=秋元孝介、ヴァイオリン=小川響子、チェロ=伊東裕です。「葵(A O I )」は3人の名字の頭文字をとった名前です。プログラムは①エルガー「愛の挨拶」(ピアノ三重奏版)、②マスネ「タイスの瞑想曲」(Vn+P)、③サン=サーンス「白鳥」(Vc+P)、④ショパン「華麗なる円舞曲」(P)、⑤ラフマニノフ「ピアノ三重奏曲第1番 ト短調」、⑥メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調」です   チケット購入の第一目的は大好きなメンデルスゾーンのトリオを聴くことです

一般発売は5月23日(火)午前11時からですが、終演後の「アフタートーク」もあってチケット代が一般3,000円というのは極めて良心的だと思います

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で3048日目を迎え、旧統一教会の被害救済に取り組む弁護団は、教団に返金を求めている元信者の高齢女性1人の自宅を信者が訪れ、弁護士解任通知に署名させたとして、こうした行為を繰り返さないよう教団に警告書を送ったことを明らかにした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     教団に洗脳されてる信者は何をやっても自分が正しいと信じてるから手に負えない

 

         

 

昨日、夕食に「ナスと豚肉の中華風煮込み」「生野菜サラダ」「里芋の味噌汁」を作りました 「ナスと~」は新聞の「料理メモ」のレシピを参考に作りましたが、美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でヴェルディ「リゴレット」(新制作)初日公演を観ました 出演はリゴレット=ロベルト・フロンターリ、ジルダ=ハスミック・トロシャン、マントヴァ侯爵=イヴァン・アヨン・リヴァス、スパラフチーレ=妻屋秀和、マッダレーナ=清水華澄、モンテローネ伯爵=須藤慎吾、ジョヴァンナ=森山京子、マルッロ=友清崇、ポルサ=升島唯博、チェプラーノ伯爵=吉川健一、同夫人=佐藤路子、小姓=前川依子、牢番=高橋正尚。合唱=新国立劇場合唱団、管弦楽=東京フィル、指揮=マウリツィオ・ベニーニ、演出=エミリオ・サージです

私が新国立オペラの「リゴレット」を観るのは2008年、2013年に次いで今回が3度目ですが、エミリオ・サージの演出で観るのは初めてです

 

     

 

「リゴレット」はジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)が、ビクトル・ユゴーの「王は楽しむ」をもとに作曲、1851年にヴェネツィアのフェニーチェ劇場で初演された全3幕4場から成るオペラです

物語の舞台は16世紀のイタリア。女好きで軽佻浮薄なマントヴァ公爵に仕える道化師リゴレットは皆の嫌われ者 娘を公爵に弄ばれたモンテローネ伯爵は、嘲笑するリゴレットを呪う。一方、リゴレットの一人娘ジルダは身分を貧しい学生と偽ったマントヴァ公爵に恋をしてしまう リゴレットに恨みを持つ延臣は娘を誘拐し公爵の元に連れ去る これを知ったリゴレットは、半狂乱で殺し屋スパラフチーレに公爵殺害を依頼するが、裏切られてもなお公爵を愛するジルダが密かに身代わりとなる リゴレットが殺し屋から受け取った袋を開けると瀕死のジルダが現れる リゴレットは「ああ、あの呪いだ」と叫ぶ

 

     

 

【注】演出についても触れています。

METライブビューイングのイタリア・オペラの指揮で評価の高いマウリツィオ・ベニーニの指揮で「前奏曲」が演奏されます この演奏が凄い 「リゴレット」のテーマ「呪い」を音にしたような凄みのある演奏です この時点でベニーニは、聴衆を「リゴレット」の世界に引き込みます この時、舞台上では暗い中で死人のように動かない人々を赤い衣装のリゴレットが一人ひとり助け起こしています それが「前奏曲」が終わるや否や照明が点灯され「第1幕」に入り、起き上がった人たちが軽快な音楽に合わせて踊り始めます この「暗」から「明」への一瞬の転換が鮮やかです

 

     

 

リゴレットを歌ったロベルト・フロンターリは世界中のオペラ劇場で活躍するバリトンですが、期待を裏切らない力強い歌唱と卓越した演技力を発揮しました

ジルダを歌ったハスミック・トロシャンはアルメニア出身のソプラノですが、透明感のあるリリカルな歌唱が印象的です 第1幕のリゴレットとの二重唱「娘よ! おとうさん!」、アリア「慕わしい人の名は」、第2幕でのアリア「日曜ごとに教会に」、第3幕のリゴレットとの二重唱「私がおとうさんを騙したの!」・・・どれもが美しく繊細に歌われていました

マントヴァ侯爵を歌ったイヴァン・アヨン・リヴァスは1993年ペルー生まれのテノールですが、まったく無理なく超高音を歌うことができ、特に第3幕のカンツォーネ「女心の歌」の歌唱は師匠のフアン・ディエゴ・フローレスを思わせる圧巻のパフォーマンスでした

スパラフチーレを歌った妻屋秀和は何を歌ってもソツなく歌い演じるバスですが、この殺人者の役でも低音の魅力を発揮しました

新国立劇場合唱団(男声合唱)はいつもの通り高いパフォーマンスを発揮していました

特筆すべきはマウリツィオ・ベニーニ指揮東京フィルの演奏です ベニーニは急・緩のメリハリをつけたドラマティックな音楽づくりにより、歌手に寄り添いながら、リゴレットの、ジルダの心情を歌い上げました 特に第2幕のジルダのアリアに付けたオーボエの演奏が素晴らしかった 個人的にはベニーニを新国立オペラの音楽監督にしても良いのではないかとさえ思っています

カーテンコールが繰り返され、そこかしこからブラボーが飛び交ったプルミエ(初日)公演は大成功だったと言えるでしょう

余談ですが、プログラム冊子を読んで今回初めて知ったのは、「マントヴァ」という名前の公爵はいないということです マントヴァは北イタリアの地名で、その地の公爵ということです 美術史家の池上英洋氏によると「道化師リゴレットが仕える公爵の名は劇中には出てこないが、ピアーヴェによる台本には当初、その人物をヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガと特定できるような記述があった 1587年に25歳で公位に就き、1612年に49歳で亡くなるまでマントヴァで権力の座にあった人物である」とのことです このプログラム冊子は年間会員には無料で配布されますが、全てを読み終わるのに1時間くらいかかります いつも開場時間には会場に着くようにして、プログラム引換券で冊子を入手し、読める限り読んでから自席に着くことにしています。すごく参考になります

 

     

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METライブビューイングでヴェルディ「ファルスタッフ」を観る ~ ミヒャエル・フォレ、アイリーン・ペレス、クリストファー・モルトマン、ヘラ・へサン・パク、マリー=二コル・ルミューにブラボー!

2023年05月18日 00時02分13秒 | 日記

18日(木)。わが家に来てから今日で3047日目を迎え、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の名称変更を巡り、国が関連文書を開示しないのは違法だとして、神戸学院大の上脇博之教授が不開示決定の取り消しなどを求めた訴訟の第1回口頭弁論が17日、大阪地裁であり、国側は「公にすることで宗教活動や信教の自由を害するおそれがある」と争う姿勢を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     名称変更を許可した責任者が困るから 情報開示しないと決めたとしか考えられない   

 

         

 

昨日、夕食に「里芋と鶏肉の煮物」「生野菜とアボカドのサラダ」「白舞茸の味噌汁」を作りました 「里芋~」は新聞の料理欄に載っていたレシピで初めて作りましたが、とても美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ヴェルディ「ファルスタッフ」を観ました これは今年4月1日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演はファルスタッフ=ミヒャエル・フォレ、アリーチェ=アイリーン・ペレス、フォード=クリストファー・モルトマン、ナンネッタ=ヘラ・へサン・パク、クリックリー夫人=マリー=二コル・ルミュー、メグ・ペイジ=ジェニファー・ジョンソン・キャーノ。管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団、指揮=ダニエル・ルスティオー二、演出=ロバート・カーセンです

 

     

 

「ファルスタッフ」はジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)が、シェイクスピアの戯曲「ウィンザーの陽気な女房たち」と「ヘンリー4世」をもとに1890年から93年にかけて作曲、1893年2月9日にミラノ・スカラ座で初演されたヴェルディ最後のオペラであり喜劇です

ウィンザーのガーター亭にたむろする、太って好色な老騎士ファルスタッフは、金もないのに大酒を飲み、手下に恋文を出させる この恋文はなんと2人の女性に宛てて2通同じ文面になっている 受け取ったアリーチェとメグはあきれ果て、友人のクイックリー夫人と共にファルスタッフを懲らしめることにする だが、ファルスタッフに反感を抱いているのは彼女たちだけではなかった アリーチェの夫フォードとその友人たちも、不埒なファルスタッフを制裁しようとしているし、主人に嫌気がさしている手下たちも反抗を企てている(以上第1幕)。

その気になってフォード邸を訪れ、アリーチェを口説き始めたファルスタッフを災難が襲う フォードたちが彼に一泡吹かせようとして現れ、大勢で探し始める。洗濯籠に隠れて難を逃れたものの、その籠ごとテームズ川に放り込まれる羽目になる この騒ぎの間にフォードの娘ナンネッタと青年フェントンの仲が露見してしまう(以上第2幕)。

命からがら川から上がり、一杯飲んで一息ついたファルスタッフに、アリーチェから誘いがある 懲りないファルスタッフはそれが罠とは気づかないまま、夏至の夜のウィンザー公園へ出かける 変装して待ち受けるのはフォード夫妻をはじめとする町の人々だ。突っつかれ、からかわれるファルスタッフだが、めげない 騒ぎの間に若い恋人たちの婚約が認められるが、「この世はすべて冗談」とフーガによるアンサンブルの音頭を取るのはファルスタッフだった(以上第3幕)。

 

     

 

1954年、トロント出身のロバート・カーセンの演出は、時代を1950年代に設定しています 舞台セットや登場人物の衣装などはパステルカラーで、古き良き時代を思わせます

ファルスタッフを歌ったミヒャエル・フォレは1960年、ドイツ出身のバリトンですが、いかにも横柄な老騎士ファルスタッフを見事に歌い演じました

アリーチェを歌ったアイリーン・ペレスは1979年、シカゴのメキシコ移民の家庭に生まれました 独特の艶のあるソプラノで聴衆を魅了しました

フォードを歌ったクリストファー・モルトマンは1970年、イギリス出身のバリトンですが、力のある歌唱とコミカルな演技力が魅力です

ナンネッタを歌ったヘラ・へサン・パクは1988年、韓国生まれ。透明感のあるソプラノが印象的でした

クリックリー夫人を歌ったマリー=二コル・ルミューは1975年、カナダ出身のコントラルト(アルトの一種)。2000年にエリザベート王妃国際コンクールでカナダ人として初めて優勝した実力者です 深みのある豊かな歌唱と、コミカルな演技力で圧倒的な存在感を示しました

メグ・ペイジを歌ったメゾソプラノのジェニファー・ジョンソン・キャーノのプロフィールは不明ですが、豊かな歌唱力が印象的です

特筆すべきは1983年、ミラノ生まれのダニエル・ルスティオー二の指揮です 第1幕の女性4人の「おしゃべり四重唱」をはじめ、速めのテンポでグイグイ押していき、このオペラがアンサンブル・オペラであることを強く印象付けました

「ファルスタッフ」の大きな特徴は、アリアらしいアリアもなく、これといった聴きどころもなく、言葉がそのまま歌になるところです しかし、第3幕のウィンザー公園のシーンでは、フェントンが恋人ナンネッタへの愛を歌い、妖精の女王に扮したナンネッタが妖精たちを従えて歌います つまり、ヴェルディは生涯最後のオペラで、若者二人にはアリアを用意したのです 私には、これは大きな意味があると思えます ヴェルディは若者たちにオペラの将来を託したのかもしれません

本公演の総上映時間は約3時間ですが、本編の第1幕(第1場、第2場)、第2幕(第1場、第2場)、第3幕(第1場、第2場)の各幕間には歌手へのインタビュー等が入りますが、それぞれの「場」のつなぎ時間には舞台裏での模様替えの様子が写し出されます これがライブビューイングならではの大きな特徴ですが、今回の公演は「場」が多く「つなぎ時間」が長かったので、本編の正味上映時間は約2時間15分でした 総上演時間をもっと短くしようとすれば出来るのでしょうが、それではライブビューイングらしさを失うように思います そもそもオペラはゆとりをもって観るべきでしょう

 

     

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フリードリヒ・グルダ著「俺の人生 まるごとスキャンダル」を読む ~ ジャンルを超えた巨匠ピアニストの音楽と人生

2023年05月17日 06時56分49秒 | 日記

17日(水)。昨日午前9時過ぎ、都立O病院泌尿器科で、主治医のU医師が私に告げました 「4月28日に行った前立腺生検では16カ所から前立腺組織を採取しましたが、どこからも癌組織は発見されませんでした」。「検査後はお酒は控えるように」と言われていたのに、毎日のようにビールやワインを飲んでいたように、私は全然心配していませんでした しかし、主治医から直接「癌はなかった」と告げられホッとしたというのが正直な気持ちです ただし、PSA(前立腺特異抗原)の数値が標準より高いので、半年に1度程度の頻度で定期的に検査をすることになりました いいんです、お酒が飲めれば

ということで、わが家に来てから今日で3046日目を迎え、ロシア正教会は15日、ロシアのプーチン大統領が15世紀の貴重なイコン(聖像画)「至聖三者」を同正教会に引き渡すことに決めた、と発表したが、正教会はプーチン政権の支持基盤の一つで、ウクライナ侵攻にも協力、プーチン氏は出馬が取り沙汰されている来年の大統領選に国宝級の「贈り物」でキリル総主教の貢献に報いたとみられる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     強盗殺人誘拐侵略政権に加担するロシア正教会は 旧統一教会と同様 宗教ではない

 

         

 

昨日、夕食に「鮭の塩焼き」「鯵のナメロウ」「シラスおろし」「豚汁」「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました 和食はいいですね

 

     

 

         

 

フリードリヒ・グルダ著「俺の人生まるごとスキャンダル」(ちくま学芸文庫)を読み終わりました フリードリヒ・グルダ(1930-2000)はウィーン出身の20世紀を代表するピアニスト、作曲家。バッハ、モーツアルト、ベートーヴェンのクラシックの名盤を数多く残したが、クラシックにとどまらず、ジャズや即興演奏でも名声を博した

 

     

 

グルダの略歴を簡単にまとめると次の通りです

1930年5月16日(昨日が生誕93年)にウィーンで生まれる。8歳の時に、ウィーン音楽院でフェーリクス・パツォフスキーから最初のピアノのレッスンを受ける 12歳からウィーンの国立音楽アカデミーでピアノをブルーノ・ザイドゥルホーファーに、楽理と作曲をヨーゼフ・マルクスに学ぶ 1946年(16歳)ジュネーヴ国際コンクールで第1位に入賞 演奏ピアニストとしての極めて輝かしいキャリアをスタートさせた しかし、1950年代半ばに入ると、それだけでは満足できなくなる 「ジャズ・メンたちは、バッハやモーツアルトと同様に、僕の手本となるべき人々だ」と日記に書き、クラシック界のピアニストとしてのビッグ・ネームを背負いながら、様々なジャンルの音楽をミックスしたコンサート活動や、自らが作曲した作品によって音楽ジャンルの枠を越えた活動に全力を注いだ 2000年に死去したが、彼が尊敬するモーツアルトの誕生日と同じ1月27日だった

本書は グルダの折に触れての発言を集めて編纂したもので、田辺秀樹氏の翻訳の力もあるかもしれませんが、その語り口はフレンドリーで、グルダの飾らない人間性が伝わってきます 本書を読んで分かることは、グルダが生涯で一番主張したかったのは、クラシック音楽の『文化政策的』な意味での解放や、堅苦しい慣習の打破ということです

クラシックの分野でグルダが影響を受けたのは、ウィーン音楽院の先生方のほかに、アルフレッド・コルトーが挙げられています グルダは次のように語っています

「俺は若かったころ、彼の演奏を聴いて、たまげたよ 今になってみれば、その理由がわかる。コルトーは型通りの弾き方をしなかったんだ 彼の演奏を聴いていると、この人はまさにコルトー流に弾いている ほかのだれとも違う弾き方だっていう印象があった。俺はコルトーの追っかけまでやったくらいだよ

また、ミケランジェリについては次のように語っています

「ミケランジェリは、ジュネーヴ国際ピアノ・コンクールの戦前の最後の優勝者だった 1939年だ。俺の場合は戦後最初ということになる 俺たちはまったく違うタイプだ。ミケランジェリみたいに自分に厳しくて、満足することがまるでなくて、ひたすら過酷な苦役ばかり、なんていうんじゃ、さぞかしヒドイ人生だろうと思うよ あわれなヤツだよ 自分に対しておそろしく厳格な、狂信的完璧主義の奴隷っていう感じ ピアノを巡ってしょっちゅうトラブルを起こすのもそのせいさ

その厳格なピアニスト、ミケランジェリと自由奔放なグルダの両方に師事した女性ピアニストがいます 言うまでもありません。マルタ・アルゲリッチです グルダはアルゲリッチとの出会いについて次のように語っています

「かつて一度、この俺が教師になりたいと思ったことがあったよ 何度も南米に演奏旅行に出かけていたけど、しつこい母親が12歳になる娘のアルゲリッチを連れてきた 俺はまあ ちょっとピアノを弾くくらいの たいしたこともない子どもなんだろうと思っていた   すごく可愛い子だから、俺も少しは愛想が良くなって、「何を弾いてくれるの? どこでピアノの勉強をしたの?」ってやさしく訊いた。彼女は子どもらしい率直さでシューベルトを弾いた もう、驚いたのなんのって 神童ってものが、本当にいたんだよ」「アルゲリッチはそれから2年以上、俺の生徒になったんだ   もっとも、教えるといっても、それは実に風変わりな指導だった。何しろこの娘ときたら、なんだってできちゃったんだ。まったく信じられないよ 12歳かそこらでだぜ。俺は、何を教えていいかわかんなかった」「君に教えることは何もない。君はいったい何がしたいんだ?と訊いたよ。すると彼女は『クラシック音楽をウィーン人のあなたのところで学びたい』と言った。彼女は要するにウィーンという環境の中で、クラシックについてもっと学びたいんだということが分かった

指揮者について、グルダが高く評価しているのはカール・ベーム、ジョージ・セル、アーノンクールだということが分かります カラヤンについても認めざるを得なかったようです

また、モーツアルトについては次のように語っています

「モーツアルトはいつも、ふさわしくないやり方で演奏されている いま俺が問題にするのはピアニストについてだけどね。ピアニストたちは、モーツアルトを演奏する際はいつも、プログラムの最初にそれをもってくる そのために、聴衆の半分はろくにそれを聴かないってことになるんだ。遅れて来る客も多いし、そうでなくたって、『これは易しい曲で、まあ小手調べなんだ』って思ってるからね バンバン弾きまくるメイン・プログラムは、後半のチャイコフスキーやブラームス等々だってわけさ。でも、これはとんでもない思い違いで、正しい関係の転倒なんだよ

グルダはクラシックにとどまらずジャズなどにも手を伸ばしたことから、様々なスキャンダルを巻き起こします その都度、コンサートの主催者側に迷惑をかけたりしますが、彼は自分の主張を通すために確信犯的にやっています それは彼が誰もが認める実力者だから可能なのです

ところで、グルダは1967年7月~8月にベートーヴェン「ピアノソナタ全集」(CD9枚組)を録音、AMADEOレーベルから発売していますが、この録音に至るいきさつについて次のように語っています

「重要なことの多くは、偶然のおかげなんだ 個人的な理由からカネが必要になって、さしあたり急いでカネが必要になったことがあった。そうなんだ、離婚ってやつは、結婚するよりずっと高くつくからね そんなわけでピンチほどではないけど、もう少しなんとかしないと、っていう感じだったんだ。『しょうがねえな。何かやるしかねえな』ってわけで、俺はアマデオ・レコードでベートーヴェンのソナタ全集を録音することにした いろいろ交渉した結果、前金10万シリングと印税っていう線で合意した

つまりグルダは離婚の慰謝料を稼ぐのためにベートーヴェンのソナタ全集を録音したのです それが下の写真のCD全集です 久しぶりに聴いてみようと思います

 

     

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トッド・フィールド監督 ケイト・ブランシェット主演「TAR ター」を観る ~ ベルリン・フィル初の女性指揮者に任命されたターの成功と転落を描く:テーマはマーラー「交響曲第5番」

2023年05月16日 00時01分06秒 | 日記

16日(火)。わが家に来てから今日で3045日目を迎え、ロシア大統領府によると、プーチン大統領は12日、南アフリカのラマポーザ大統領と電話で会談し、8月にヨハネスブルクで開かれる新興5か国(BRICS)首脳会議に向けて調整を続けることで一致したが、プーチン氏はウクライナ侵攻に絡んで国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されており、ICC加盟国の南アを訪れるかが焦点になっている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     どうせプーチンは 南アを訪問できるように 経済援助かなんか 提案したんだろうね

 

         

 

昨日、夕食に「ホウレンソウと豚肉の甘辛卵とじ」「蒸しジャガ  タラコバター」「生野菜とアボカドのサラダ」「大根の味噌汁」を作りました 「ホウレンソウ~」は初挑戦、「蒸しジャガ~」は先週作った時に、娘から「また作って!」とリクエストがあったので再度作りました   どちらも美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、TOHOシネマズ新宿でトッド・フィールド監督による2022年製作アメリカ映画「TAR ター」(159分)を観ました

リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は天才的な能力と類まれなプロデュース力で、アメリカの5大オーケストラの音楽監督を務めた後、女性として初めて世界最高峰のオケ、ベルリン・フィルの首席指揮者に任命された 7年を経た現在も指揮者として活躍する一方で、作曲者としての才能により、エミー賞、グラミー賞、トニー賞のすべてを制する 師バーンスタインと同じようにマーラーを愛し、ベルリン・フィルで唯一録音を果たせていない「交響曲第5番」を、来月ライブ録音し発売するまで漕ぎつけた その傍らで、自伝の出版も控えるなど多忙な毎日を送っていた また、投資銀行家でアマチュアオケの指導者としても活動するエリオット・カプラン(マーク・ストロング)の支援を得て、若手女性指揮者に教育と公演のチャンスを与える団体「アコーディオン財団」も設立し、ジュリアード音楽院でも指揮の講義を受け持つことになる そんな多忙なリディアを公私ともに支えているのは、オーケストラのコンミスのシャロン(ニーナ・ホス)だった。シャロンはリディアの恋人で、養女ペトラを一緒に育てている。さらに、リディアの副指揮者を目指す個人秘書で元恋人のフランチェスカ(ノエミ・メルラン)も、厳格なリディアの要求に応えていた 向かうところ敵なしのリディアだが、最近は新曲の作曲が思うようにいかず悩んでいた そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者クリスタ・テイラーが自殺したという訃報が入る 実は、リディアは裏では地位と権力を使って若い女性指揮者に肉体関係を迫るといったセクハラを繰り返しており、クリスタは犠牲者の一人だった クリスタの家族から告発の動き出たため、リディアは幻覚を見るようになり精神的に不安定になっていく パートナーのシャロンの心も離れていく リディアはライブ録音のためのコンサート会場で、リディアの代役指揮者エリオット・カプランがマーラーの第5番を指揮するところを突き飛ばし、楽団から首席指揮者の座を追われてしまう リディアは生まれ故郷に戻り、家で見つけた師匠バーンスタインのモノクロ・ビデオテープを観て一から出直すことを決意、タイに赴いて指揮者として活動を開始するが、聴衆はベルリン・フィルの聴衆とは程遠い、ゲーム「モンスター・ハンター」のコスプレ衣装に身を包んだ観客だった

 

     

 

最初に申し上げておくと、主人公のリディア・ターは実在の人物ではありません。架空の女性指揮者です

この映画は、クラシック音楽についてある程度知識を持っている人にとっては たまらなく面白い作品です そうでない人にとっては退屈かもしれません とくに冒頭30分くらいは

映画の序盤、レストランでのターと先輩老指揮者との会話シーンでは、「フランスのルイ14世の宮廷楽長を務めたジャン=バティスト・リュリ(1632-1687)は1687年、当時の習慣に従って長くて重い杖を指揮棒として使い、それを床で打ってリズムをとっていたが、誤って自分の足を勢いよく強打し、傷口に大きな膿傷が出来、それが原因で急死した」というエピソードが語られます

登場人物の一人「投資銀行家でアマチュアオケの指導者としても活動するエリオット・カプラン」には実在のモデルがいます それはアメリカの実業家でマーラー研究家のギルバート・キャプラン(1941-2016)です 1967年創刊の経済誌「インスティテューショナル・インベスター」の創刊者として実業に携わり、成功を収めました 青少年時代に音楽教育を受けたことはなく、大好きなマーラーの「交響曲第2番 ”復活”」だけを指揮することを夢見て、30代を過ぎてからシカゴ響音楽監督のゲオルグ・ショルティに師事して指揮を学びました 40代で自費によるコンサートを行い、指揮者としてデビューしました その演奏が絶賛を浴び、世界中のオーケストラから声がかかり、ロサンジェルス・フィル、セントルイス響、ピッツバーグ響、ベルリン・ドイツ・オペラ座管などで指揮をしました この映画ではマーラーの「第2番」ではなく「第5番」を振るところが違います

ジュリアード音楽院での指揮の授業のシーンが印象的です 生涯に複数の妻と20人の子供をもうけたJ.S.バッハを、「性的にも人種においてもマイノリティーである自分には受け入れがたい」と主張する黒人男子学生に対し、リディアは「クラシックの作曲家はほとんどがドイツ系の白人男性よ! 肌の色に固執しないで音楽に集中しなさい」と彼を容赦なく罵倒します これは正論でしょう  しかし、これは後に彼の恨みを買うことになります

リディアは若い新人チェリスト、ソフィー(オルガ・メトキナ)が気に入り、エルガーの「チェロ協奏曲」を彼女をソリストとして抜擢し、マーラー「第5番」とともに演奏する計画を立てます リハーサルの模様が映し出されますが、ソフィー役のオルガは本当にチェロを弾いています それもそのはず、2001年ロンドン生まれの彼女はノルウェー国立音楽大学でチェロを学んでいます 11歳からリサイタルを行い、13歳からオーケストラで弾いています 本作の劇中音楽を収めたアルバムでは、ナタリー・マーレイ・ビール指揮ロンドン交響楽団と共に録音に参加しているとのことです これを機会に世界に飛躍するかもしれません

映画のラスト近く、リディアが生まれ故郷の家でバーンスタインのモノクロ・ビデオテープを観て指揮者の原点に立ち戻るキッカケを掴みますが、その時の映像はバーンスタインの教育活動の一環「ヤング・ピープルズ・コンサート」の一場面で、演奏されていたのはレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルによるチャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」の第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」でした バーンスタインは一流の作曲家、指揮者であるとともに、クラシック音楽を子どもたちに分かりやすく伝える教育者でもありました 私はレーザーディスクで「ヤング・ピープルズ・コンサート」全巻(10巻?)を持っていましたが、プレイヤーが壊れたため、泣く泣くセコハン・レコード屋に売り飛ばしました

ラストのリディアがタイに赴いて、ゲーム「モンスター・ハンター」のコスプレ衣装の観客のためにオケを指揮するという設定については、世界のトップ・オーケストラであるベルリン・フィルからアジアの片隅の劇伴オケの指揮者に転落したリディアの人生を象徴するものとして考えられたのだと思います しかし、タイのオーケストラ、例えばバンコク交響楽団やその関係者からみれば、「バカにするな」ということかも知れません しかし日本でも、観客のコスプレは別として、プロのオーケストラが「ドラゴンクエスト・コンサート」をやったり、映画に合わせてライブで演奏したりして結構な集客力を誇っています 一概に「これはけしからん」と決めつけるのは難しいと思います

本作は2022年の第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ケイト・ブランシェットが「アイム・ノット・ゼア」に続き2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞しました それはそうでしょう 彼女がマーラーの「交響曲第5番」を指揮する姿だけを取り上げても、狂気とも言うべき迫力に満ちています

この映画はクラシック音楽愛好家にとっては必見です そうでない人は サイコスリラー映画として見てはどうでしょう

 

     

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下野竜也 ✕ バイバ・スクリデ ✕ NHK交響楽団でドヴォルザーク「交響曲第7番」、グバイドゥーリナ「オッフェトリウム」他を聴く ~ N響5月度Aプロ定期2日目公演

2023年05月15日 06時45分02秒 | 日記

15日(月)。わが家に来てから今日で3044日目を迎え、ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、キリスト教カトリック教会のローマ教皇庁(ヴァチカン)を訪れ、教皇フランシスコと会談したが、教皇は大統領に、自分は絶えず平和のために祈っていると伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     要するに キリスト教は 平和を祈るだけで 戦争を止める力はない ということだね

 

         

 

昨日、NHKホールでN響5月度Aプロ定期2日目公演を聴きました プログラムは①ラフマニノフ:歌曲集 作品34から「ラザロのよみがえり」(下野竜也編)、「ヴォカリーズ」、②グバイドゥーリナ:オッフェルトリウム、③ドヴォルザーク「交響曲第7番 ニ短調 作品70」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=バイバ・スクリデ 、指揮=下野竜也です

 

     

 

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつものN響の並び。コンマスはゲスト・コンサートマスターの郷古廉です

最初にラフマニノフ「14の歌曲集 作品34」から第6曲「ラザロのよみがえり」(下野竜也編)と第14曲「ヴォカリーズ」が続けて演奏されます 「歌曲集 作品34」はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1912年(「ヴォカリーズ」のみ1915年)に作曲しました 「ラザロのよみがえり」はラザロの復活という奇跡を目の当たりにした民衆の思いを伝えるもので、「ヴォカリーズ」は花形歌手ネジタノワのために作曲された 母音唱法で歌われる曲です

下野の指揮で「ラザロのよみがえり」の演奏に入ります   冒頭のトロンボーンによる厳かな演奏が印象的です 下野の編曲はドラマティックで色彩感が豊かです 続く「ヴォカリーズ」は弦楽器を中心に意外とあっさりと演奏されました 2曲の組み合わせが絶妙で、さすがはプログラミングの細部にこだわる下野竜也だと思いました

2曲目はグバイドゥーリナ「オッフェルトリウム」です この曲は旧ソ連内のタタール共和国生まれのソフィヤ・グバイドーリナ(1931~)が1980年に作曲したヴァイオリン協奏曲です 1981年にギドン・クレーメルが初演したことで、西側諸国でも彼女の名前が知られるようになりました

ヴァイオリン独奏のバイバ・スクリデはラトヴィア生まれで、リガとロストックの音楽院で学び、2001年のエリーザベト王妃国際音楽コンクールで第1位を獲得しました

下野の指揮で演奏に入ります 冒頭は弱音器付のトランペットによりJ.S.バッハ「音楽の捧げもの」の主題が演奏されます この主題は全曲を統一することになります その後は、いかにも現代音楽風の不協和音的な曲想が続きますが、後半になると「メロディー」を取り戻し、耳に心地よくなってきます・・・・ガクッ・・・あまりの心地よさに寝落ちしてしまいました 疲れてるな、オレ そんなわけでまともな感想は書けません、ごめんなさい

 

     

 

プログラム後半はドヴォルザーク「交響曲第7番 ニ短調 作品70」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)が1884年から翌85年にかけて作曲、1885年4月22日にロンドンで初演されました 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「ポーコ・アダージョ」、第3楽章「スケルツォ:ヴィヴァーチェ ~ ポーコ・メノ・モッソ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章から成ります

桐朋学園大学教授の沼野雄司氏はプログラム・ノートに、「ドヴォルザークはこの曲を作曲した前年の1883年に、ブラームス『交響曲第3番』の初演を聴いている」として、「堅固な構成感は、なによりブラームスを思わせる」と書いています 確かにこの曲のそこかしこにブラームスの影響を垣間見ることができます しかし、下野 ✕ N響によるこの日の演奏を聴く限り、すでにドヴォルザークのDNAとでも言うべき民俗的な音楽づくりが全曲を通して貫かれています 特に第3楽章のスケルツォはドヴォルザークそのものです

下野は終始ドヴォルザークへの共感をもってメリハリのある指揮を展開し、N響から重量感のある響きを引き出しました このコンビで聴くと、第7番は第8番、第9番”新世界より”と並ぶ名曲であることを確信させられます

満場の拍手の中 カーテンコールが繰り返され、楽団員を代表して女性ヴァイオリン奏者から下野氏へ花束が贈られました

 

     

     

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林美智子プロデュース「コジ・ファン・トゥッテ」を観る ~ 第一生命ホール「室内楽ホール de オペラ」:澤畑恵美、林美智子、望月哲也、黒田博、池田直樹、鵜木絵里、河原忠之にブラボー!

2023年05月14日 00時01分02秒 | 日記

14日(日)。わが家に来てから今日で3043日目を迎え、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は12日、同国の正規軍がウクライナ東部の激戦地バフムート近郊の拠点から「逃亡」していると述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ロシア軍の兵士にはウクライナと闘う大義がないからね 国より自分の命が大事だろ

 

         

 

昨日、晴海の第一生命ホールで「室内楽ホール de オペラ」シリーズ「林美智子のコジ・ファン・トゥッテ」を観ました これはコロナ前に上演し大好評だったモーツアルトのダ・ポンテ三部作(「コジ・ファン・トゥッテ」「ドン・ジョバンニ」「フィガロの結婚」)のピアノ伴奏による再上演企画です この公演の大きな特徴は独唱の全アリアをカットし、重唱のみを取り上げてアンサンブル・オペラの楽しさを前面に打ち出したところにあります 私は前回3作品とも観ましたが、どれもが大いに楽しめたので、日程の空いている限り再度観ようと思ったのです

出演はフィオルディリージ=澤畑恵美、ドラベッラ=林美智子、フェランド=望月哲也、グリエルモ=黒田博、ドン・アルフォンソ=池田直樹、デスピーナ=鵜木絵里。ピアノ=河原忠之です

 

     

 

オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」(「女はみなこうしたもの」または「恋人たちの学校」)は、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)がダ・ポンテの台本に基づき、1789年から翌90年にかけて作曲、同年ウィーンのブルク劇場で初演されました

フェランドとグリエルモの若者2人が「僕たちの恋人は浮気なんてしない」と言うと、哲学者のドン・アルフォンソはそれを否定する そこで3人は恋人たちが浮気をするかどうか懸けをする ドン・アルフォンソはデスピーナを巻き込んで策略を練る 若者2人は兵士として船に乗って戦地に赴くが、実際には船には乗らず 外国人に変装してお互いの恋人を口説きにかかる 「愛してくれないなら毒を呑んで死ぬ」という2人に、フィオルディリージとドラベッラ姉妹はたちまち恋に落ち、結婚承諾書にサインまでしてしまう すると、思ったより早く若者2人が戦地から戻り、姉妹は慌てる そこで若者2人は変装を解き、種明かしをする 2組のカップルは再び愛を確認し合い、ドン・アルフォンソが「コジ・ファン・トゥッテ」と言ってハッピーエンドで幕を閉じる

 

     

 

自席は1階5列13番、センターブロック左通路側席です 大ホールと異なり、小ホールの場合は前の席ほど良い席です 会場は満席に近いのではないかと思います

ステージの下手奥にピアノが置かれ、椅子が6脚並べられているだけのシンプルな舞台です それぞれの椅子には登場人物の名前入りの顔写真が掲げられていて、誰がどの役を歌うのかが一目瞭然となっています 劇中 椅子は小道具として重要な役割を果たします ステージ正面の壁の上方には大きなスクリーンが下げられ、歌に合わせて日本語の字幕が大きな文字で出る仕組みになっています また、歌はイタリア語で歌われますが、セリフは日本語なのでストレートにオペラの楽しさが伝わってきます

最初にドン・アルフォンソ役の池田直樹が登場しオペラの開幕を告げます 彼はこのオペラの狂言回し役として活躍します 次いで、オーケストラの代わりにピアノ1台で歌手陣を支える河原忠之が「序曲」を軽快に演奏します

次いで、ドン・アルフォンソ、フェランド、グリエルモが登場し、「私のドラベッラだけはそうじゃない」「女の操というものは」「美しいセレナータを」の三重唱が歌われます バス・バリトンの池田は低音の魅力で存在感抜群です テノールの望月哲也とバリトンの黒田博も良く声が通り、演技力も素晴らしい

そこにフィオルディリージとドラベッラが加わり「ああ、私の足は動いてくれない」からの五重唱になりますが、ソプラノの澤畑恵美の歌唱は美しく、メゾソプラノの林美智子の歌唱はそれに輪をかけて素晴らしい

いよいよ男2人が出兵することになり「もう一度口づけを」が歌われ、登場人物が舞台から引き揚げていきます その時、河原がピアノを離れ客席に向けて横断幕を掲げます。そこには「88分09秒が経過」と書かれています 「えっ、開演からそんなに時間が経ったか?」と思っていると、河原が「ハ・ヤ・オ・ク・リ(早送り)」と解読します つまり、男2人が戦場に赴いた後から次のシーンまでの長い時間を短縮してお届けします、というわけです これには会場は大爆笑です このアイディアは仕掛け人・林美智子プロデューサーによるものだろうか

そしてフィオルディリージ、ドラベッラ、ドン・アルフォンソの三重唱「さわやかに風よ吹け」が歌われますが、澤畑恵美、林美智子、池田直樹のアンサンブルが素晴らしかった

そして、遂にデスピーナの登場を迎えます この役に鵜木絵里ほど相応しい人はいません この役と「魔笛」のパパゲーナを歌い演じたら他の追随を許しません 歌はもちろん素晴らしく、コミカルな演技が聴衆の笑いを誘います

「ああ、はかない幸せ」から始まる第1幕フィナーレでは全員による六重唱が繰り広げられますが、まさにモーツアルトのアンサンブル・オペラの真骨頂です モーツアルトって何と素晴らしいんだろうと思います

20分休憩後の第2幕も、第1幕と同様に二重唱、三重唱、六重唱が歌われます この幕で可笑しいのは、フェランド、グリエルモの2人が毒を煽って死ぬ真似をするシーンです 2人が手にした小瓶は精力剤アルギンZではなかったか 2人を解毒するため、デスピーナが2人の身体に大きな磁石を当てるとビリビリと身体を震わせるシーンも可笑しかった ここではコメディアン・コメディエンヌとしての演技力が試されますが、3人とも合格です

ソロのアリアとレチタティーヴォを排し、重唱と日本語の簡潔なセリフにより、テンポよくストーリーを展開していく手法はユニークで、時間が経つのを忘れるほど楽しい 楽しませてくれた歌手6人の皆さんと、歌手陣を支えたピアノの河原忠之氏にあらためて大きな拍手を送ります 中でも、本公演の日本語台詞台本・構成・演出を担い、そのうえ自らドラベッラを歌い演じた林美智子さんに惜しみない拍手を送ります モーツアルトのオペラは、シンプルな舞台、ピアノ1台の伴奏でも 歌手陣が充実していれば 十分楽しさが伝わってくることを証明しました

 

     

     

     

 

次は6月10日(土)14時開演の「ドン・ジョバンニ」です もちろん私も観に行きます 時間のある方はお出かけされてはいかがでしょうか 楽しくて、絶対後悔しません チケットが残っているかどうかだけが心配です 残っているといいですね 残ってますよ、きっと

 

     

     

 

     

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ミハイル・プレトニョフ ✕ 東京フィルでラフマニノフ:幻想曲「岩」、交響詩「死の島」、「交響的舞曲」を聴く ~ 東京フィル5月度定期演奏会より

2023年05月13日 00時16分15秒 | 日記

13日(土)。わが家に来てから今日で3042日目を迎え、英国防省は11日、ロシア国防省が今年に入りウクライナでの戦闘要員として受刑者の活用を強化し、4月だけで最大1万人が入隊契約をしたとみられるとの分析を明らかにした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ロシアではワグネルと国防省が戦闘要員として受刑者の奪い合いをしているんだね

 

         

 

昨日、夕食に「ピーマンのハムチーズ焼き」「新じゃが タラコバター」「生野菜とアボカドのサラダ」「モヤシの味噌汁」を作りました 「ピーマン~」と「新じゃが~」は初めて作りましたが、「新じゃが~」は朝日朝刊の「料理メモ」に載っていたレシピで作りました。旬の食材は美味しいですね

 

     

 

         

 

昨夜、東京オペラシティコンサートホールで東京フィル「第154回オペラシティ定期シリーズ」を聴きました プログラムは今年生誕150年かつ没後80年のダブル・アニヴァーサリーイヤーとなるセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)の3作品=①幻想曲「岩」作品7、②交響詩「死の島」作品29、③交響的舞曲 作品45です   指揮は東京フィル特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフです

実は10日(水)のサントリー定期シリーズが東京シティ・フィル定期と重なったため、東京フィルをこの日に振り替えました 主催者側が用意した席は1階10列15番、センターブロックのど真ん中です。こういう席は人によっては理想的だと思うでしょうが、私にとっては前過ぎで、通路から一番奥の席なので苦痛です どうも両脇に人がいると落ち着きません しかし、主催者側としては最大限の配慮をしてくれたのでしょうから受け入れるしかありません

 

     

 

オケは12型で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります コンマスは依田真宣です

1曲目は「幻想曲『岩』作品7」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が21歳だった1893年に作曲、1894年4月1日にモスクワで初演されました 老いた男と若い娘の出会いと別れを描いたレールモントフの短編「断崖」の印象を受けて作曲した作品です なお、一柳冨美子さんのプログラム・ノートによると、「岩」は過訳で、正しくは「断崖」だそうです

プレトニョフの指揮で演奏に入りますが、冒頭の低弦による重心の低い序奏が印象的です 独奏フルートが素晴らしい しかし、席が前過ぎるせいか、管楽器の音が大きく聴こえて耳にビンビンきました。これは如何ともしがたいと思いました

2曲目は「交響詩『死の島』作品29」です この曲はベックリンの代表作「死の島」の白黒複製画と出会い、そこからインスピレーションを得て、36歳だった1909年に作曲、同年4月18日にモスクワでラフマニノフ自身の指揮により初演されました なお、一柳さんによるとこの「死の島」も誤訳で、正しくは「死者たちの島」だそうです 作品は3部形式、ラルゴで切れ目なく演奏されます 白黒の版画に描かれた死の島、冥界の海、渡し舟、それを漕ぐ渡し守の様子が音楽により描写されます 一柳さんによると、「後年、ラフマニノフがフルカラーの原画を見た時、『原画を先に見ていたら曲は生まれなかった』と語ったという」とのことです

プレトニョフの指揮で演奏に入りますが、この曲でも冒頭の低弦による重心の低い演奏が印象的です 全体的に暗いタッチの息の長い旋律が朗々と奏でられます 中盤で須田祥子率いるヴィオラ・セクションが狂気迫るアグレッシブな演奏を展開していたのが印象的でした 全体の演奏を聴く限り、なるほど カラーの世界ではなくほの暗いモノクロの世界が目に浮かびました

 

     

 

プログラム後半は「交響的舞曲 作品45」です この曲は67歳だった1940年に作曲、1941年1月3日にユージン・オーマンディ✕フィラデルフィア管弦楽団により初演されました 第1楽章「ノン・アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート:テンポ・ディ・ヴァルス」、第3楽章「レント・アッサイ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

プレトニョフの指揮で第1楽章の演奏に入りますが、泰然自若たる演奏で、もしオットー・クレンペラーがこの曲を指揮したらこういう風になるのだろうか、と密かに思いました    印象的だったのはフルート、オーボエ、クラリネットなど木管楽器の素晴らしいアンサンブルのあとに演奏されたアルトサックスによる演奏です   その後の第1ヴァイオリンとチェロによるアンサンブルも美しく響きました    第2楽章で印象に残ったのは依田コンマスの独奏と、その後のイングリッシュ・ホルンの抒情的な演奏です    第3楽章では、序盤に鐘が12回連打されるところ、そして終結部で総奏のあと、タムタム(ドラ)だけが会場に響き渡り、静かに消えていくシーンは感動的でした

指揮者ミハイル・プレトニョフは、1990年にロシア史上初めて国家から独立したオーケストラ「ロシア・ナショナル管弦楽団」を設立し、自ら指揮者として活動を開始しました 当ブログで2月度東京フィル定期公演についてブログアップした際に、コメントを寄せてくださった きな子さん(匿名)によると、プレトニョフのジェネラル・マネージャーでもある「ロシア・ナショナル管弦楽団」の理事がロシア当局によって突然解雇され、それに反発したプレトニョフも解任されたという噂があるそうです 昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けてでしょうか、プレトニョフは2022年にロシア国外で、新たなオーケストラ「ラフマニノフ国際管弦楽団」を創設しています 「現在のプーチン政権とは一線を画すが、あくまでもロシアにこだわって音楽活動を進めていく」という信念と覚悟の現れだと思います

この日の演奏は、プレトニョフのこうした信念と覚悟の裏付けに基づいたプログラミングであり、確信に満ちたコンサートだったと思います

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