こんにちは/こんばんは。
清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Thomas_Fatin@unsplash_com
前回、触れましたように南西部のレイキャネス半島にある火山地帯から、またマグマが噴出し、人口三千七百人ほどの港町Grindavikグリンダビクに被害が出てしまいました。
溶岩が流れ込んだ町の端っこの家屋三件が焼失したのですが、それ以上に町のあちこちで地割れや隆起が生じ、道路や土地そのものが寸断されています。私がネットの報道で見る輪島や珠洲の町の様子と同じような感じです。
幸いグリンダビクでは人的な被害は、噴出以前の事故で亡くなられた(行方不明)男性ひとりを除いてはありませんでしたが、住民は全員町から退避を余儀なくされています。
事故で亡くなられた方は、町の復旧作業中に突然現れた地割れの中に落ち込んでしまったのですが、事故後の検証により、グリンダビクの町の足元の地盤そのものの中に、相当な地割れを起こしかねない空洞というか、不安定な部分があるのではないか?と疑われています。
そういうわけで、今、アイスランドでもグリンダビクの住民の人たちのこれからの生活について盛んに議論がなされています。
前回の派手だったマグマ噴出に続いて、今回も日本のニュースでも扱われたようで、何人もの方から「大丈夫ですか?」というようなご心配をいただきました。ありがとうございます。大丈夫です。レイキャビクでは、ほとんど影響はありませんでした。
それから、今回の噴火というかマグマ噴出に関しては、一昨日正式に「終わった」という報告がなされています。
終わっても家に帰れるものでもなし。私の頭の中では、この辺は能登の震災のニュースと重なってしまいます。国会議員の中には「国がグリンダビクのすべての住宅を買い上げるべきだ」と主張する人もいます。
寸断されたグリンダビクの町中の道路 町のあちこちでこんなことに
Myndin er ur ReykjavikGrapevine.is
さて、グリンダビクの住民の方々への支援を巡る議論の中で、Grindvikingurグリンビーキングという言葉を頻繁に目にしたり耳にしたりします。Grindavikの人を指す言葉で「大阪人」とか言ったりするのといっしょです。
Grindavikiはgrindとvikのふたつの言葉がつながったもので、ちょっと確信がないのですがgrindは「格子状」を表し、vikは(これは確かですが)「小さな湾」を意味します。だから「格子のように見える?湾」なのでしょうか?Grindは別の意味かもしれません。悪しからず。m(_ _)m
Reykavikレイキャビクもreyk(煙)とvikの組み合わせで、これは「煙が立つ湾」であることはよく知られています。Vikという言葉がつく地名はアイスランドには無数にあります。そして例えばレイキャビクについてもReykvikingur「レイキャビクの人」という言葉が存在します。
で、ふと思ったのですが、GrindvikingurとかReykvikingurという場合、これってvikingur「バイキング」と関係があるのだろうか?バイキングって、なんでバイキングというのだろうか?とアイスランド学初歩のような疑問を持ちました。
アイスランド大学のサイトに「アイスランド広辞苑」のようなものがあるのですが、さっそくそこで調べてみました。
驚いたことに「バイキング」という言葉の起源については学者さんたちの間でも一致した見解はなく、長い間議論が続いているのだそうです。これは歴史学の教授だった故グンナル・カトゥルスソンさんの解説。
オスロフョルズル
Myndin er ur Visindavefur.is
バイキングという言葉は8〜10世紀の文献に出始めていたそうですが、さらに早く西暦800年以前にもアングロサクソン系の言葉に現れているとのこと。そんなに早くから英語圏に入っていることから、学者の中には「アングロサクソン語のwic (ノルマン人の兵営)に由来する」と結論づけた人もあるそうな。
その後より一般的になってきた説は、vik(湾)に由来する、とするもので、特にノルウェー東部のOslofjordurオスロフョルズルに関係したということです。バイキングは海賊でもあったわけですが、彼らは小さな湾にボートを隠して獲物を待つ、という常套手段を用いたことからvikingと呼ばれるようになったとか。
さらに別の説明もあります。バイキングは人殺しもしました。そこで、「殺す」を意味するvigヴィーグに由来し、gがkに変化した、とのこと。
さらにさらに別の説明。vikingはvikjaヴィーキャ「動く」「退く」という言葉から来ている。これはバイキングは一度出航すると何週間も自宅から「動き」「退いた」から、そう呼ばれるようになった、というものです。
まあ、説は色々あり、今でも「これで決まり」というものはないようです。「湾」に由来する説を取れば、GrindvikingurやReykvikingurにも関係していることになりますね。
いやいや、毎日のように使っている言葉にして、このような知識の欠如か。不学は一生ついて回ります。
日本にもバイキングの歴史やスカンジナビア語の専門の方が多くいらっしゃいますので、ここにご紹介したことの誤りやより正確なお教えをいただければ幸いです。ただ、叱らないで。(^-^;
グリンダビクに近い観光スポット、ブルーラグーンは営業を再開
Myndin er ur GuideToIceland.is
アイスランドの人はGrindvikingurやReykvikingurの他にも、Hafnafirdingur「ハフナフョルズルの人」とかAkureyngur「アクレイリ人」とかの「X X人」という呼び方を好んで使います。
大きな市や町ばかりでなく、例えば私のいる西街の住民はVesturbaeingurヴェストゥルバイイングルと呼ばれますし、もっと小さな通りなどにちなんで「X X人」が登場することもあります。住む場所、あるいは出身地についてのこだわりみたいなものを感じます。
知り合いのアイスランド人の女性は「生まれ育った通りの界隈に戻りたいという気持ちがあるわ」と言ってましね。今いるところから車で10分くらいと思うんだけど。そこまで固執するか?オラなんか、もうズーッと離れてますけどねぇ...
能登で輪島や珠洲を離れるか?というようなインタビューも目にしています。生まれ育った土地に対する愛情というものは確かにあるのだろうと思いますし、なんというか簡単に線引きできないものを感じますね。
ああ、そうだ。考えてみれば、ウクライナやパレスチナでも故郷を離れなくてはならない状況に人はそれこそ多数いるわけですよね。私が日頃会っている難民の人たちにしても同じだ。
安全な我が家に住む、ということがどれだけ難しくなってきているのでしょうか?私も含めて、今現在、安全な住処に居られる人はそのことを当たり前としてしまわないで、感謝した方が良いでしょうね。
とにかく、能登皆さんにしても、Grindvikingurの皆さんにしても、早く安全な「我が家」に戻れることを願い祈ります。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Thomas_Fatin@unsplash_com
前回、触れましたように南西部のレイキャネス半島にある火山地帯から、またマグマが噴出し、人口三千七百人ほどの港町Grindavikグリンダビクに被害が出てしまいました。
溶岩が流れ込んだ町の端っこの家屋三件が焼失したのですが、それ以上に町のあちこちで地割れや隆起が生じ、道路や土地そのものが寸断されています。私がネットの報道で見る輪島や珠洲の町の様子と同じような感じです。
幸いグリンダビクでは人的な被害は、噴出以前の事故で亡くなられた(行方不明)男性ひとりを除いてはありませんでしたが、住民は全員町から退避を余儀なくされています。
事故で亡くなられた方は、町の復旧作業中に突然現れた地割れの中に落ち込んでしまったのですが、事故後の検証により、グリンダビクの町の足元の地盤そのものの中に、相当な地割れを起こしかねない空洞というか、不安定な部分があるのではないか?と疑われています。
そういうわけで、今、アイスランドでもグリンダビクの住民の人たちのこれからの生活について盛んに議論がなされています。
前回の派手だったマグマ噴出に続いて、今回も日本のニュースでも扱われたようで、何人もの方から「大丈夫ですか?」というようなご心配をいただきました。ありがとうございます。大丈夫です。レイキャビクでは、ほとんど影響はありませんでした。
それから、今回の噴火というかマグマ噴出に関しては、一昨日正式に「終わった」という報告がなされています。
終わっても家に帰れるものでもなし。私の頭の中では、この辺は能登の震災のニュースと重なってしまいます。国会議員の中には「国がグリンダビクのすべての住宅を買い上げるべきだ」と主張する人もいます。
寸断されたグリンダビクの町中の道路 町のあちこちでこんなことに
Myndin er ur ReykjavikGrapevine.is
さて、グリンダビクの住民の方々への支援を巡る議論の中で、Grindvikingurグリンビーキングという言葉を頻繁に目にしたり耳にしたりします。Grindavikの人を指す言葉で「大阪人」とか言ったりするのといっしょです。
Grindavikiはgrindとvikのふたつの言葉がつながったもので、ちょっと確信がないのですがgrindは「格子状」を表し、vikは(これは確かですが)「小さな湾」を意味します。だから「格子のように見える?湾」なのでしょうか?Grindは別の意味かもしれません。悪しからず。m(_ _)m
Reykavikレイキャビクもreyk(煙)とvikの組み合わせで、これは「煙が立つ湾」であることはよく知られています。Vikという言葉がつく地名はアイスランドには無数にあります。そして例えばレイキャビクについてもReykvikingur「レイキャビクの人」という言葉が存在します。
で、ふと思ったのですが、GrindvikingurとかReykvikingurという場合、これってvikingur「バイキング」と関係があるのだろうか?バイキングって、なんでバイキングというのだろうか?とアイスランド学初歩のような疑問を持ちました。
アイスランド大学のサイトに「アイスランド広辞苑」のようなものがあるのですが、さっそくそこで調べてみました。
驚いたことに「バイキング」という言葉の起源については学者さんたちの間でも一致した見解はなく、長い間議論が続いているのだそうです。これは歴史学の教授だった故グンナル・カトゥルスソンさんの解説。
オスロフョルズル
Myndin er ur Visindavefur.is
バイキングという言葉は8〜10世紀の文献に出始めていたそうですが、さらに早く西暦800年以前にもアングロサクソン系の言葉に現れているとのこと。そんなに早くから英語圏に入っていることから、学者の中には「アングロサクソン語のwic (ノルマン人の兵営)に由来する」と結論づけた人もあるそうな。
その後より一般的になってきた説は、vik(湾)に由来する、とするもので、特にノルウェー東部のOslofjordurオスロフョルズルに関係したということです。バイキングは海賊でもあったわけですが、彼らは小さな湾にボートを隠して獲物を待つ、という常套手段を用いたことからvikingと呼ばれるようになったとか。
さらに別の説明もあります。バイキングは人殺しもしました。そこで、「殺す」を意味するvigヴィーグに由来し、gがkに変化した、とのこと。
さらにさらに別の説明。vikingはvikjaヴィーキャ「動く」「退く」という言葉から来ている。これはバイキングは一度出航すると何週間も自宅から「動き」「退いた」から、そう呼ばれるようになった、というものです。
まあ、説は色々あり、今でも「これで決まり」というものはないようです。「湾」に由来する説を取れば、GrindvikingurやReykvikingurにも関係していることになりますね。
いやいや、毎日のように使っている言葉にして、このような知識の欠如か。不学は一生ついて回ります。
日本にもバイキングの歴史やスカンジナビア語の専門の方が多くいらっしゃいますので、ここにご紹介したことの誤りやより正確なお教えをいただければ幸いです。ただ、叱らないで。(^-^;
グリンダビクに近い観光スポット、ブルーラグーンは営業を再開
Myndin er ur GuideToIceland.is
アイスランドの人はGrindvikingurやReykvikingurの他にも、Hafnafirdingur「ハフナフョルズルの人」とかAkureyngur「アクレイリ人」とかの「X X人」という呼び方を好んで使います。
大きな市や町ばかりでなく、例えば私のいる西街の住民はVesturbaeingurヴェストゥルバイイングルと呼ばれますし、もっと小さな通りなどにちなんで「X X人」が登場することもあります。住む場所、あるいは出身地についてのこだわりみたいなものを感じます。
知り合いのアイスランド人の女性は「生まれ育った通りの界隈に戻りたいという気持ちがあるわ」と言ってましね。今いるところから車で10分くらいと思うんだけど。そこまで固執するか?オラなんか、もうズーッと離れてますけどねぇ...
能登で輪島や珠洲を離れるか?というようなインタビューも目にしています。生まれ育った土地に対する愛情というものは確かにあるのだろうと思いますし、なんというか簡単に線引きできないものを感じますね。
ああ、そうだ。考えてみれば、ウクライナやパレスチナでも故郷を離れなくてはならない状況に人はそれこそ多数いるわけですよね。私が日頃会っている難民の人たちにしても同じだ。
安全な我が家に住む、ということがどれだけ難しくなってきているのでしょうか?私も含めて、今現在、安全な住処に居られる人はそのことを当たり前としてしまわないで、感謝した方が良いでしょうね。
とにかく、能登皆さんにしても、Grindvikingurの皆さんにしても、早く安全な「我が家」に戻れることを願い祈ります。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます