八月の末からヨーロッパでは難民のニュースがさかんに流れています。内戦やイスラム国の脅威を逃れようというシリアや中東、アフリカからの難民が絶えることなくヨーロッパに向かってきます。
その過程で地中海でボートが沈没し二百人あまりが生命を落としたり、国境をくぐり抜けるために隠れていた冷凍庫車両の中で子供を含む七十人以上が亡くなっているのが見つかったりと、悲惨なできごとも後を断ちません。
特に報道が多いのがハンガリーです。ハンガリーはバルカン半島から上陸して欧州中心部へ向かう「難民ルート」のひとつで、特にシリアからの難民の人が多く、今年だけで十四万人ものシリア難民がこのルートを使ったといいます。ハンガリー政府は国境に有刺鉄線を張り巡るなどして、難民の越境を防ごうするとともに、ハンガリーからドイツ、オーストリアなどに「侵入」しないように国内に軟禁する政策を取りました。
そのため、首都のブタペストの駅や路頭にたむろして路上生活を強いられている人たち-子供たちを含む-の様子などが、ニュースのビデオなどで紹介されています。
また国境での警備兵と難民との小競り合いなどもビデオで流されているのですが、どうみても「暴徒」「反乱軍」を鎮圧しようとしているようにしか見えないものもあります。
そのようなビデオを見たアイスランドの人々の中に「アイスランドももっと難民を受け入れるべきではないか」という思いが膨らんできたようです。アイスランドはこの二十年間で三百四十五人の難民を受け入れています。
これは当初から「難民」として認定されてやってきた人たちで、庇護申請者としてやってきて、後から認められた人たちは含まれていません。
実はアイスランド政府は七月に今年と来年の二ヵ年で五十人の難民を受け入れることを発表していたのですが、最近の悲惨なニュースの洪水に「五十じゃなくて五千だろう?」という思いを持つ人たちが増えてきたようです。
政党のリーダーたちが「さらなる受け入れを積極的に考える」などと次々と談話を発表したりして、Facebookなどでも盛んな議論が持たれています。
ちなみに「断固反対」派もいます。「この国は今、保健衛生機構や一般住宅で大きな問題がある。なんでわざわざ難民を呼んで、さらに状況を悪くさせるのか?」というのが大方の論理です。
それらの問題があるのは事実なのですが、それは富や権利の分配が偏っていたり、住宅よりもホテルを優先する商業根性の故であって、それと難民救済を同等に論じるのはおかしな話なのですが、なぜか「難民」の話しになるとアイスランドが救いようのない貧民国だという主張が始まるのです。
私のFBでもそのような戯言を並べた人たちがいましたが、さっさとフレンドリストから退場してもらいました。
エイグロー福祉省大臣
- Myndin er ur Visir.is -
そのような「さらなる難民の受け入れを!」の声が高まる中で福祉省のエイグロー·ハルザアドティール大臣がインタビューで「そうは言っても、一般の人々はどれだけ難民受け入れに協力する意思があるのか疑問に思わざるを得ない」旨のコメントをしました。
これが逆に受け入れ賛成派の思いに火をつけてしまいました。ブリンディス·ビョルクビンスドティールという女性の作家が、FBで「親愛なるエイグローヘ」というページを作り、難民受け入れの賛同者を募りました。これが瞬く間に広まっていき、二日のうちに一万人もの人がジョインしたのです。
同時に「赤十字のボランティアにも登録して意気を示そう!」という呼びかけもあったようで、赤十字のボラ登録者が二日間で九百人にも達したのです。
現在のムードでは、受け入れ難民数を増やすのは既に決まったことのように見受けられます。
先の三日には、ドナルド・トゥスクEU理事会議長は加盟各国に「少なくとも十万人の難民をさらに受け入れるよう」アピールを出しました。それを受けて?ドイツとオーストリアが難民の緊急受け入れを決め、昨晩のニュースではハンガリー経由での難民の人たちを迎える映像が流されました。英国も受け入れを積極的に考える旨、方針を転換するようです。
私はアイスランドのこの難民支援の熱意は素晴らしいことだと思いますが、同時にそのうちのいくらかは「一時の熱狂」であろうとも思っています。それは少しも悪いことではありません。子供たちが海で溺れているのを見ても、何の義憤も感じないよりははるかに良いことだと思います。
ただその熱意は恒常的で、足が地に着いたものにならなくてはなりません。それはまた、別の課題ですし、赤十字をはじめ、関連組織が取り組まなくてはなりません。私自身、その課題には責任を持っているものと理解しています。
ところで日本では昨年一年間で、どれだけの難民申請があったかご存じでしょうか?史上最高で五千件の申請があったのです。ですが、難民認定された人の数は僅か十一人。率にして0,3%です。どう思われますか?
「全国難民弁護団連絡会議」という団体は声明を出してこう述べています。
「日本政府は、日本で難民認定者数が極端に少ないとの指摘に対し、難民条約の定義にのっとり「慎重な適正な手続きを経た上で個別に判断した結果、余り数が出ていないというのが実情である」こと、これまでの多かったミャンマー出身者の難民認定が減ったこと、社会情勢が悪化したわけではないトルコ、スリランカ、ベトナムなどからの難民申請者数が増えていることなどと述べている。
一部の報道にあるように、あたかも日本には難民として庇護するべき人たちが来ておらず、「偽装」や「悪用」が増えているかのような印象を与える。
(中略)当連絡会議は、あらためて、単に「偽装」や「濫用」の排除の方策が議論されるのではなく、守られるべき難民を守るとの視点から、難民法の国際的な水準をふまえた包括的な難民認定制度を実現するための抜本的な方策が実現されるよう求めるとともに、日本において真に難民条約の履行が確保され難民条約締約国としての国際的責務を果たすことができるよう(中略)改善に向けての取組をしていく所存である」
日本の皆さんには是非事実を確認して、考えていただきたいことのひとつです。
最後にもうひとつ。先の難民の欧州への流れを扱ったニュースの中で、読売のネット版はこういう見出しを使っていました。「不法移民防げ、欧州躍起…170キロ有刺鉄線も」難民は不法移民ではありません。ジャーナリズムがこういう認識しか持っていないのだとしたら、問題の根は深い、ということになるのでしょうね。
私は残念に思います。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
その過程で地中海でボートが沈没し二百人あまりが生命を落としたり、国境をくぐり抜けるために隠れていた冷凍庫車両の中で子供を含む七十人以上が亡くなっているのが見つかったりと、悲惨なできごとも後を断ちません。
特に報道が多いのがハンガリーです。ハンガリーはバルカン半島から上陸して欧州中心部へ向かう「難民ルート」のひとつで、特にシリアからの難民の人が多く、今年だけで十四万人ものシリア難民がこのルートを使ったといいます。ハンガリー政府は国境に有刺鉄線を張り巡るなどして、難民の越境を防ごうするとともに、ハンガリーからドイツ、オーストリアなどに「侵入」しないように国内に軟禁する政策を取りました。
そのため、首都のブタペストの駅や路頭にたむろして路上生活を強いられている人たち-子供たちを含む-の様子などが、ニュースのビデオなどで紹介されています。
また国境での警備兵と難民との小競り合いなどもビデオで流されているのですが、どうみても「暴徒」「反乱軍」を鎮圧しようとしているようにしか見えないものもあります。
そのようなビデオを見たアイスランドの人々の中に「アイスランドももっと難民を受け入れるべきではないか」という思いが膨らんできたようです。アイスランドはこの二十年間で三百四十五人の難民を受け入れています。
これは当初から「難民」として認定されてやってきた人たちで、庇護申請者としてやってきて、後から認められた人たちは含まれていません。
実はアイスランド政府は七月に今年と来年の二ヵ年で五十人の難民を受け入れることを発表していたのですが、最近の悲惨なニュースの洪水に「五十じゃなくて五千だろう?」という思いを持つ人たちが増えてきたようです。
政党のリーダーたちが「さらなる受け入れを積極的に考える」などと次々と談話を発表したりして、Facebookなどでも盛んな議論が持たれています。
ちなみに「断固反対」派もいます。「この国は今、保健衛生機構や一般住宅で大きな問題がある。なんでわざわざ難民を呼んで、さらに状況を悪くさせるのか?」というのが大方の論理です。
それらの問題があるのは事実なのですが、それは富や権利の分配が偏っていたり、住宅よりもホテルを優先する商業根性の故であって、それと難民救済を同等に論じるのはおかしな話なのですが、なぜか「難民」の話しになるとアイスランドが救いようのない貧民国だという主張が始まるのです。
私のFBでもそのような戯言を並べた人たちがいましたが、さっさとフレンドリストから退場してもらいました。
エイグロー福祉省大臣
- Myndin er ur Visir.is -
そのような「さらなる難民の受け入れを!」の声が高まる中で福祉省のエイグロー·ハルザアドティール大臣がインタビューで「そうは言っても、一般の人々はどれだけ難民受け入れに協力する意思があるのか疑問に思わざるを得ない」旨のコメントをしました。
これが逆に受け入れ賛成派の思いに火をつけてしまいました。ブリンディス·ビョルクビンスドティールという女性の作家が、FBで「親愛なるエイグローヘ」というページを作り、難民受け入れの賛同者を募りました。これが瞬く間に広まっていき、二日のうちに一万人もの人がジョインしたのです。
同時に「赤十字のボランティアにも登録して意気を示そう!」という呼びかけもあったようで、赤十字のボラ登録者が二日間で九百人にも達したのです。
現在のムードでは、受け入れ難民数を増やすのは既に決まったことのように見受けられます。
先の三日には、ドナルド・トゥスクEU理事会議長は加盟各国に「少なくとも十万人の難民をさらに受け入れるよう」アピールを出しました。それを受けて?ドイツとオーストリアが難民の緊急受け入れを決め、昨晩のニュースではハンガリー経由での難民の人たちを迎える映像が流されました。英国も受け入れを積極的に考える旨、方針を転換するようです。
私はアイスランドのこの難民支援の熱意は素晴らしいことだと思いますが、同時にそのうちのいくらかは「一時の熱狂」であろうとも思っています。それは少しも悪いことではありません。子供たちが海で溺れているのを見ても、何の義憤も感じないよりははるかに良いことだと思います。
ただその熱意は恒常的で、足が地に着いたものにならなくてはなりません。それはまた、別の課題ですし、赤十字をはじめ、関連組織が取り組まなくてはなりません。私自身、その課題には責任を持っているものと理解しています。
ところで日本では昨年一年間で、どれだけの難民申請があったかご存じでしょうか?史上最高で五千件の申請があったのです。ですが、難民認定された人の数は僅か十一人。率にして0,3%です。どう思われますか?
「全国難民弁護団連絡会議」という団体は声明を出してこう述べています。
「日本政府は、日本で難民認定者数が極端に少ないとの指摘に対し、難民条約の定義にのっとり「慎重な適正な手続きを経た上で個別に判断した結果、余り数が出ていないというのが実情である」こと、これまでの多かったミャンマー出身者の難民認定が減ったこと、社会情勢が悪化したわけではないトルコ、スリランカ、ベトナムなどからの難民申請者数が増えていることなどと述べている。
一部の報道にあるように、あたかも日本には難民として庇護するべき人たちが来ておらず、「偽装」や「悪用」が増えているかのような印象を与える。
(中略)当連絡会議は、あらためて、単に「偽装」や「濫用」の排除の方策が議論されるのではなく、守られるべき難民を守るとの視点から、難民法の国際的な水準をふまえた包括的な難民認定制度を実現するための抜本的な方策が実現されるよう求めるとともに、日本において真に難民条約の履行が確保され難民条約締約国としての国際的責務を果たすことができるよう(中略)改善に向けての取組をしていく所存である」
日本の皆さんには是非事実を確認して、考えていただきたいことのひとつです。
最後にもうひとつ。先の難民の欧州への流れを扱ったニュースの中で、読売のネット版はこういう見出しを使っていました。「不法移民防げ、欧州躍起…170キロ有刺鉄線も」難民は不法移民ではありません。ジャーナリズムがこういう認識しか持っていないのだとしたら、問題の根は深い、ということになるのでしょうね。
私は残念に思います。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
英国のキャメロン首相は波打ち際で亡くなっていた子供の写真を見て、英国の方針を転換しようと決めたようです。(本当かどうかは知りませんが)
この点に関しては、私はアイスランドの政治家よりは、むしろ日本の政治家がどう感じているのか知りたいですね。
もし想像力がちゃんとある人たちだけだったら、そもそも戦争も起きなくなるでしょうけどね!