雨曇子日記

エイティライフの数々です

馬頭観音  2

2014-01-27 18:47:43 | エッセー
あるとき、やはり足助からの帰り道、おかあさんは近所のおばさんと話しながら、三度巻きという曲がり道を歩いていた。
私は、妹を乳母車に乗せて、おかあさんたちより50メートルぐらい前を歩いていた。
曲がり角の大カーブの所にさしかかった時だ。
急に、前からガラガラと大きな音をたてて、荒れ狂った馬が、荷馬車の前輪だけを引っ張って鼻息荒く駆けてきた。
私は、あまりのことにどうしていいか分からず、ただボケーとして道の真ん中に立ちすくんでいた。
後ろで、母や近所のおばさんたちの、キャーともアーッとも分からない叫び声を聞いた。

馬は、ガラガラ、ガタガタ前輪だけを引っ張って私の横を駆け抜けて通り過ぎて行った。
車の左の輪が外れて、土手の下へ落ちていった。そして、馬方が、真っ赤な顔をして、はあはあ言いながら追っかけていった。

私たちは全員、かすり傷も負わなかった。