雨曇子日記

エイティライフの数々です

ひいきの宿   10

2015-03-17 19:13:25 | エッセー

週刊朝日が昭和58年ごろ連載した、103人の著名人の「ひいきの宿」の紹介である。この連載 44 回めは「白雲楼ホテル」で、昭和 7 年( 1932 )桜井兵五郎により開業した豪華ホテル。

かっては東洋一と言われ、戦後はGHQに保養施設として接収された。

昭和天皇・皇后が食事をとられたこともある、格式のあるホテルであったが、平成 11 年倒産。平成 18 年( 2006 )には解体された。

 

   加賀百万石の歴史を偲ぶ             永井 道雄(朝日新聞客員論説委員)

国鉄の金沢駅から東南をさして、朝野川の渓流にそって、車でほぼ三十分ゆくと、湯湧(ゆわく)に到着する。この言葉の通り、いまから千二百余年前、一羽の白鷺が傷を癒していたことから、ここに鉱泉があることが発見された。

深山幽谷といってもよい緑のなかに、六十六万平方mにおよぶ敷地をゆったり使った白雲楼ホテルがある。戦前から有名であったが、戦後はしばらく、米軍第八軍のリゾートホテルとして使われた。いまは、むろん、広く多くの旅客に親しまれている。

純日本風書院造りの第一新館、洋式をとりいれた第二新館をふくんだ落ち着きのある美しいホテルであるが、このホテルが面白いのは、プールやハイキングコースという当世風のもののほかに、歴史博物館ともいうべき壇風苑と江戸村を周辺に配していることである。

壇風苑には、加賀百万石の伝統工芸に関する製作用具七千余点があり、他方、江戸村には、江戸時代の加賀藩の多くの建物が、そのまま保存されている。名古屋の明治村は広く知られているが、江戸村は、まだ、それほどではない。私事にわたるが、私自身の祖先の下級武士の小さな家も、ここにある。

山中の温泉に憩いをえて、江戸時代の文化を知ることができる格好の場である。

 

金沢市の郊外に、緑に囲まれて建つクラシックなホテル。

外観や中庭は南欧風だが、客室は純和風が多く、

それぞれが無理なくマッチしている。

変わった趣向の夕立風呂やすきや風呂は、

宿泊客でも予約が必要なほど人気が高い。

歩いて5 分ほどで、加賀藩ゆかりの建造物を集めた「江戸村」に行ける。

●住所  石川県金沢市湯湧町へ-25

●電話  0762-35-1111

●交通  国鉄金沢駅から車で30分

●料金  18,000( 1 泊 2 食付)~

●客室  90室