
「公益通報制度」について考える
「くまもと地域自治体研究所連続セミナー」に学ぶ
3月6日、くまもと地域自治体問題研究所第8回連続セミナーが熊本市内で開かれ、元熊本県議会議員の山本伸裕さんを講師に、「公益通報制度」について学びました。
全国的には、兵庫県で「公益通報」を行った職員が自殺に追い込まれました。命をかけて行われる公益通報。
現行の制度と、その運用でいいのでしょうか。
「公益通報」とは、
労働者や役員が、不正の目的でなく、その労務提供先、またはその役員・従業員等について一定の法令違反が生じ、または生じようとしていることを、その労務提供先や行政機関、外部機関に対して通報することです。
「公益通報者保護法」とは、
通報したものの、通報した情報が握りつぶされたり、適切な対応がとられなかったり、通報した者が解雇・左遷・減給等の不利益な処遇を受けることのないようにすることを目的として定められた法律です。
実際の「公益通報」はどうなっているか?
①兵庫県の知事パワハラ問題
県知事のパワハラ問題を通報した県職員は、報道機関に通報しました。県知事は、「公益通報にあたらない」と主張しましたが、衆議院総務委員会の辰巳孝太郎議員の質問に、消費者庁は「公益通報は、1号通報、2号通報、3号通報いずれも保護の対象となる」と答弁しています。
ところが、通報を「単なるうわさ話」と一蹴したばかりか、一方では報道機関通報後に、県は告発者探しを行っています。
公益通報者保護法では、事実に関係するものを公益通報対応業務に関与させない措置を求めており、県による告発者探しは重大な誤りです。
告発された知事サイドは、公益通報に関する業務関わってはならないのです。
②熊本県での旅行割引事業の補助金不正受給をめぐる公益通報
2023年9月に、県が行った旅行割引事業において、補助金の不適切受給が発覚し、その調査を行っていた職員が、県の上層部から「見逃し」を指示されたことに対し、報道機関への公益通報を行いました。
不当は通者探しのうえ、不当な調査が実施され、事実は明らかにされないまま、その県職員には不当な懲戒処分まで行われました。
この問題は、地元紙でも取り上げられましたが、通報した職員が受けた多大な不利益は全く是正されていません。
③熊本市でも、市庁舎建替え問題で、建築職員が報道機関と市議会へ内部告発
熊本市でも、市庁舎建替え問題で、「市役所建替えに誘導するために、内部で不正な処理が行われている」と、建築職員が報道機関と市議会へ内部告発をしましたが、市長は当初「公益通報に該当する可能性がある」と特別委員会で答弁していましたが、どんな調査をしたのかわからないまま、「公益通報の要件をみたしていない」と内部告発を闇に葬る判断をしました。
これらは一部の事例ですが、多くの「公益通報」事案がまともに取り扱われず、指摘された問題がほとんど解明されないままなおざりにされている実態があります。
一方で、告発者(通報者)が命がけになるような多大な不利益を受けています。
「公益通報」がまともに機能すれば、ゆがんだ問題が正されるはずです。
どこに、問題があるのでしょうか。
公益通報者保護法の改正・充実が必要
日弁連「公益通報者保護法の更なる改正と制度の充実を求める意見書」
日弁連は、2024年8月22日付けで「公益通報者保護法の更なる改正と制度の充実を求める意見書」を取りまとめ、同月23日付けで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、厚生労働大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。
【意見書の要望事項】
⑴通報者に対する不利益取扱いをしたことに対する行政措置及び同行政措置に従わない場合の刑事罰を設けるべきであり、さらに、不利益取扱いをしたことに対する直接の刑事罰を設けることを検討すべきである。
⑵ 公益通報をしたことを理由として行った解雇その他不利益な取扱いについて、因果関係の立証責任を事業者に転換する法律上の規定を設けるべきである。
⑶ 保護される公益通報のための資料収集行為を理由とした損害賠償請求を一定の要件の下で制限する明文規定を設けるべきである。
⑷通報者として保護される対象として「取引先事業者」を含めるべきである。
⑸事業者の体制整備義務(法第11条第2項)違反に対する是正命令及び同命令違反に対する刑事罰を設けるべきである。
⑹外部公益通報受付窓口の設置を推奨すべきである。
⑺行政機関への通報について、以下のとおり政策面での対応及び改正をすべきである。
①労働者等にとって身近で有用な制度として事業者及びその従業員らに対して周知・啓発を図る政策をより一層充実させるべきである。
②法第3条第2号イが定める「公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所」の記載をしなければならないとの要件に代えて「継続的に連絡を取り合うことのできる連絡先」と規定し、匿名による通報も保護するよう改正すべきで
ある。
⑻報奨金制度等の公益通報にインセンティブを付与する制度を導入すべきである。
こうした法改正とともに、メディアや行政機関がそれぞれに公平公正な立場で、公益通報制度が活用されるよう、しかるべき役割を果たすことが求められるのではないかと思います。
「くまもと地域自治体研究所連続セミナー」に学ぶ
3月6日、くまもと地域自治体問題研究所第8回連続セミナーが熊本市内で開かれ、元熊本県議会議員の山本伸裕さんを講師に、「公益通報制度」について学びました。
全国的には、兵庫県で「公益通報」を行った職員が自殺に追い込まれました。命をかけて行われる公益通報。
現行の制度と、その運用でいいのでしょうか。
「公益通報」とは、
労働者や役員が、不正の目的でなく、その労務提供先、またはその役員・従業員等について一定の法令違反が生じ、または生じようとしていることを、その労務提供先や行政機関、外部機関に対して通報することです。
「公益通報者保護法」とは、
通報したものの、通報した情報が握りつぶされたり、適切な対応がとられなかったり、通報した者が解雇・左遷・減給等の不利益な処遇を受けることのないようにすることを目的として定められた法律です。
実際の「公益通報」はどうなっているか?
①兵庫県の知事パワハラ問題
県知事のパワハラ問題を通報した県職員は、報道機関に通報しました。県知事は、「公益通報にあたらない」と主張しましたが、衆議院総務委員会の辰巳孝太郎議員の質問に、消費者庁は「公益通報は、1号通報、2号通報、3号通報いずれも保護の対象となる」と答弁しています。
ところが、通報を「単なるうわさ話」と一蹴したばかりか、一方では報道機関通報後に、県は告発者探しを行っています。
公益通報者保護法では、事実に関係するものを公益通報対応業務に関与させない措置を求めており、県による告発者探しは重大な誤りです。
告発された知事サイドは、公益通報に関する業務関わってはならないのです。
②熊本県での旅行割引事業の補助金不正受給をめぐる公益通報
2023年9月に、県が行った旅行割引事業において、補助金の不適切受給が発覚し、その調査を行っていた職員が、県の上層部から「見逃し」を指示されたことに対し、報道機関への公益通報を行いました。
不当は通者探しのうえ、不当な調査が実施され、事実は明らかにされないまま、その県職員には不当な懲戒処分まで行われました。
この問題は、地元紙でも取り上げられましたが、通報した職員が受けた多大な不利益は全く是正されていません。
③熊本市でも、市庁舎建替え問題で、建築職員が報道機関と市議会へ内部告発
熊本市でも、市庁舎建替え問題で、「市役所建替えに誘導するために、内部で不正な処理が行われている」と、建築職員が報道機関と市議会へ内部告発をしましたが、市長は当初「公益通報に該当する可能性がある」と特別委員会で答弁していましたが、どんな調査をしたのかわからないまま、「公益通報の要件をみたしていない」と内部告発を闇に葬る判断をしました。
これらは一部の事例ですが、多くの「公益通報」事案がまともに取り扱われず、指摘された問題がほとんど解明されないままなおざりにされている実態があります。
一方で、告発者(通報者)が命がけになるような多大な不利益を受けています。
「公益通報」がまともに機能すれば、ゆがんだ問題が正されるはずです。
どこに、問題があるのでしょうか。
公益通報者保護法の改正・充実が必要
日弁連「公益通報者保護法の更なる改正と制度の充実を求める意見書」
日弁連は、2024年8月22日付けで「公益通報者保護法の更なる改正と制度の充実を求める意見書」を取りまとめ、同月23日付けで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、厚生労働大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。
【意見書の要望事項】
⑴通報者に対する不利益取扱いをしたことに対する行政措置及び同行政措置に従わない場合の刑事罰を設けるべきであり、さらに、不利益取扱いをしたことに対する直接の刑事罰を設けることを検討すべきである。
⑵ 公益通報をしたことを理由として行った解雇その他不利益な取扱いについて、因果関係の立証責任を事業者に転換する法律上の規定を設けるべきである。
⑶ 保護される公益通報のための資料収集行為を理由とした損害賠償請求を一定の要件の下で制限する明文規定を設けるべきである。
⑷通報者として保護される対象として「取引先事業者」を含めるべきである。
⑸事業者の体制整備義務(法第11条第2項)違反に対する是正命令及び同命令違反に対する刑事罰を設けるべきである。
⑹外部公益通報受付窓口の設置を推奨すべきである。
⑺行政機関への通報について、以下のとおり政策面での対応及び改正をすべきである。
①労働者等にとって身近で有用な制度として事業者及びその従業員らに対して周知・啓発を図る政策をより一層充実させるべきである。
②法第3条第2号イが定める「公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所」の記載をしなければならないとの要件に代えて「継続的に連絡を取り合うことのできる連絡先」と規定し、匿名による通報も保護するよう改正すべきで
ある。
⑻報奨金制度等の公益通報にインセンティブを付与する制度を導入すべきである。
こうした法改正とともに、メディアや行政機関がそれぞれに公平公正な立場で、公益通報制度が活用されるよう、しかるべき役割を果たすことが求められるのではないかと思います。
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