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借地上の建物の滅失による掲示と借地権の対抗力

2007年06月17日 | 借地借家の法律知識
(問) 隣家からの類焼で借地上の建物が全焼してしまった。再築計画はあるが、現在は更地状態になっている。こんな状態の中、地主が土地を売却すると買主に借地権を主張出来ないと聴いたが、それは本当なのか。借地権を守る手段があったら教えてもらいたい。

(答) 建物が火災で焼失しても、地震で倒潰しても、建替えのために取壊しても原因は何であれ、建物が無くなることを「滅失」という。

 借地借家法第10条1項に「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」と規定している。

 従って、借地権者が借地上の建物を登記しておけば、土地の所有者が代わっても新所有者に対し、自分の借地権を主張出来、借地の明渡を求められることはない。しかし登記した建物が滅失した場合は、原則として第三者に対抗出来ない。

 なお、10条1項で要求される登記は、移転登記、保存登記、表示の登記(最高裁1975年2月13日判決 民集29巻2号83頁)のいずれかである。仮登記では不十分である(最高裁1967年8月24日判決 民集21巻7号1689頁)

 借地借家法は例外規定として10条2項を新設し、借地権を保護している。同法10条2項に「前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。」と規定している。

 従って、借地上の建物が火災で滅失した場合、登記事項を記載した掲示物を設置し、借地上の見やすい場所に掲示しておけば借地権は守られる。その場合は、借地権は登記済み建物が存在していた時と同様に第三者に2年間は対抗出来ることになる。滅失した日から2年以内に建物を再築し、新たに登記済ませておけば、第三者に対して2年経過後も借地権の対抗力を維持することが出来る。

 なお、滅失建物が未登記の場合は10条2項の適用は認められない。あくまでも登記済み建物が滅失した場合にしか適用されない。

また設置掲示物が何者かに持ち去られた場合、その後に土地を取得した第三者には対抗出来ないので注意が必要である。即ち、「第三者に対して借地権の対抗力を主張するためには、掲示を一旦施してたというだけでは不十分であり、その第三者が権利を取得する当時にも掲示が存在する必要がある」(東京地裁2000年4月14日判決)。掲示という明認方法により暫定的に対抗力を維持しているので掲示が消滅すれば対抗力は消滅するというのが原則である。

  下記は掲示物の見本


                      掲      示
 この土地には下記の者が借地権を有し、下記の建物を所有していましたが、*年*月*日滅失しました。
 借地権者は、滅失日から2年以内に新たに建物を築造する計画がありますので借地借家法第10条2項の規定に基づき掲示します。
 この掲示を移動、毀損、破棄 、落書等の行為を禁止します。もしそのようなことがあった場合は刑事罰を受けることになるので警告します。

  *年*月*日 
住所
借地権者氏名
連絡先

滅失した建物の表示
所在
家屋番号
種類
構造
床面積
建物滅失日    *年*月*日



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