乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

そひとげる人も はじめはふとしたことよ   気のきいた?古文書読み間違い  

2011-07-28 | ことのは




 7月中旬

 古文書を学ぶため、某図書館に行く。

 初心者コース

 一字一字に区切られた万葉仮名のものとして、「どどいつ」を取り上げられていた。

 その中に次のようなものがあった。





      そひとげる人も はじめはふとしたことよ

      れたがゑんでは あるまいか  (誤)



 これ実は間違い。

 書道をされている方なら正しい本文が想像できるかもしれない。





      そひとげる人も はじめはふとしたことよ
      
      れたがゑんでは あるまいか (正)






 ほれたならプラトニックから始まるが、ふれたでは赤松啓介氏の世界である。






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和漢朗詠集  扇 199 白

2011-07-23 | ことのは
(写真は京都 祇園祭の白楽天山 提灯)



 Prokofiev - Love For Three Oranges
 



 うそ子メーカーで乱鳥のうちわを見て、思い出す。

『和漢朗詠集、梁塵秘抄 』日本古典文学大系第73から貫之と白楽天を選んで読んだ時の白扇の詩、「扇」白楽天を見つけ、心が動いた。

 



  和漢朗詠集 

              扇


199 生家にきえざる雪 年を終ふるまでつくこと無き風

   秋を引いて手の裏に生る 月をかくして懐の中に入る     白


                 漢文省略






【和漢朗詠集 扇 白楽天】で検索すると、謡曲『班女』に触れた次のようなページがあった。

 せんすのある話1-『班女』    荘司賢太郎

 ここには次のように書かれている。


 団雪の扇とは、白い丸い形の扇ということである。折り畳み式でない扇、つまり団扇は、その名の通り、丸い形が多かったようだ。
時代がずっと下がった唐時代の詩人、白居易の白羽扇の詩にも

「盛夏に(き)えざる雪 年を終ふるまでつくること無き風 秋を引いて手の裏に生る 月を蔵して懐の中に入る」

白羽扇とは白い鶴の羽で作った扇である。
最後の「月を蔵して」の文句は、月のように丸い扇を懐中に入れるということだ。



 上は日本古典文学大系第73の註釈にも書かれている。








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吉岡 実

2011-06-22 | ことのは







 吉岡 実について調べていたら、ダリみたいな絵が描けたらなって思ったよ。

 バカだな☆







   



 筑摩書房の『吉岡実全詩集』が欲しかったのでネット検索したらバカほど高かったよ。

 それならばと、奈良情報図書館で検索をかけたら、情報図書館書庫にあった。

 ラッキーな私。



奈良情報図書館在書 ▼ 吉岡実

先頭へ前へ次へ
サフラン摘み : 吉岡実詩集.
吉岡実著. 青土社, 1976.
書庫1 911.56-362
「死児」という絵 : 随想集.
吉岡実著. 思潮社, 1980.
書庫1 914.6-1760
土方巽頌 : 「日記」と「引用」に依る.
吉岡実著. 筑摩書房, 1987.
書庫1 766-15
吉岡実散文抄 : 詩神が住まう場所.
吉岡実著. 思潮社, 2006 (詩の森文庫:E06).
一般資料 914.6-ヨシオ
吉岡実詩集, [正], 続.
吉岡実著. 思潮社, 1968-1995 (現代詩文庫:14, 129).
一般資料 911.56-331 , 書庫1 911.56-331
吉岡実全詩集.
吉岡実著. 筑摩書房, 1996.
書庫1 911.56-745





   
   




     「過去」

  その男はまずほそいくびから料理衣を垂らす
  その男には意志がないように過去もない
  鋭利な刃物を片手にさげて歩き出す
  その男のみひらかれた眼の隅へ走りすぎる蟻の一列
  刃物の両面で照らされては床の塵の類はざわざわしはじめる
  もし料理されるものが
  一個の便器であっても恐らく
  その物体は絶叫するだろう
  ただちに窓から太陽へ血をながすだろう
  いまその男をしずかに待受けるもの
  その男に欠けた
  過去を与えるもの
  台のうえにうごかぬ赤えいが置かれて在る
  斑のある大きなぬらぬらの背中
  尾は深く地階へまで垂れているようだ
  その向こうは冬の雨の屋根ばかり
  その男はすばやく料理衣のうでをまくり
  赤えいの生身の腹へ刃物を突き入れる
  手応えがない
  殺戮において
  反応のないことは
  手がよごれないということは恐しいことなのだ
  だがその男は少しずつ力を入れて膜のような空間をひき裂いてゆく
  吐きだされるもののない暗い深度
  ときどき現われてはうすれてゆく星
  仕事が終るとその男はかべから帽子をはずし
  戸口から出る
  今まで帽子でかくされた部分
  恐怖からまもられた釘の個所
  そこから充分な時の重さと円みをもった血がおもむろにながれだす

 

   
   




 週間俳句さま 吉岡実 「過去」「桃 或はヴィクトリー」「わだつみ」 (縦書き)



   



 吉岡 実 Wikipedia ▼

吉岡 実(よしおか みのる、1919年(大正8年)4月15日 - 1990年(平成2年)5月31日)は、昭和後期の詩人、装丁家。
東京本所の生まれ。本所高等小学校を卒業後、本郷の医学出版社・南山堂に奉公。向島商業学校の夜間部に通うも中退。徴兵に際し、詩歌集『昏睡季節』(1940)、詩集『液体』(1941)刊行。輜重兵として満洲を転戦。
1951年から筑摩書房に勤務、取締役も務め1978年まで在籍した。詩集『静物』(1955)、詩集『紡錘形』(1962)、詩集『静かな家』(1968)、詩集『神秘的な時代の詩』(1974)などを刊行。詩集『僧侶』(1958)で第9回H氏賞、『サフラン摘み』(1976)で第7回高見順賞、『薬玉』(1983)で第22回藤村記念歴程賞を受賞。全284篇の詩作品と150点余りの装丁作品を遺した。別号、皚寧吉など。
妻陽子は和田芳恵の娘。
主な著書 [編集]

詩集
昏睡季節(草蝉舎、1940)
液体(草蝉舎、1941・湯川書房、1971)
静物(私家版、1955)
僧侶(書肆ユリイカ、1958)
紡錘形(草蝉舎、1962)
静かな家(思潮社、1968)
異霊祭(書肆山田、1974)
神秘的な時代の詩(湯川書房、1974・書肆山田、1976)
サフラン摘み(青土社、1976)
夏の宴(青土社、1979)
ポール・クレーの食卓(書肆山田、1980)
薬玉(書肆山田、1983)
ムーンドロップ(書肆山田、1988)
赤鴉(弧木洞、2002)
歌集
魚藍(私家版、1959・深夜叢書社、1973)
句集
奴草(書肆山田、2003)
詩選集
吉岡實詩集(書肆ユリイカ・今日の詩人双書5、1959)
吉岡実詩集(思潮社、1967)
吉岡実詩集(思潮社・現代詩文庫14、1968)
吉岡実詩集〔普及版〕(思潮社、1970)
新選吉岡実詩集(思潮社・新選現代詩文庫110、1978)
吉岡実(中央公論社・現代の詩人1、1984)
続・吉岡実詩集(思潮社・現代詩文庫129、1995)
散文・日記
「死児」という絵(思潮社、1980)
土方巽頌(筑摩書房、1987)
「死児」という絵〔増補版〕(筑摩書房・筑摩叢書328、1988)
うまやはし日記(書肆山田・りぶるどるしおる1、1990)
吉岡実散文抄――詩神が住まう場所(思潮社・詩の森文庫E06、2006)
全詩集
吉岡実全詩集(筑摩書房、1996)








   


 おつきあい下さいまして、ありがとうございます。






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雨の佐保川   佐保川に騒ける千鳥さ夜更けて 汝が声聞けば寐ねかてなくに (万葉集)

2011-05-29 | ことのは




  



     





           雨の佐保川






 昨日雨の降る佐保川を見た。

 緑豊かで、美しかった。

 春には、桜も咲くのだろうか…。

 さぞや、美しいだろう…




     



    【千鳥鳴く佐保の川門の瀬を広み打橋渡す汝が来と思へば】   万葉集 528  

          ちどりなく さほのかはとの せをひろみ うちはしわたす ながくとおもへば

    【佐保川に騒ける千鳥さ夜更けて汝が声聞けば寐ねかてなくに】 万葉集 1124

          さほがはに さわけるちどり さよふけて ながこゑきけば いねかてなくに

 
        (この他にも万葉歌では「佐保川」と「千鳥」を詠んだ歌が多い。)


  





                         2011年5月28日

                         奈良県 奈良県立図書情報館 近くにて




     


 見て下さいまして感謝します。

 ありがとうございます。





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当てつけかな?

2011-05-25 | ことのは







         團菊祭 と入力すると

         談義臭い と変換される。


         当てつけか







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世中にたえてさくらのなかりせば 春の心はのどけからまし   4月9日の夕暮れのさくら

2011-04-10 | ことのは









 夕暮れ時に桜をみたよ

 きれいだね








      古今和歌集  53


         なぎさのゐんにてさくらをみてよめる     在原業平朝臣

      世中にたえてさくらのなかりせば 春の心はのどけからまし




                         岩波書店 日本古典文学大系 写す











 見て下さいましてありがとうございました。






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「静物」萩原朔太郎「菜の花や 月は東に 日は西に」与謝蕪村と 斑鳩の菜の花 (7景)

2011-04-08 | ことのは







 奈良 斑鳩の里では、菜の花真っ盛りです。

 遠くに、犬を連れる人の姿が見えます。




 一枚目の写真より少し右方向です。

 遠くの塔は、法起寺です。

 こちらはコスモス咲く法起寺稲刈り前だとこんな感じです。




 ここから下は菜の花の写真だけです。

















     静物  萩原朔太郎



        静物のこころは怒り

        そのうわべは哀しむ

        この器物の白き瞳にうつる

        窓ぎわのみどりはつめたし。




 あらら、上の詩はわたくしの好きな詩ですが、どうも春っぽくないですね。
 
 では、直球。  蕪村さんです……



        菜の花や 月は東に 日は西に      与謝蕪村




   



 見ていただきまして、ありがとうございました。



        






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春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも  4月7日のさくら(3景)

2011-04-07 | ことのは





 斑鳩 法輪寺と法隆寺を結ぶ道にて






 斑鳩 法起寺




 
 斑鳩 法輪寺









 ここ三日間、小春日和でした。

 そして、明日は雨

 強くふらないで、さくらの花びらを散らさないでと願っております。





 



     春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも

                  万葉集 一八七〇 作者未詳








 見て下さいましてありがとうございました。

 とっても嬉しいです。







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大和川の雉 春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ(4景)

2011-04-07 | ことのは



 大和川のキジ



 





 写真の二本の木は結構お気に入りで、これまでにも何度か、大きさなどを変えて写しています。




 目を凝らすと、雉がいました。

 雉はキィー!と かん高いこえを、真を開けて鳴いていました。

 いつもはすぐに逃げる雉ですが、今日はのんびりと小春日和を楽しんでいるようにも見えました。

 さて、パートナーは見つかるでしょうか。

 雉くん、幸運を祈る☆



















    春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ

             万葉集 一四四六  大伴家持







 人柱や ことわざ「雉も鳴かずばうたれまい」に因んだものもありました。


    ものいはじ 父は長柄の橋柱 鳴かずば雉子も射られざらまし





 おつきあい下さいましてありがとうございました。

 とても嬉しいです。




          2011年4月7日   奈良大和川にて




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この花の一節のうちに百種の 言ぞ隠れるおほろかにすな 4月3日のさくら(奈良 I 公園4景)

2011-04-04 | ことのは



         4月3日のさくら   







 夕刻、I 公園で桜をみる。

 例年のように、桜祭の提灯。

 雑草の見あたらない公園ではレンギョが咲く誇り、

 チュウリップのつぼみが色づいていた。

 住民の方たちの心暖かさが感じ取れる。


 





















   この花の一節のうちに百種の 言ぞ隠れるおほろかにすな

                      万葉集1456番 藤原広嗣
                       









 最後までおつきあい下さいまして感謝いたします。

 ありがとうございました。





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「内部への月影」萩原朔太郎と 4月2日の さくら   奈良U公園(4景)

2011-04-02 | ことのは





       「内部への月影」萩原朔太郎と 4月2日の さくら   奈良U公園(4景)
























    内部への月影  萩原朔太郎





    憂鬱のかげのしげる

    この暗い家屋の内部に

    ひそかにしのび入り

    ひそかに壁をさぐり行き

    手もて風琴の鍵盤に触れるはたれですか。

    そこに宗教のきこえて

    しづかな感情は室内にあふれるやうだ。



    洋灯を消せよ
    (ランプ)
    洋灯を消せよ

    暗く憂鬱な部屋の内部を

    しづかな冥想のながれにみたさう。

    書物をとりて棚におけ

    あふれる情調の出水にうかばう。

    洋灯を消せよ

    洋灯を消せよ。



    いま憂鬱の重たくたれた

    黒いびらうどの帷幕のかげを

    さみしく音なく彷徨する

    ひとつの幽しい幻像はなにですか。

    きぬずれの音もやさしく

    こよひのここにしのべる影はたれですか。

    ああ内部へのさし入る月影

    階段の上にもながれ ながれ。





               萩原朔太郎詩集 新潮文庫     

               河上徹太郎編 128、129ページより
               





    


    見て下さいましてありがとうございました。

    これからもよろしくお願い致します。


    











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「こだまでしょうか」金子みすゞ &「こだま」プーシキンと 4月1日の さくら   奈良K公園(6景)

2011-04-02 | ことのは





      「こだまでしょうか」金子みすゞ &「こだま」プーシキンと 4月1日の さくら






























      



 金子みすゞの「こだまでしょうか」はテレビで何度も聞き、みなさんも覚えておられるのではないでしょうか…。

 ロシアのプーシキンの「こだま」になると、随分違った感じになります。

 プーシキンの春や花の詩も探してみたのですが、日本とはかなり季節観念や感覚が違い、日本の桜には似合いません。

 ロシアはイランと同様、詩には薔薇が多く出てくるようです。

 


      





    こだまでしょうか    金子みすゞ





   「遊ぼう」っていうと

   「遊ぼう」っていう。


   「馬鹿」っていうと

   「馬鹿」っていう。


   「もう遊ばない」っていうと

   「遊ばない」っていう。


    そうして、あとで

    さみしくなって、


   「ごめんね」っていうと

   「ごめんね」っていう。


    こだまでしょうか、

    いいえ、誰でも。



    


 


    こだま    プーシキン (Aleksandr Sergeyevich Pushkin)





    森のけものの叫び 角笛のひびき

      遠い雷のどよめきにも

    丘のかなたの乙女の歌ごえにも

      ーーなべてのひびきに

    おまえはすぐにこたえのこえを

      うつろな空にはなつ。



    雷のとどろき 嵐のこえ 波の音

      村の牧夫のさけびにもーー

    お前はいつも耳をかたむけ

      こたえをおくる けれど

    おまえのこえには誰もこたえぬ・・・・・

      詩人よ おまえもそうだ。
 



               
                世界の詩23  プーシキン詩集  
                金子幸彦編 弥生書房 139、140ページ より







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「陽春」萩原朔太郎 と 4月1日の さくら   奈良N公園(7景)

2011-04-02 | ことのは




         「陽春」萩原朔太郎 と 4月1日の さくら




































    陽春   萩原朔太郎






    ああ、春は遠くからけぶつて来る、

    ぽつくりふくらんだ柳の芽のしたに、

    やさしいくちびるをさしよせ、

    をとめのくちづけを吸ひこみたさに、

    春は遠くからごむ輪のくるまにのつて来る。

    ぼんやりした景色のなかで、

    白いくるまやさんの足はいそげども、

    ゆくゆく車輪がさかさにまわり、

    しだいに梶棒が地面をはなれ出し、

    おまけにお客さまの腰がへんにふらふらとして、

    これではとてもあぶなさうなと、

    とんでもない時に春がまつしろの欠伸(あくび)をする。





           
               萩原朔太郎詩集 新潮文庫     

               河上徹太郎編 50ページより
               





    


  おつきあい下さいましてありがとうございます。

  とても嬉しいです。


    

 






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「春」草野心平 と 4月1日の さくら   奈良A公園(6景)

2011-04-02 | ことのは































     春   草野心平




     天下は実に春で。

     雲はのぼせてぼうっとしてるし。

     利根川べりのアカシヤの林や桃畑の中をあるき。

     おつけのおかずになづなをつみ土筆をつみ。

     なんとも美しいバラの新芽をつみ。

     樹木や草からは新しい精神が。

     それらがやはらかにぬくまつて燃え。

     五六羽小鳥たちはまぶしくうるむ空をかすめて。

     流れてゆくその方向遥かに。

     雪の浅間の噴煙が枝々の十文字交叉をとほして……。

     虫けらたちも天に駆けあがりたいこの天気に。

     ああ。実際。

     土筆の頭の繁殖作用や。

     せきこんで水を吸ひ上げる樹木の内部の活動や風のそよぎや。

     よろこびのものうい音楽はみち。

     なづなをつんでるおれとおまへよ。

     尾長猿のように木をとびまはり夜叉になりこの豊満をなきたくなり……。

        




                世界の詩36  草野心平詩集  
                田村隆一編 弥生書房 39、40ページ より










 見て下さいましてありがとうございます。



   






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「およぐひと」「エイプリルフール」「遺伝」  萩原朔太郎 ほか

2011-04-01 | ことのは









  一日(朔日)に朔太郎を思い浮かべる。

  朔=新月

  今日は中潮で、実際の新月は四月三日

  新しい月って意味くらいで新月の朔から朔太郎を思い浮かべたんだ

  単純だね




 「およぐひと」と「遺伝」は

  中学高校の頃に好きだった 詩




  




  およぐひと  萩原朔太郎 (昨日の日に「月に吠える」)


 
   およぐひとのからだはななめにのびる、 
   二本の手はながくそろへてひきのばされる、            
   およぐひとの心臓(こころ)はくらげのやうにすきとほる、            
   およぐひとの瞳(め)はつりがねのひびきをききつつ、                      
   およぐひとのたましひは水のうへの月をみる






  エイプリルフール  荻谷新月

 

   うそでしょ
   ほんとうなんだ
  「今、わたしにできること
   みんなでやれば
   大きな力に」…
   何度も流れるCMが証拠

   うそでしょ
   ほんとうなんだ
   もう四月なの?
   そうさ、「わたぬき」
   月はかわったんだよ
   のをあある やわああ





  遺伝  萩原朔太郎 


   人家は地面にへたばつて
   おほきな蜘蛛のやうに眠つてゐる。
   さびしいまつ暗な自然の中で
   動物は恐れにふるへ
   なにかの夢魔におびやかされ
   かなしく青ざめて吠えてゐます。
     のをあある とをあある やわあ

   もろこしの葉は風に吹かれて
   さわさわと闇に鳴つてる。
   お聴き! しづかにして
   道路の向うで吠えてゐる
   あれは犬の遠吠だよ。
     のをあある とをあある やわあ

  「犬は病んでゐるの? お母あさん。」
  「いいえ子供
   犬は飢ゑてゐるのです。」

   遠くの空の微光の方から
   ふるへる物象のかげの方から
   犬はかれらの敵を眺めた
   遺伝の 本能の ふるいふるい記憶のはてに
   あはれな先祖のすがたをかんじた。

   犬のこころは恐れに青ざめ
   夜陰の道路にながく吠える。
     のをあある とをあある のをあある やわああ

  「犬は病んでゐるの? お母あさん。」
  「いいえ子供
   犬は飢ゑてゐるのですよ。」





 みなさま、おつきあい下さいましてありがとうございました。感謝しています。
  



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