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(写真は トンパ博物館(東巴文字)
雲南省北部、ナシ族 によって描かれた絵巻物。
長い年月を経た今も、文字や絵の色が鮮やかなのは、絵の具の中に動物などの血が加えられているためらしい。
多分血に含まれた鉄分の影響ではないかと、勝手に考えている。
博物館員の方の承諾を得て、フラッシュ無しで写真撮影しています。
↓ 下は、以前に私が記録した『トンパ博物館 』です。
http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/22a65b8c5d94f424aa71b3f63e27a878 )
記録だけ 2007年 53冊目
日本の色を染める
著者 吉岡幸雄
岩波書店
岩波新書(新赤版)818
2002年12月29日
234ページ 780円+税
大変面白かった。
私が十代から好きな文様の一つ、『四騎獅子狩文様』を復元させた著者の、自然染めに対する心息が伝わる一冊。
『四騎獅子狩文様』の鮮やかな色彩には、紅花、蓼藍、木蘗(キハダ=柑橘類から)、槐(エンジュ=豆科から)などを使用したという。
藍染の話はかなり詳しく説明されており、楽しむことができた。
また、この本に出てくる『麹塵(キクジン)』のドラマには、深く興味を覚えた。
P.174~175の徳川家康所用の衣装で、著者の目をひくものに対する説明は、私も同感であった。著者は家康所用の藍の美しさと柿渋染めに興味を持ったらしい。
①
『淡浅葱地葵文・・・・・・』と『薄水色地大蟹・・・・・・』について『藍は濃い色を染める方がどちらかというと簡単で、淡い住んだ清楚な淡藍を出すのはきわめて高度な技術を要する』といった記述。
また、渋は私にとっては大変懐かしい。知人が円錐形の渋に糊を入れて、手書きの糊おきをしているのを観たことがあるからだ。
渋は紙なのに非常に丈夫でたよりどころがあるといった感じがする。
②
歌舞伎の『助六』や『廓文章』、『夕霧名残の正月』などの演目には紙衣(かみこ)といった衣装が使われる。
『助六』においては喧嘩っ早い助六をたしなめる意味で、母親が助六に紙衣を与え着させる。また、『廓文章』も一時的に落ちぶれたやつし役なので、黒と紫で小粋に文字まで書いた、うわべお洒落なぺらぺらの紙でもいいかも知れない。
しかし『夕霧名残の正月』においてはやつしの演技で、若干小粋に紙衣を着こなすというのは分かるのだが、一昨年の藤十郎さんの顔見世襲名披露(南座)で紙衣を再現された際、
『紙では弱いので破れないように工夫された丈夫な紙を使用していただきました。』
と、藤十郎さん自らが説明されていた。
私は江戸時代にも着られ、演じられていたといった紙衣に対して、釈然としない疑問部分があったのだが、この本を読んで、薄ぼんやりとわかったような気がする。
家康所用の紙衣には、『柔らかな和紙の上に、柿渋を塗って着色し、それを何度か揉みあげて、裏には紫の羽二重をつけて真綿を入れた小袖』だったらしい。
なるほど!柿渋を何度も塗って、揉みあげては塗るくり返しをされた紙衣ならば、着衣うに耐える。
従って芝居(『夕霧名残の正月』など)では水色の紙衣も、江戸時代は茶色であったのではないだろうか・・・と好き勝手に、考えている。
読み進めると、『江戸時代の流行色』の一つとして、茶色も含まれている。(P.211)当時、『暫』に団十郎茶。或いは『守貞漫稿』に『伊予染、路考茶、江戸に流行、天保に至りて京阪に芝翫茶、江戸に路考茶、梅幸茶』と描かれているくらい、茶色は 歌舞伎役者に好まれていたらしい。
上に書いた『暫』の今の衣装も元は団十郎茶であり、色も変えられたということは、今の紙衣も、江戸時代とは違う色に変えられていると考えられないことも無いのである。
こう考えると、日本の色も芝居を通して、奥深い歴史を感じる私である。
この絵巻物は上からお話が始まるのですか?
楽しそうな動きですね。
吉岡先生のお話を30年近く前にお聞きしたことがあります。京都の思文閣だったと思います。
研究熱心な方なので、本当にお話に興味が尽きないと思います。
黒豆と似たようなものでしょうか。
自然染めの微妙な色あいを出すためには、あえて鉄鍋は使わず、ホーローやステンレス製を使用すると、書いた本が多いような・・・。
この絵巻物は鉄の影響か、酸・アルカリの影響かは知らないのですが、血で化学反応を起こしているよのでしょうね・・・
絵巻物は上から始まっているのですが、もっともっと長い。初めから見ていくと、きっと、ちゃんと話になってるのでしょうね・・・
この本の著者が、以前えみこさんがおっしゃっていた吉岡先生だったのですか・・・
教えていただくまで、気がつきませんでした。
この吉岡氏の書かれた本は得るところが非常に多かった。
興味深い記述が多く、先日の『日本の意匠』と同様で、一気に読んでしまいました。
研究を重ねら上で実体験をなさって語られていますので、非常におくの深い本でした