絵入 好色一代男 八全之内 巻一 井原西鶴
天和二壬戌年陽月中旬
大阪思案橋 孫兵衞可心板
『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 二はづかしながら文言葉(ふみことば) 【1-2-4】 井原西鶴
下女(げじょ)、面目(めんぼく)なく、かへすべき、言葉(ことは)もなく、只(たゞ)御ゆるりと
申捨(すて)て、逃(にげ)入(いる)袖(そで)を、ひかえて、「此(この)文(ふミ)ひそかに
おさか殿(との)かたへ」と、頼(たの)まれけるほとに、何心(なにこゝろ)もなう、たて
まつれば、娘(むすめ)更(さら)に、覚(おぼえ)もなく、赤面(せきめん)して、いかなる
御方より、とりてちかはしけると、言葉(ことは)、あらけなきを
、しつめて後(のち)、母親(はゝおや)、かの玉章(たまづさ)を見れば、隠(かく)れもなく
かの、御出家(しゆつけ)の、筆(ふで)とハしれて、「しどもなく、さハあり
なから」と、罪(つミ)なき事に、疑(うたか)ハれて、その事
こまかに、云(いゝ)わけも、なをおかしく、よしなき事に
人の口とて、あらざらむ、沙汰(さた)し侍る、世之介姨(おば)に
むかつて、こゝろの程(ほど)を申せば、何ともなく、今待てハ
天和二壬戌年陽月中旬
大阪思案橋 孫兵衞可心板
『絵入 好色一代男』八全之内 巻一 二はづかしながら文言葉(ふみことば) 【1-2-4】 井原西鶴
下女(げじょ)、面目(めんぼく)なく、かへすべき、言葉(ことは)もなく、只(たゞ)御ゆるりと
申捨(すて)て、逃(にげ)入(いる)袖(そで)を、ひかえて、「此(この)文(ふミ)ひそかに
おさか殿(との)かたへ」と、頼(たの)まれけるほとに、何心(なにこゝろ)もなう、たて
まつれば、娘(むすめ)更(さら)に、覚(おぼえ)もなく、赤面(せきめん)して、いかなる
御方より、とりてちかはしけると、言葉(ことは)、あらけなきを
、しつめて後(のち)、母親(はゝおや)、かの玉章(たまづさ)を見れば、隠(かく)れもなく
かの、御出家(しゆつけ)の、筆(ふで)とハしれて、「しどもなく、さハあり
なから」と、罪(つミ)なき事に、疑(うたか)ハれて、その事
こまかに、云(いゝ)わけも、なをおかしく、よしなき事に
人の口とて、あらざらむ、沙汰(さた)し侍る、世之介姨(おば)に
むかつて、こゝろの程(ほど)を申せば、何ともなく、今待てハ
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