(写真はイランのレーズン。5キロの箱入りレーズンを袋に家でつめなおして、冷凍するところ。イランのレーズンは緑や赤や黒、大きいものや小さなものなど種類が多い。少し渋いものもあり、味が楽しい。しばらく置いておくと半醗酵状態となり、ブドウの羊羹のような食感を楽しむこともできる。
右上には、カシュナッツ。ナッツを油で揚げ、豚と海老、野菜で炒めてピリ辛(豆板醤)、片栗粉を絡ませると美味い・・・て、中国料理だったな・・・)
南の旅人(南から来た少年)
満足度 ★★★★☆
感動度 ★★★★☆
イランらしさ ★★★★★
1997年 イラン
監督 パルビズ・シャバジ
キャスト レザ・モガィダム
ガマル・ナスィーリ・ジョザニ
この映画も先日観た『太陽は僕の瞳』の始まり方に類似している。
ある少年が南の村(フーゼスターンのアフヴァーズから都市(テヘラン)の親戚の家に遊びに出かける。
「フーゼンスターンの血が流れているならば・・・」
や、親切な人に対して、
「フーゼンスターン出身でしょう?」
などの言葉から、フーゼンスターン 対 現在のイラン(都市・テヘラン)の心や生活のありようの違いがはっきりと浮かび上がる一作品。
家族の話によると、フーゼスターンのアフヴァーズはイランでも最も気温の暑いところらしい。日差しのきつさに見合った情熱が、この少年の体内にも、暑き血潮として流れているのかもしれない。
ある少年のとことん親身になる優しい心に対してに親戚やご近所の社交辞令。大人たちの態度。南からきた田舎者をバカにする人。時々出会う親切な人々。
この映画を観て、中国の雲南省のガイドが、度々、
「僕は漢民族です・・・」
といって、少数民族の方たちとは棒引きしていたことを思い出す。
ここでは感想の記録のみで、筋書きは省かせていただきますが、とことん親切をし尽くした少年は、汽車賃だけで家路に向かう。
汽車の中で少年は、窓の外を見ながら、満足感と安堵感に、ほっとした表情をのぞかせる。
少年は内外ともに美しく、まるで神と一体化したような顔だった。
イランはイスラム今日ではあるが、少年の表情は、ヨーロッパ古典主義の絵画に描かれたキリストに似ている。
イランは映画に対しても検閲が厳しいが、そのぎりぎりのところで、うまく自分の試行を凝らし、西洋的な要素を組み込んだ秀作の一つだと思う。
この映画の気に入ったところはイランらしさ。
イスラム教をベースとした祈りや男女の服装。タクシーの乗り方や値切り方、テヘランの町並みや人々の生活が手に取るように分かる。
映画は冬だったので、果物屋には柑橘類一色が並ぶのも楽しい。
金などの貴金属商の様子も手に取るように分かる。
イランのガイドラインを知る上ででは、古くて使えないガイドブックよりもよほどわかりやすい。
この映画も数年前に録画しておいたもの。家族といっしょに見ることができ、一層楽しむことができた。