乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

太陽は、ぼくの瞳 マジッド・マジディ監督 イラン映画

2007-05-06 | 映画

(写真はイランの菓子。日本の鼈甲(べっこう)飴のような菓子の中に、スライスしたピスタチオがはいっている。)

 

          太陽は、ぼくの瞳  THE  COLOUR OF PARADISE

 

 

 満足度 ★★★★★  + おまけ★★

 感動度 ★★★★★ + おまけ★★★

 色彩美 ★★★★★

 イランらしさ ★★★★★ + おまけ★★★

 話の展開 ★★★★★

 小粋さ ★★★★★

 効果音 ★★★★★

 お勧め度 ★★★★☆

 

 イラン 1999年 90分

 

 監督 マジッド・マジディ

 

 

 数年前に録画しておいた『太陽は、ぼくの瞳』を、家族といっしょに観た。

 琴線に触れる部分が多く、涙が止まらない。

『この映画は好きだな。』

と見始めてすぐに、直感。

 自分的にはかなりいい作品だと感じながら観ていた。後で知ったのだが、なるほど・・・マジッド・マジディ監督とは、私の好きな『運動靴と赤い金魚』(1997)と同一人物とのこと。

 

 この映画はどこかしこに小粋さがある。

 また、イスラム教の神の存在なくしては、この作品はありえない。

 私はイスラム教について、あまり知らないので、この映画を観た後に『イスラム教入門』(岩波新書・赤版)を読み始めた。でも まだこの本は、半分しか、読めてない・・・

 

 あらすじは省かせていただきますが、感想を少し記録したいと思います。

 

 8歳で全盲のモハマド。彼の周りには、基本的には悪人はひとりとして出てこない。

 またイランの町、農村、森などの景色が上手く描く出されている。兄弟愛、祖父の愛、父の嘆きや愛、教師の愛、大工の愛などの細やかな描き方が好きだ。その愛を全盲である彼が、素直で賢明な彼であるのに、全盲である彼が不安におびえる様子を上手く描くところも、細やかだ・・・

 モハマドは風を感じ、自然を感じ、現実を感じる。

 

 再婚したいがために、父は全盲の息子を重荷に感じる。

「僕を見てくれ。何があるというんだ。五年前に妻を亡くし、父を早くに亡くし、貧乏な僕は正直に生き的たんだ。その時、母さんは僕に何をしてくれたというんだ・・・・・・」

という嘆きの超えは、彼の実直さをあらわした、悪意の無い、印象的な言葉だ。

 

 父は一旦 大工見習として谷間の全盲大工に彼を預ける。

 全盲という共有の境遇の大工に、自分の感情の席がきれる。涙ながらに訴える。

「みんな、僕から、離れていくんだ。おばあちゃんさえも・・・。先生はいつも神が近くにいて、見守ってくれているという。神に遇いたい。僕は、いつも、神を探しているんだ・・・」

 大工は深くため息をついて彼に答え、静かにその場を離れる。

「それは先生の言うことが正しいよ・・・」

 この言葉のやり取りは、深く心に刻み込まれtる。

 宗教縦横を超え、健常者とは違った嘆きが心にジーンと伝わってくるようだ・・・

 

 モハマドを思い、嘆き悲しむ祖母。山間の雲の切れ間に彼の姿を見た祖母は、安らぎの頬を染め、死んでゆく・・・

 

 やがて懇談の破談。父は雨の中、モハマド連れ帰る。

 森で三度も聞いた不吉な野生動物の声は彼の心に鳴り響く。

 大雨の中、橋の半ばで橋が落ちる。

 川に流されるモハマドと馬。

 父は一瞬、安堵感を覚え、ただ呆然と息子を眺める。

 川の中で目をむく馬、そして、いななき。

 父はことの重大さに気づき、川に飛び込む。

「モハマド・・・・・・」

 

 濁流に流され、父は急流に身を任せる以外に無い。恐怖、そして死の恐怖。

 彼は必死で、横たわる大木の幹につかまる。

 目を凝らすと、近くにモハマドの姿が・・・

 父は何もためらうことなく無意識に息子を助けようと、再び濁流に身を任せる。死の世界と隣り合わせ。

 

 やがて雨も収まり、父は海岸で目を覚ます。

 父はまず息子を探す。

 死に魅入られた腕の中の息子、モハマド。

 父親はモハマドを抱きかかえ、嘆き悲し見、泣き続ける。

 

 しばらくして・・・

 

 父親の体からだらりと垂れ下がったモハマドの右手に、オーレオリンともゴールドとも見分けのつかない輝きが宿る。神。そしては息吹を吹き返す。

 死による再生。モハマドは死をも受け入れ助けようとした父の愛情に見守られ、この時に始めて神に遇うことができたのかも知れない。

 

 

コメント
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