(写真はイランの菓子。日本の鼈甲(べっこう)飴のような菓子の中に、スライスしたピスタチオがはいっている。)
太陽は、ぼくの瞳 THE COLOUR OF PARADISE
満足度 ★★★★★ + おまけ★★
感動度 ★★★★★ + おまけ★★★
色彩美 ★★★★★
イランらしさ ★★★★★ + おまけ★★★
話の展開 ★★★★★
小粋さ ★★★★★
効果音 ★★★★★
お勧め度 ★★★★☆
イラン 1999年 90分
監督 マジッド・マジディ
数年前に録画しておいた『太陽は、ぼくの瞳』を、家族といっしょに観た。
琴線に触れる部分が多く、涙が止まらない。
『この映画は好きだな。』
と見始めてすぐに、直感。
自分的にはかなりいい作品だと感じながら観ていた。後で知ったのだが、なるほど・・・マジッド・マジディ監督とは、私の好きな『運動靴と赤い金魚』(1997)と同一人物とのこと。
この映画はどこかしこに小粋さがある。
また、イスラム教の神の存在なくしては、この作品はありえない。
私はイスラム教について、あまり知らないので、この映画を観た後に『イスラム教入門』(岩波新書・赤版)を読み始めた。でも まだこの本は、半分しか、読めてない・・・
あらすじは省かせていただきますが、感想を少し記録したいと思います。
8歳で全盲のモハマド。彼の周りには、基本的には悪人はひとりとして出てこない。
またイランの町、農村、森などの景色が上手く描く出されている。兄弟愛、祖父の愛、父の嘆きや愛、教師の愛、大工の愛などの細やかな描き方が好きだ。その愛を全盲である彼が、素直で賢明な彼であるのに、全盲である彼が不安におびえる様子を上手く描くところも、細やかだ・・・
モハマドは風を感じ、自然を感じ、現実を感じる。
再婚したいがために、父は全盲の息子を重荷に感じる。
「僕を見てくれ。何があるというんだ。五年前に妻を亡くし、父を早くに亡くし、貧乏な僕は正直に生き的たんだ。その時、母さんは僕に何をしてくれたというんだ・・・・・・」
という嘆きの超えは、彼の実直さをあらわした、悪意の無い、印象的な言葉だ。
父は一旦 大工見習として谷間の全盲大工に彼を預ける。
全盲という共有の境遇の大工に、自分の感情の席がきれる。涙ながらに訴える。
「みんな、僕から、離れていくんだ。おばあちゃんさえも・・・。先生はいつも神が近くにいて、見守ってくれているという。神に遇いたい。僕は、いつも、神を探しているんだ・・・」
大工は深くため息をついて彼に答え、静かにその場を離れる。
「それは先生の言うことが正しいよ・・・」
この言葉のやり取りは、深く心に刻み込まれtる。
宗教縦横を超え、健常者とは違った嘆きが心にジーンと伝わってくるようだ・・・
モハマドを思い、嘆き悲しむ祖母。山間の雲の切れ間に彼の姿を見た祖母は、安らぎの頬を染め、死んでゆく・・・
やがて懇談の破談。父は雨の中、モハマド連れ帰る。
森で三度も聞いた不吉な野生動物の声は彼の心に鳴り響く。
大雨の中、橋の半ばで橋が落ちる。
川に流されるモハマドと馬。
父は一瞬、安堵感を覚え、ただ呆然と息子を眺める。
川の中で目をむく馬、そして、いななき。
父はことの重大さに気づき、川に飛び込む。
「モハマド・・・・・・」
濁流に流され、父は急流に身を任せる以外に無い。恐怖、そして死の恐怖。
彼は必死で、横たわる大木の幹につかまる。
目を凝らすと、近くにモハマドの姿が・・・
父は何もためらうことなく無意識に息子を助けようと、再び濁流に身を任せる。死の世界と隣り合わせ。
やがて雨も収まり、父は海岸で目を覚ます。
父はまず息子を探す。
死に魅入られた腕の中の息子、モハマド。
父親はモハマドを抱きかかえ、嘆き悲し見、泣き続ける。
しばらくして・・・
父親の体からだらりと垂れ下がったモハマドの右手に、オーレオリンともゴールドとも見分けのつかない輝きが宿る。神。そしては息吹を吹き返す。
死による再生。モハマドは死をも受け入れ助けようとした父の愛情に見守られ、この時に始めて神に遇うことができたのかも知れない。