阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

外国人との共生社会を目指す法改正であるべき-拙速な入管法改正を危惧する

2018年11月10日 22時23分18秒 | 社会

 先週はコンサルタントとしての仕事でカンボジアに行っていました。目的は日本で働きたいと願うアジアの若い人材のための日本語教育機関の設立です。できる限り学生の経済的負担の小さな教育機関を作ることが、この制度を持続可能なものにする上でもっとも重要な要素。特にカンボジアやベトナムにおける技能実習生の負担は大き過ぎ、これが今年上半期だけで4279人とされる失踪の原因にもなっています。この問題を解決できるような学生の目線に立った日本語教育機関の設立が私たちのミッションと考えています。

 日本の近未来における最大の政治課題は少子高齢化、人口減少社会への対応です。社会保障費の増大、それを背負う現役世代の急激な減少を考えると、多様性を受け入れつつ日本の自然や伝統を守り、社会の活力を生み出せる外国人との共生社会をつくるためのデザインを描き、準備・実行していくことは本来は国会における最重要の議題であるはずです。

 私自身は、それこそ事あるごとにこのテーマについて国会で問題提起しましたが、安倍政権になってから、この問題についての議論は、非常に低調になりました。問題提起をするだけで嫌がらせを受けることも多く、安倍政権を応援する一部勢力からの圧力によって移民問題についての議論はタブー視されているのかと常々感じていました。

 議員会館から議員宿舎に戻る途中にローソンがあり、深夜、仕事を終えて立ち寄ると、外国人の店員が熱心に働いていました。ちょうど国会内の勉強会にローソンの新浪会長(当時)が来た時に外国人労働者の在り方について質問したことがあります。「今の政治を見ているとこの問題は正面玄関から議論しても、おそらく上手くいかないでしょう。経済政策として勝手口から入ることを今は考えるしかないと思います」というのが答えでした。

 経済界からすればその通り。しかし、政治家としては、この問題を大きな議論に持って行けない自分自身の力不足に切歯扼腕していました。

 国連で働くスウェーデン人ともこの問題について議論したことがあります。「日本は、欧米の現状から慎重に学んで綿密な準備をしてから臨まないと大変なことになるよ。僕たちの国は近いうちにスウェーデン・イスラム王国になるだろう」移民がもたらす人口の増大と福祉へのタダ乗りへの反感が世界に名だたる平和国家であるスウェーデンでも大きな問題になっているのです。

 ところが、移民政策は取らないと国会で何度も答弁していた安倍首相が、突然外国人労働者の受け入れ拡大を発表。出入国管理法改正が、臨時国会の最大のテーマになりました。

 現在、米国や欧州における社会の分断の大きな要因は移民問題です。様々な格差や差別が生まれ、憎しみが渦巻き、テロの脅威に脅えて暮らすようになったのは、この問題を上手くコントロールできないからです。この状況に乗じて差別を助長するような政治家が台頭し、分断に拍車をかけています。長年の歴史や経験がある欧米ですら苦労しているのに、島国で、異なる人種や文化を受容する基盤の脆弱な日本で十分な議論・準備もなく外国人労働者を拡大するとは、まさに私が危惧していた事態です。

 これからの国会での議論の場に自分自身が参加できない無念を噛みしめながら、私自身は民間の立場で外国人とのより良い共生社会の機会作りに貢献し、その問題意識を今後の法整備に繋げたいと思っています。


 今回の調査の合間には、コンポントム州の中田厚仁学校(アツスクール)を5回目の訪問。今回はカンボジアと日本の友好の象徴でもあるこの学校で始まった日本語教育をサポートするとともに、前回訪問時の希望に基づいて小学校と中学校の図書館へ様々な種類の本の寄贈などを行いました。

 コンサルタントとしての私の仕事は、日本語を学ぶことが未来にもつながるようなデザインを描き、さらなる学びの場と仕事の機会を作ることでもあります。彼らにとって憧れの国である日本が失望の国にならないためにも、政治への働きかけも続けていきます。