昨日、4日間の中国訪問から戻りました。訪問の目的は、昨年9月11日の尖閣国有化以来、「棚上げ」を両国の合意とする中国が強く反発し、日本の領海に中国工船を送り込むなど挑発を強めるとともに、日中間の閣僚級の対話が途絶え、青少年交流などもストップしている状況を少しでも改善することです。現在、日本からの個人観光客が75%減少し、多くの企業が中国からの撤退を検討するなど、日中両国がダメージを負っています。世界第二位、第三位の経済大国でもある両国が取り得る唯一の正しい選択肢は、双方が平和的発展を遂げて地球規模の課題解決に力を合わせることであるとの認識に立ち、積極的な政党間交流を行うことで状況改善を図り、環境問題など地球規模課題に協力して対処できるような信頼醸成につなげることを目的として中国訪問を企画しました。この8月に国際局長に任命された私にとっての初の外国訪問が中国であったことには多くの懸念の声も頂きましたが、こんな時だからこそ政党間交流が必要だと確信しています。小沢鋭仁国対委員長を団長に、石関貴史衆議院議員、今井雅人衆議院議員、重徳和彦衆議院議員、清水貴之参議院議員と私の6名で訪問しました。
今回のプログラムは私に任されていたので、下記のようなテーマで企画をしました。
1.環境省や研究者との対話を通し、黄砂、PM2.5などの大気汚染、原発の安定的な管理、エコ・シティの建設など環境問題をはじめとする地球規模の課題に協力して対処できるようにする
2.中日友好協会会長であり、元外相として影響力のある唐家セン元国務委員との対話を通し、双方の立場を確認した上で、局面打開への知恵を出し合う
3.中国共産党対外連絡部との交流を通して相互理解に努める
4.山東省徳州を訪問。市の幹部と意見交換を行う他、ソーラーパネル製造の世界的企業「皇明」や電気自動車製造企業を訪ね、環境問題に取り組む現場について理解する。
今回最も注目されたのは、唐家セン氏との会談でした。日本維新の会が国際局発足の最初の機会に交流を求めて中国を訪問したことに対し、対話の場として中南海を用意するなど、大変温かい歓迎を受けました。また、東京オリンピックの開催決定に対してもお祝いの言葉を頂きました。一方、尖閣問題は避けて通れない問題であり、お互いの主張、立場を述べ合いましたが、主張は平行線を辿りました。中国側は現在の事態を招いた責任は昨年9月11日の「尖閣諸島国有化」にあると主張しましたが、こちらは2008年12月に中国側が初めて尖閣諸島の領海に工船を入れたことをきっかけとして、我が国の領土を安定的に管理することを目的としての国有化であると主張しました。
私たちは尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本領土であり領土問題は存在しないとした上で、どうしても異論があるなら国際司法裁判所に提訴してはどうかと提案。唐氏は「二国間で解決すべき問題」との見解を示しました。中国要人が尖閣問題を国際司法裁判所に持ち込むことに否定的な見解を示したのは初めてですが、法廷闘争では日本に分があると判断しているとみられ、外交交渉での解決を目指していることが明らかになりました。一方、民間交流を積極的に進める考えでは双方の考えが一致し、全体として、対話や交流を通し、悪循環をプラスの循環に転換させていくことには合意できたと思います。
学者との議論では、中国側は、1972年に田中首相と周恩来首相が合意した「棚上げ」を尖閣の国有化で日本が破ったとの見解であることを主張しましたが、公式の外交文書であるふたりの会議録によると、「棚上げ」は中国側の解釈でありそのように受け取れる表現はないことを、私は文書を読み上げて主張しました。
中国工船の日本領海への侵入、反日デモにおける破壊活動などによって日本人の心は中国離れが著しく、個人旅行者は75%も減少。投資意欲も著しく減速しています。従って、現在の縮小均衡を拡大均衡に転換することが両国の利益であり、国際社会にとっての利益にもなります。国際局としてリスクを取って中国訪問を選択し、関係改善を目指す意思は十分伝わっており、各地で大変温かく歓迎されました。一方で、諸外国との関係構築においてバランス感覚も必要であり、台湾、米国、東南アジア諸国などとのつながりも強化していきたいと考えています。
李幹傑環境保護部副部長(環境副大臣)との会談
満徳州市長との会談
馬俊威中国現代国際関係研究員副所長との会談の後で