昨日は、国会で目覚しい活躍をしている維新の党の議員から、紛争地域で活動していた視点で政府の安全保障関連法案について問題点を指摘して欲しいとありがたい申し出を受け、5ヶ月ぶりに国会に。私なりの問題意識をお話しました。この点についてはタイミングを見て、書いていこうと思います。
さて、昨日から安全保障関連11法案に関する特別委員会での審議が始まりました。松野代表と柿沢幹事長の質疑を委員会室で傍聴したのですが、両委員の追及に対する総理の答弁は、完全に破綻していました。「自衛隊員のリスクが高まることはない」と決めつけた本人、および中谷防衛大臣の発言に縛られて、論理のすり替え、ごまかしの連続。「丁寧に説明する」と、実は時間稼ぎのための原稿の棒読み時間が異様に長い状況に、不安を感じた人も多かったと思います。「リスクが高まることはない」という安倍総理の説明の矛盾点について、現場の視点で指摘したいと思います。
① 当該国の国民からの憎悪の感情がもたらすリスク
集団的自衛権の行使は、対象国からすれば『売られてもいないケンカを自分から買いにきた』ことでもあり、その国の国民から激しい憎悪の感情を持たれるリスクがある。また、テロリストの攻撃対象になる可能性も高まる。襲撃してきた武装勢力に自衛的措置を行えば、たとえその場では「正義」の行動であっても、相手は攻撃を受けたと解釈する。また、民間人が巻き添えを食う事態になれば憎しみ、報復の連鎖が生じる可能性が高い。自衛隊員のみならず、現地にいる日本の民間人も報復のターゲットになる可能性が生まれる。
②非戦闘地域から「現に戦闘が行われている地域以外」への拡大リスク
自衛隊が活動したイラクのサマワ、カンボジアのタケオ州などは、例外的に治安上の問題はあまりない地域とされていた。一方、安全な地域に引きこもり状態では十分な貢献が出来ないとの問題意識によって、後方支援、非戦闘地域のみだった活動範囲を飛躍的に拡大することとなった。戦闘現場になりうる可能性があれば、速やかに作業を中止する、あるいは退避すると定めているので安全と首相は答弁(岡田代表との党首討論)しているが、現場では、このような考えは通用しない。
今回の法律が制定されれば武器や弾薬、また武装した兵士も運べる。つまり、自衛隊は自分たちを殺すための兵器や人員を運ぶ。相手からみれば敵そのものであり、当然攻撃のターゲットになる。攻撃側は被害を受ければ派遣国の世論が揺れることを知っているので、戦闘が行われていない地域で活動していても攻撃対象になる。また、テロリストに狙われる可能性が増大する。現在戦闘が行われていないから安全とは、全く戦場のリアリティとはかけ離れた考え。自衛隊員の命を預かる最高責任者の説明としては全く無責任。
総理に聞きたい。リスクがないと断言したのに自衛隊員、民間人に犠牲が出た場合はどのように責任を取るのか。戦争になれば必ず人は死ぬ。武力の行使をすれば外国人を殺傷し、民間人も巻き添えにする可能性が生まれる。自衛隊法施行規則39条には「我が国を防衛するために」「危険をかえりみず」「身をもって職務の完遂に努め」と宣誓するとあるが、実際に戦闘行為に従事することまでは想定していない隊員も多い。『命令を下す立場』としての安倍総理の覚悟の示し方は、まず、命のリスクは高まるけれど必要だと、本質に誠実に向き合うことが出発点ではないのか。
厳しい追及をする柿沢幹事長
原稿を読む時間が長い安倍総理
こんな時に自分がこの場にいられないのは痛恨ですが、今回は本当にありがたい申し出でした。日本にとってのターニングポイントですから、党派を超えて問題提起をしていきたいと思います。