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中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『三国機密之潜龍在淵』その10(完) 二度目の人生を献帝で

2018年06月08日 | 中国歴史ドラマ
『三国機密之潜龍在淵』第52~最終54話まで見ました。

曹操との間に埋められない溝ができていることを悟った荀彧は自害を選び、孔融は曹操に処刑されます。その曹操は日ごとに持病の頭痛に悩まされるようになるとともに、「郭嘉、荀彧、曹植…… ワシの信頼した者たちはどうしてみなあやつになびいていくのだ!」と劉平への苛立ちを募らせます。許都では劉平と曹操との衝突が不可避と思われましたが、その二人の会話。 劉平「魏公は早く鄴に遷った方がよい。このままでは何がおこるか保証できない。許都を戦場にはしたくない。」 ……これ、控えめに見なくても曹操を脅しにかかってますよね?

そして曹操は曹節と劉平との婚姻を望み、曹節自身も形だけの夫婦でよい、伏寿にかわって自分が父や兄から劉平を守るのだと、皇后への冊封を受け入れることに……

その頃、司馬懿は人里離れた所に建つ屋敷の中で謎の女性と対話していた…… というか彼女の正体はモロバレですね。ということで伏寿は生きてました\(^o^)/ 前回飲まされたのは毒薬ではなく仮死薬だったというオチで、実は事前に劉平と司馬懿とが計画して彼女が毒殺されたように偽装していたのでした。

曹操が魏公国の都・鄴へと遷って6年、許都は劉平の統治のもと平穏を維持し、名君としての劉平の声望は日ごとに高まっていきました。そして劉平はその仁政を慕ってやってきた難民たちも受け入れたのでありました。難民は受け入れるべきであるという規範意識は当然中国にもあるのだなと。

で、曹操の病が重いらしいということで曹節とともに鄴へと見舞いに訪れた劉平でしたが…… 劉平「朕は冷寿光より華佗の『青嚢書』を託されて以来医術の研鑽を積んできた」 曹操「ならワシの頭痛も何とかなりますかな?」 劉平「まず麻沸散で意識を失わせた後に頭を割り、病巣を取り除けば治るだろう」 このネタを劉平でやるのかと (^_^;) 当然ながら曹操は治療を拒み、「もし10年若ければ陛下との同盟を受け入れたでしょうな」という言葉を劉平に言い残して死去。

曹丕が魏王の位を継ぎますが、次弟曹彰と青州黄巾党が不穏な動きをおこします。司馬懿は劉平に密かに青州黄巾党の指導者の名簿を引き渡し、有事の際は彼らを味方に付けよと示唆。司馬懿が何も変わっていないということで笑顔で抱擁する二人。劉平を憎む司馬懿なんておらんかったんや!!しかし劉平は青州兵の動員を拒み、大軍でもって許都に迫った曹丕に対して、「大切なのは統一を果たすことで、天下を得るのは劉氏でも曹氏でもよい」と言い放ち、退位を宣言。ここで劉平に対して曹丕が跪いているので、どちらが勝者なのかわからないという趣向になっています。

曹丕に禅譲して山陽公となり、漢王朝という大きなくびきから解放された劉平は…… 反対に帝位を得た曹丕は、そして司馬懿は……

【総括】
本作の面白いところは、主人公の劉平は陰謀によって皇帝の替え玉に立てられたわけですが、自分自身は徹底的に「綺麗事」にこだわり、幼馴染みの司馬懿の策略も含めて、終始味方の側の陰謀を潰す方向で行動するという点で、歴史の中の陰謀や陰謀論を考えるうえで良い材料になっていると思います。言い換えればこのドラマは「綺麗事」で政治がどこまで動くのかというシミュレーションにもなっています。

また、本作の脚本家・常江氏は、日本語版のリリースが決まった『軍師聯盟』シリーズでも脚本を担当しており(ただし本作の方は小説をドラマ化したもの)、両作で互いに補完し合うような内容になっているのも面白い点です。

昨今日本では『二度目の人生を異世界で』という作品が物議を醸していますが、本作の主人公は18歳までの最初の人生を弘農楊氏の子弟・楊平として温県司馬氏のもとで育ち、それ以後は双子の兄・劉協(献帝)の身代わりとして二度目の人生を生きることになったという設定なので、『二度目の人生を献帝で』というタイトルでも通用してしまうわけです。しかし件の作品と本作に込められた「意識の高さ」の落差を思うと、何とも言えない気分になりますね……


おまけ。本作の番組内CMで大活躍した満寵。
コメント (3)
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