博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『慶余年』その7

2020年02月03日 | 中華時代劇
『慶余年』第37~42話まで見ました。


北斉の「小皇帝」と対面する范閑で。どう見ても男装の女帝なのですが、誰も何もツッコミません…… 戦豆豆という名前のようです。彼女は皇太后と暗闘を繰り広げているらしく、前回出てきた海棠朵朵も皇太后派と見せかけて皇帝派の模様。

沈重は皇太后の誕生宴にも出席して欲しいと露骨に范閑を引き留めにかかり、なかなか言氷雲を引き渡そうとしません。京都の慶帝も相手の思惑を知りつつ、范閑に北斉滞在延長の許可を出します。どうやら「これしきのことで任務を果たせないようなら将来重職なんて任せられないゾ?」と、范閑にもっと試練を与えたいらしい……


ここらへんで北斉の九品高手何道人が范閑の味方となります。陳萍萍から期間限定で范閑を手助けするよう依頼があった模様。彼は弟子の程巨樹を倒されたことで范閑に恨み骨髄……のはずなんですが、「弟子は他にもたくさんいる。」さようでございますか……


そして范閑は実は沈重の妹が言氷雲と恋仲だった(というか言氷雲が彼女を利用して情報収集していた)という情報をキャッチし、彼女の協力で遂に言氷雲を救出。言氷雲を演じるのは旬のイケメン蕭戦(肖战)。しかし長期に渡って沈重に監禁・拷問されたせいか、疑心暗鬼がなかなか解けません。おまけに元々職務に対して何かと融通が利かない性格のようです (^_^;) 

ついで范閑は上杉虎&その部将譚武による蕭恩救出計画を側面支援。しかし沈重の手下の狼桃&手下のふりをしている何道人の追跡から逃れられず、蕭恩とともに崖落ちしたかと思われましたが、崖から落ちて死んだ人なんていませんw しかし逃亡中に狼桃に受けた傷から蕭恩は自らの死期を悟り、范閑に「お前はワシの孫なのだ」と告白。これは陳萍萍の策略というか情報操作によってそう思い込まされているということのようです。


で、蕭恩の回想の中で登場した范閑の母親葉軽眉。若き日の蕭恩は「四大宗師」のひとり苦荷とともに、北斉の先帝の命により神廟捜索の旅に出たところ、神廟の中~出てきた彼女と出会います。彼女はその後世に出て数々の伝説を残し、最後は慶帝の妃となって子を産んだというところで、范閑は慶帝こそが自分の実の父親であると察知します。

陳萍萍が蕭恩に范閑が自分の孫であると思い込ませたのは、范閑を通じて彼の口から神廟に関する情報を得るため。また、范閑が儋州で育てられたのも、その儋州を出ることになったのも、滕梓荊を護衛とすることになったのも、すべて陳萍萍&慶帝の意図によるものなのでした。自分が彼らの駒にすぎないのだと悟った范閑は、反撃を決意。言氷雲を同志に引き入れて自分たちで鑑査院を掌握し、南慶の「第一重臣」となること、そして南慶の宮廷で何者かに殺害されたと思しき母の死の真相を知ることを目標に掲げます。

なぜ、言氷雲かというと、実は蕭恩の孫が生き残って南慶で育てられたというのは完全な嘘ではなく、言氷雲こそがその蕭恩の孫であると確信したからなのですが……
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2020年1月に読んだ本

2020年02月03日 | 読書メーター
「王」と呼ばれた皇族「王」と呼ばれた皇族感想
倉本一宏『公家源氏』と補い合う内容で、こちらは主に賜姓されない王を扱う。系統不明とされてきた興世王の系統の推測、伊勢奉幣の使王代の河越家が擬製的に王を作名し、王氏への改姓を願い出たという話が面白い。源氏と同じく天皇の孫あたりから露骨に没落していくさまが描かれているが、中国の各王朝の皇族でももう少し扱いが丁寧なのではないかと思ってしまう。
読了日:01月01日 著者:赤坂 恒明

天皇陵 「聖域」の歴史学 (講談社学術文庫)天皇陵 「聖域」の歴史学 (講談社学術文庫)感想
近現代における天皇陵の位置づけをめぐる話。一部の古墳が文久の修陵の際に大幅に手を入れられているという話は、史跡の外観が不変ではないというのは海外だけでなく日本でも同じという気付きを与えてくれる。また、天皇陵と天皇による祭祀との関係について紙幅を割いているのも本書の特色である。中国とは異なり、被葬者を示すような文字資料が副葬されていないということが、天皇陵や陵墓参考地の扱いに関して宮内庁側が政治的に付け入る隙のようなものになっているのではないかと考えさせる。
読了日:01月04日 著者:外池 昇

明智光秀の生涯 (歴史文化ライブラリー)明智光秀の生涯 (歴史文化ライブラリー)感想
早島本とは違ってオーソドックスな構成・議論となっている。関係の史料を着実に押さえ、信長の有能な家臣、歌や茶の湯に通じた文化人としての姿を描き出していく。本能寺の変の動機や背景に深く切り込んでいるのも早島本との違いだが、普段の光秀に似合わぬ計画性のなさ、織田政権下で進められていた家臣粛清という背景、そして黒幕など存在しないことを丁寧に議論している。
読了日:01月07日 著者:諏訪 勝則

「鎖国」を見直す (岩波現代文庫)「鎖国」を見直す (岩波現代文庫)感想
日本は鎖国をしているという言説がどのような背景のもとで語られるようになったのか、それはどう評価されていたのか、その評価はどう変わったのか、日本の国際関係の実態はどのようなものだったのか、鎖国が実態に合わないとしたら開国とは一体何なのかといった、鎖国をめぐるねじれを丁寧に解きほぐす。学習指導要領での「鎖国」の扱いをめぐる変化を見ると、政治と切り離された歴史学研究はどこまで可能なのかということも考えさせられる。
読了日:01月08日 著者:荒野 泰典

世界哲学史1: 古代I 知恵から愛知へ;古代I (ちくま新書 1460)世界哲学史1: 古代I 知恵から愛知へ;古代I (ちくま新書 1460)感想
世界各地の哲学の萌芽を、「魂」をどうとらえるかを軸に概観する。「世界」とある通り、西欧の哲学を中心にしないという点が特色のはずが、古代ギリシア哲学のとらえ直しの部分を最も面白く読んだ。ソクラテスの敵役にされてしまったソフィストたちには哲学はなかったのか?という話、数学と哲学との関係について、古代ギリシア以外の地域の数学には証明という営みが存在しなかったという話、コラムの「黒いアテナ」論争の展開などが印象に残る。「知を希(のぞ)んだ者」たちの歩みを描くはずの続刊にも期待したい。
読了日:01月10日 著者:

近世史講義 (ちくま新書)近世史講義 (ちくま新書)感想
女性史からのアプローチをメインとするが、近世史の概説としても読めるような構成となっている。第7講での、功績ある奥女中が自らを始祖とする家を立てることが認められていたという話が面白い。武家社会、朝廷、村落、アイヌ、信仰、流通など、同じ江戸期を舞台としていても女性史への切り口に様々な可能性があることを教えてくれる。
読了日:01月13日 著者:

日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く (朝日選書)日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く (朝日選書)感想
日本人とムスリムとの交流史にいてもまとめられているが、メインは90年代以降の日本にやって来たムスリムと日本人女性との結婚や日本人の入信者の事例紹介と、ハラール・ビジネスの問題。後者はともかく、前者については、ビザ目当ての男性側の態度など生々しさはうかがえるが、それだけで終わってしまっていてケーススタディと言えるほどでもないような気もする。
読了日:01月15日 著者:小村 明子

室町の覇者 足利義満: 朝廷と幕府はいかに統一されたか (ちくま新書 1471)室町の覇者 足利義満: 朝廷と幕府はいかに統一されたか (ちくま新書 1471)感想
足利義満の評伝というよりは、広く観応の擾乱から足利義教の死までの時代を対象とし、「室町殿」という地位の再評価を行った書。足利義嗣を親王とすることで鎌倉幕府以来の親王将軍の復活を図ったのではないかという話、北山文化の評価、義教と後花園の関係の話などが面白い。近年否定的に扱われている今谷明『室町の王権』のグレードアップ版という印象。
読了日:01月19日 著者:桃崎 有一郎

現代中国 都市と農村の70年 (放送大学叢書)現代中国 都市と農村の70年 (放送大学叢書)感想
包産到戸(農家生産請負制)が大躍進の頃から地方で個別的・実験的に導入され、改革開放期にも中央からの大動員ではなく、地方で自発的に導入され、そうした実践を通じて中央が認識を改めたというのは、「中国は一党独裁だから経済成長できた」という俗論の強い反証になるかもしれない。また反右派闘争は、毛沢東が民主党派に率直な意見・批判を求め、彼らが十二分にそれに応えてしまったところから始まったというのは、逆に建国当初は民主党派の役割が定まらない部分があったことを示していよう。
読了日:01月21日 著者:浜口 允子

戦争とは何か-国際政治学の挑戦 (中公新書 (2574))戦争とは何か-国際政治学の挑戦 (中公新書 (2574))感想
民主的平和論、安全保障のジレンマといった国際政治学の基本的な考え方をコンパクトにまとめている。第5~6章でサーベイ実験、データ分析の成果を示し、巻末の補遺で代表的なデータセットを紹介するなど、理論とともにデータの扱い方も示してやり、国際政治学とはどういう営みなのかが概観できるようになっている。
読了日:01月22日 著者:多湖 淳

江南の発展: 南宋まで (岩波新書)江南の発展: 南宋まで (岩波新書)感想
前巻で展開された渡辺信一郎氏の「古典国制」からの視点と、最終巻で展開されるであろう岡本隆司氏の「専制と放任が併存する」という国家・社会観とで江南を挟み撃ちにしたらこうなったというような内容。扱う時代は先秦から南宋までと幅広いが、宋代の比重がやや大きい。
読了日:01月23日 著者:丸橋 充拓

移民の経済学-雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか (中公新書)移民の経済学-雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか (中公新書)感想
移民の受け入れ、増加によって経済は、社会はどう変化するのかをトピックごとに検討。あるひとつの結論に導くというよりは、ある結論に対する批判や、別の視点からの分析を提示することで、移民をテーマに経済学的な研究とはどういうものかを示す書となっている。1章でキューバ移民の出身でありながら移民慎重派のボージャスなど、研究者のスタンスを問題にしている点も面白い。
読了日:01月26日 著者:友原 章典

建国神話の社会史-虚偽と史実の境界 (中公選書)建国神話の社会史-虚偽と史実の境界 (中公選書)感想
歴史教育として扱われる神代史が、戦前・戦中の小学生の目から見ても史実性が疑われるようなものであったこと、これに対し教師は児童に史実性を疑わせないように教育することが求められたが、指導書などでは教員自身が疑念を持たないようにし、信念を持って教育することを求めながら、その具体策は示されず、まじめな教師ほど深く悩むことになったという話が印象的。教育に関して、方法論や環境の面で無理があることを教師に求めつつも具体策が示されないというのは、今でもある問題かもしれない。
読了日:01月30日 著者:古川 隆久

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