オバアは施設に入って介護師さんにいつも気にしてもらい 生き生きしている
貧しい生活を乗り越えてきたのに 息子には無視され寂しい人生だったことだろう
今はその息子の存在すら忘れて楽しい日々だろうと勝手に解釈している
認知症も発覚していない頃はわずかばかりの畑で野菜を育てることを楽しみにしていた
そのオバアが植えた 大根もいつしか花が咲いて収穫時期を逃した
サヤエンドウは実をつけ出した 玉ねぎもよその畑よりも大きく育っている
玉ねぎはスライスしていただいた とりたての新鮮な玉ねぎの味は格別だった
植えたことも忘れているオバアが この畑に戻ることもないだろう
まして自分の口にすることはない それもしらずに野菜は育った
収穫を逃しただいこんの白い花は オバアをたたえるかのように咲いていた
そしてこれから収穫する玉ねぎはオバアからのたぶん最後のプレゼントだろう