2024/11/06
東京都北区で11月24日まで
ドナルド・キーンと『源氏物語』展が
開催されています。
JR王子駅前の北とぴあ17階展望ギャラリーと
飛鳥山博物館3階 アートギャラリー第1室 で
キーンさんの日本文学研究の足跡を
見ることができます。
先日行ってきました。
ドナルド・キーンさんの経歴を
おおまかに書いておきます。
キーンさんはニュヨーク、ブルックリン生まれ。
16歳で奨学金を得て
コロンビア大学に入学します。
フランス語が大好きだったという
キーンさんでしたが
1940年(昭和15年)のある日
本屋でアーサー・ウェイリー訳『源氏物語』
を手にとり安価だったので購入しました。
やがてその世界に魅せられるようになったのです。
卒業後、キーンさんは
海軍情報士官としてハワイの翻訳局で
日本軍の文書を英語に訳す任務を負いました。
1948年から5年間、英国の
ケンブリッジ大学で学び、その間
『源氏物語』を英訳したウェイリーとも
親交を結びました。
1953年には京都大学大学院に留学し
翌年には『西欧人の源氏物語の鑑賞』を
全文日本語で執筆しました。
三島由紀夫とも親交を持った。
キーンさんはコロンビア大学教授になってから
35年間、米国と日本を
半分づつ住む暮らしを続けてきました。
2008年には外国人の学術研究者として
初めての文化勲章受章 。
2011年の東日本大震災をきっかけに
日本国籍を取り、北区西ヶ原に住みました。
東日本大震災の時は
原発事故の放射能を恐れて
国外に脱出する外国人が多かったなか
キーンさんが日本に永住しようという決意は
深い日本愛を感じますね。
2019年、2月24日
心不全のため東京都の病院で死去。
96歳でした。
王子駅近くの北とぴあ17階展望ギャラリーでは
1988年に福井県武生市文化センター
(現・越前市)で行った講演
「私と源氏物語」をもとに
『源氏物語』の世界との出会いと驚き
また日本文学研究の探求の跡を紹介しています。
また飛鳥山博物館3階ギャラリーでは
1954年に日本語で執筆した
「西歐人の源氏物語の鑑賞」に焦点をあて
世界文学のなかで『源氏物語』の文学的価値を論じ
さらに古典文学とその翻訳の可能性に
ついて示します。
また、各国語に翻訳された『源氏物語』
の展示もあります。
キーンさんは多くの日本文学、
徒然草、奥の細道、近松門左衛門から
太宰、谷崎、永井荷風、川端、三島、安倍公房
大江健三郎らを翻訳しています。
キーンさんは日本人より日本的で
日本が大好きだったのだなあと
感じることができます。
こんなに日本社会になじめるとは
外向的、社交的な人だったのでしょう。
狂言の太郎冠者を演じている写真がありました。
(写真はネットよりお借りしました)
その写真を見ながらふと思ったのですが
三島由紀夫は能の脚本も書いているのに
謡や仕舞いを習ったという話は聞きません。
脱線ですが
三島はほんとうは日本に
あまり興味がなかったのでは…。
それはさておき
キーンさんの日本文化に対する
興味の深さ、理解の深さ、語学の才能に
今更ながら驚かされたのでした。
北とぴあ17階から王子駅方面を見る