青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

♪山よさよなら ごきげんよろしゅ ~鹿沢温泉ツアー後編~

2005年02月09日 20時11分47秒 | 日常
暗闇の中で目覚める。あやや、寝てしまったか。
だいたい六時間くらい睡眠を取ると自動的に目覚めてしまうのが最近の私の体なのだが、携帯で時間を確認すると午前三時と言う事は昨晩は午後十時くらいに寝てしまったのだろう。
窓を開けて夜の空を見上げる。かまいたちのような真冬の山の空気。山の端から広がる夜空は、夥しいほどの星の瞬きを映すスクリーン。「星の数ほど」の星の下で、タバコ一服。そして再び布団へ。

六時に起きた。窓ガラスがバリバリに凍っとる…。
今回の旅行は「プレ北海道」として「酷寒に体を馴らす」と言う目的もある(笑)。温泉でよく暖まった後、バッチリと着込む。下着、長袖シャツ、トレーナー、フリースの上にコート。フードをすっぽり被り、見た目は逮捕時のオウムの林郁夫を想像していただければよろしいかと(笑)。
エイヤ、で外へ。玄関前に寒暖計があった(写真)。むはぁ、こら寒いわ。
宿の隣に「百体観音」がある。信濃の国から、雪深い峠道をこの鹿沢温泉へ訪れる客を導いた道しるべだという。これが長野側から数えて百番目の観音様。鹿沢の歴史を長年の風雪に耐えて見守ってきた。寒くても、観音様は黙ったまんまだ。その向かいにはこの場所で生まれた「雪山賛歌」の歌碑があった。小さくても、そこはかとない歴史を感じる温泉場である。

出しているのは顔だけという状況で湯の丸山への峠道を歩く。最初は、風がないせいか「数字ほどは寒くないじゃん」という感じだったのだが、しばらくしてなんだか顔のアゴの部分が痺れて来た(笑)。吐く息の水蒸気が皮膚の温度を奪い、口の上の鼻の穴が液状化してダラダラと鼻水が流れ始めた(汚ねー)。空気が乾き切っているためか、ほっぺたもピシピシと引きつって来た。しまいにゃ足元からも寒さがせり上がって来て、痛風の疑似体験みたいにつま先が痛くなって来た(笑)。
さんちゃん寒いっ(@暴力で済ます法律相談所)。
このままでは「八甲田山死の彷徨」か「バターン死の行進」の二択になりそうだ。限界が見えてくる前に宿に逃げ帰る事にする(笑)。ストーブストーブ!めんどくせえから灯油ぶちまけて宿ごと燃(ry

湯豆腐ウマー。暖かい食い物は嬉しいねえ。朝っぱらから動いたので腹も減る。てか昨日も思ったが米が美味い。白菜のお新香が美味い。メシお代わり。なんて健康的なんだ。出発の時間まで部屋でゴロゴロ。きしんだ廊下も、六畳の狭い部屋も、立て付けが悪くて閉まらない扉も、何となく愛着が湧いて来る。一泊だけだけど。

「今日は会社の代休なんでここに来てみたんですよ」
「それはそれは貴重なお休みにわざわざおいでくださいまして…」
「やっぱ寒いですよね。」
「今度は花の時期に、是非お越しなすってください」

そう言うと女将さんは花ごよみを兼ねた宿のパンフレットをわざわざ持って来てくれた。6月には、湯の丸高原にレンゲツツジが咲き乱れるそうな。女将さんに別れを告げてバス停へ歩く。
くわえタバコの若い運ちゃんが、金づちでガンガンとホイールに付いた氷を叩き割っている。
「9時30分万座・鹿沢口駅行き出発しまーす」
バスはゆっくりと急坂を下り始める。

♪山よさよなら ご機嫌よろしゅ また来る時にも 笑っておくれ
♪また来る時にも 笑っておくれ…
「雪山賛歌」の最終章はこんな歌詞で締めくくられている。さらば鹿沢。また来る時まで。

おしまい。
コメント
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