青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

富士の高嶺にミトーカ投下

2012年05月16日 22時36分49秒 | 日常

(春名残りの坂道を@赤坂~都留市間)

陽射しはさんさんと降り注ぐ山梨県は都留界隈、沿線に晩春の名残のような菜の花畑を見付けて一枚。やって来たのは東日本初のミトーカデザイン(たぶん)こと「富士登山電車1号」河口湖行き。菜の花の前ボカシなんぞ狙い過ぎてる写真の典型だと思うのだが、これはこれでうま~く額縁に見立てて撮るのって難しいものですね。風が吹くと菜の花が動いて思った構図から離れちゃうトコとか、多分に運任せな感じがする。これで全面に菜の花の黄色を入れて大ボケ味を出すと今はやりの「ゆる鉄」っぽくなるんでしょうかね?

 

「電車はないのか」と言うヨメさんの急なオーダー、そりゃあこの辺りに富士急行線が走っているのは知っていますが、さりとて富士急行ってパークアンドライドみたいなシステムがあるのか聞いたことがない。とりあえず主幹駅である都留市駅に行ってみる事に。都留市駅と言うからには都留市の玄関口ではあるのだが、中央道のICもあるし国道のバイパスは街外れを通ってしまうしで、なんとな~く寂しい感じ。駅前では富士急タクシーの運ちゃんが車を並べて思いっ切り暇をこいている。
窓口のオネーサンに「車で来たんだけど、富士登山電車に乗りたいんで一時貸しの駐車場ある?」と聞いてみたものの結果は…昔はやってたそうなんだがね。コインパーキングなんてシャレたものもありそうもないし、どっかないんすかね~としぶとく食い下がっていると、ヒマこき運ちゃんが一部始終を聞いていたようで、「ちょっとくらいならあっこで大丈夫だ!」と信号1個先の閉店したスーパーの駐車場を案内されるw。サンキュー運ちゃん。


富士吉田までの往復切符を買い、家族三人駅のホームへ。「STATION MASTER」と書かれた駅長室、地方の私鉄じゃないと見られなくなりましたね。木造の上屋のある島式ホームには、構内踏切を渡ってトントントン。こうやって地方私鉄や三セクばっか回ってると、よっぽどこっちの方がバリアフリーな感じを受けたりもする(笑)。橋上駅舎なんかで子供連れてると、階段の登ったり降りたりで子供を抱きかかえたりせにゃならんのだが、荷物持ってたりすると大変なんだよね!(←切実)。


ホームで待つ事10分程度、富士登山電車が到着。二世代程度前の京王の主力車両である5000系の改造車ですから、関東の人には多少馴染みがありそうな…まだ京王帝都電鉄(K.T.R)って言ってた時代の京王のエース車両ですね。末期は競馬場線とか動物園線とか、相模原線や高尾線の折り返し運用に使われてましたが、この時期の週末は新宿からの朝の競馬急行に入って10連で武蔵野をかっ飛ばす事も多かったなあ。片開き3扉の18m車とお手頃サイズなので地方で第二の人生を送っている車両も多いのですが、富士急だと八王子のちょいと先だからすぐ会いに行く事が出来ます。ファンの多い名車だったのでね。

   

富士山観光のテコ入れとしてこんな車両を作った富士急。外観は富士急創業当時の車両色である「さび朱色」をベースに、3扉を1個潰して2扉化→内装も木材を基調とした富士山向きのベンチシートを中心に観光気分を盛り上げるしつらえは、JR九州の大半の車両とか、和歌山電鉄の車両デザインで名を馳せた水戸岡鋭治氏謹製でございます。ヨメさん、「こんなかわいい車両が走ってるんだ!」と評価が高いようですが、「いさぶろう・しんぺい」とか「はやとの風」とか「海幸山幸」とかを既に体験している身にはな~んかどっかで見た事あるような?と思ったのも事実(笑)。木目調、ベンチシート、ロゴマーク、のれん、レタリングってミトーカデザインの定番っちゃあ定番だしね。まあそんなヲタ目線よりヨメさんと子供が喜んでいる事が重要なのかもしれません。この層が来ないと鉄道復権の起爆剤にはならんでしょうからなあ。


富士登山電車の運転席。運転席の背面部は一段高くなっており、子供でもカンタンにカブリツキが出来るようになっているのがミトーカ流。ミトーカデザインって女性や子供が楽しめるようにと言うのが基本線みたいですからね。車内は大幅に手が入ってはいますが、マスコン回りは何となく記憶にありますね。うんうん、こんなだったよ。昭和42年日本車両製造ですから、もう45年選手ですね。馬車軌道1372mmの京王帝都から譲渡されてるから、足回りは狭軌の営団FS510に換装されてますが、それって長電の鯨さんと同じじゃないですか。


起点の大月駅が標高358m、終点の河口湖駅が標高857mとその標高差は約500m。標高差で言えば、箱根登山鉄道の小田原~強羅間と遜色がないんですが、車窓の風景が意外に住宅街やら田園風景なんでそんなに登っているのかと言う事に気が付かない人も案外多いのかもしれません。乗ってみると一方的な片勾配なんですよね。そんな線形を「登山電車」と言う形にしてウリにしてみましたって事でしょうか。公共交通と言えども黙って乗ってくれる時代でもないし、一般ユーザーの需要を喚起するには、やっぱりコンセプチュアルな方がいいですよね。

そんなこんなで30分、あっという間に電車は富士吉田駅改め富士山駅に到着。
車両の内装はともかく、乗ってた観光アテンダントのお姉さんが私たち家族にすごく優しかったのが好印象(笑)。
写真の右端にちょっと見切れているお姉さん、お世話になったね!
コメント
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