青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

信州の、メトロはレトロ。

2024年03月02日 09時00分00秒 | 長野電鉄

(ナガノメトロを滑るよに@権堂駅)

元東急の8500系が滑り込む、夜の権堂駅。特徴的な地下駅の構造を支える細かい柱をスリットに見立てて一枚。権堂と言えば、昔も今も信州長野の最大の繁華街。長野電鉄の本社がある基幹駅でもあります。以前の権堂駅には、駅直結の商業施設として「イトーヨーカドー長野店」がありましたが、そのイトーヨーカドーが何年か前に撤退。善光寺に向かう大通りに建つ大きな建物もいつの間にか減築が行われ、現在はヨーカドーの後には綿半が入っています。最近、流通業界の大きなニュースになりましたが、イトーヨーカドーの店舗戦略が大きく見直され、北海道から東北、甲信越にかけての店舗は基本的に撤退方針という話が伝わって来ました。弘南バスの弘前ターミナルに隣接する弘前店や、同じ長野県内では上田電鉄の千曲川の鉄橋のそばにあるアリオ上田からも店舗を撤退してしまうそうで、流通大手のセブン・アンド・アイグループの中での苦境が伝わってきます。ヨーカドーって、一昔前は地方都市の商業の中核を成す大型ショッピングセンターという印象があったのだけど、今やその役割は、郊外の大規模駐車場と広大な延床面積を持ち、ショッピングモール形式で各専門店を大量にテナントとして入居させることでリスクを分散するスタイルを取るイオングループが担っているようにも思われます。

昭和56年に地下化された長野~善光寺下間。もうその歴史は40年超を数える。繁華街の駅らしい飲食店の看板も、いつの間にかひときわのレトロ感を醸し出すようになりました。最近、鏡と取り合わせた広告看板が好きだ。令和の時代は一眼も「ミラーレス」が主流だけれども、私の写真は未だに二枚の鏡を通して行われている。世界観をそっと閉じ込めるこの感じ、発車して行く8500系と街へ向かう降車客が、いい感じの位置で収まってくれました。

煌々とヘッドライトを照らして、権堂駅に進入するゆけむり号。HiSEが地下鉄乗り入れ機能を持っていたら、「メトロホームウェイ」として活躍していたろうか。一応、長電の地下区間も「A-A基準」という当時では一番厳しい鉄道車両の難燃構造を持つ車両しか入線出来ないことになっていて、昭和56年の地下線開通当時は、保有していた旧型車がこのA-A基準をクリアできず、大量の東急5000系の導入による旧型車の一掃の要因となりました。さすがに現代の車両でその基準を満たさないものはありませんが、どちらかというと地下化されて半世紀近く経っている駅の構造物の方がそろそろ大規模なリニューアルなり補修なりが必要なのかなあと思いますよねえ・・・HiSEも、本家を「バリアフリー構造になっていない」という理由で追い出されている車両ですが、長電の地下駅も、長野駅以外はエレベーターもエスカレーターもありませんのでねえ。

権堂の駅を利用するのは、長野市近郊から買い物に来るお客さんが中心。昔は、長野の繁華街に出るのに、親子連れのファミリーが長電が使われるシーンも多かったのだろうと思われるのだけど、現在の利用者はクルマを利用しない高齢者が中心と見受けられ。長電の地下化は、約20カ所の踏切を廃止し、長野市中心部の市街化促進と近代化に大きく貢献した大規模立体交差事業でした。地下に潜って43年。時代の流れと街のうつろいを見ながら、ゆっくりとなんとも言えない風合いに仕上がっている、信州のシティレトロです。

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