司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

改正会社法概説(2)~監査役の監査の範囲に関する登記~

2013-12-06 15:11:49 | 会社法(改正商法等)
○ 要綱
第3 その他
2 監査役の監査の範囲に関する登記
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社について,当該定款の定めを登記事項に追加するものとする。

会社法改正法案
第911条 【略】
2 【略】
3 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
 一~十六 【略】
 十七 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)であるときは、その旨及び次に掲げる事項
  イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨
  ロ 監査役の氏名
 十八~二十九 【略】

附則
 (監査役の監査の範囲の限定等に係る登記に関する経過措置)
第22条 この法律の施行の際現に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、この法律の施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、新会社法第911条第3項第17号イに掲げる事項の登記をすることを要しない。
2 株式会社についてこの法律の施行の際現に旧会社法第911条第3項第25号又は第26号の規定による登記がある場合は、当該株式会社は、当該登記に係る取締役又は監査役の任期中に限り、当該登記の抹消をすることを要しない。


 改正附則第22条第1項の規定により,改正法の「施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、新会社法第911条第3項第17号イに掲げる事項の登記をすることを要しない」とされたことから,「6か月」のような期間限定はなく,まずは一安心。

 しかし,条文を見る限りでは,やはり「監査役設置会社に関する事項」欄に,「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨が記録されるようである。

 整備法による登録免許税法の一部改正及び租税特別措置法の一部改正のいずれにおいても,特段の手当てはされておらず,変更の登記の際の登録免許税は,やはり3万円(登録免許税法別表第一第24号(一)ツ)であろうか。

 施行日後において行う何かの変更(目的の変更等の(ツ)の区分のもの)の登記のついでに,同時に「監査役の監査の範囲に関する登記」を申請することをお忘れなく,ということになろう。


 ところで,定款の定めを設定した年月日も登記事項とするのであろうが,次のような場合分けが必要となろう。

ア 会社法の施行日(平成18年5月1日)において,整備法第53条の適用により,当該定款の定めがあるものとみなされた株式会社
イ 会社法の施行日後に設立された株式会社であって,設立の時から当該定款の定めを設けていた株式会社
ウ ア又はイ以外の株式会社であって,会社法の施行日後に,定款の変更により,当該定款の定めを設けた株式会社
エ 会社法の施行日後において,当該定款の定めの設定及び廃止を繰り返し,改正法の施行日において,当該定款の定めを設けている株式会社
オ 改正法の施行日後に設立された株式会社であって,設立の時から当該定款の定めを設けていた株式会社
カ 改正法の施行日後に,定款の変更により,当該定款の定めを設けた株式会社

cf. 平成24年9月1日付け「会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(1)」
コメント

改正会社法概説(1)~社外取締役等の要件に係る対象期間の限定~

2013-12-06 13:28:51 | 会社法(改正商法等)
 社外取締役の要件に関する改正案は,次のとおりである。

会社法第2条
十五 社外取締役  株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

附則
 (社外取締役及び社外監査役の要件に関する経過措置)
第4条 この法律の施行の際現に旧会社法第2条第15号に規定する社外取締役又は同条第16号に規定する社外監査役を置く株式会社の社外取締役又は社外監査役については、この法律の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは、新会社法第2条第15号又は第16号の規定にかかわらず、なお従前の例による。


 コメント欄で質問のあった件は,上記ロに関するもので,要綱及び法制審議会における関係官の説明では,次のとおりである。社外取締役の制度の趣旨を没却する行為がされることを防止することを目的としたものである。


○ 要綱
(2) 社外取締役等の要件に係る対象期間の限定
① 社外取締役の要件に係る対象期間についての規律を,次のとおり改めるものとする。
ア その就任の前10年間株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないことを要するものとする。
イ その就任の前10年内のいずれかの時において,株式会社又はその子会社の取締役(業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人であるものを除く。),会計参与又は監査役であったことがあるものにあっては,当該取締役,会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないことを要するものとする。

○ 法制審議会会社法制部会第21回会議(平成24年6月13日開催)議事録
宮関係官 それでは,「(2) 社外取締役等の要件に係る対象期間の限定」について御説明いたします。①ア及び②アは,社外取締役等の要件に係る対象期間を10年間に限定するものでございます。
 ①イ及び②イは,社外取締役及び社外監査役の制度の趣旨を没却する運用,例えば,株式会社の業務執行取締役である者が,これを退任した後に当該株式会社の監査役に就任し,10年以上経過した後に当該株式会社の社外取締役又は社外監査役の要件を満たすことがないようにするための規律です。具体的には,①イは,過去に株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがある者が,①アの過去要件に挙げられていない取締役等となり,それから10年後に社外取締役となることを認めないとするものです。また,②イは,過去に株式会社又はその子会社の取締役,会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがある者が,②アの過去要件に挙げられていない監査役となり,それから10年後に社外監査役となることを認めないとするものでございます。
コメント (2)