司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

不動産登記の効力は?

2018-08-25 21:32:42 | 不動産登記法その他
NIKKEI STYLE
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO34384280R20C18A8NZKP00?type=my#AAAUAgAAMA

 既報の日経記事ですが,どなたでも,全文読めるようになりました。
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事業承継における株式の相続と改正相続法

2018-08-25 21:12:15 | 会社法(改正商法等)
 改正相続法が事業承継における株式の相続に与える影響について,検討を試みる。


1.株式の準共有
 遺言が存在しない場合,被相続人が所有していた株式については,遺産分割協議が未了の間,共同相続人全員の準共有となる点については,変更はない。


2.対抗要件
 株式の譲渡については,会社法第130条の規定により,いわゆる株主名簿の名義書換えが対抗要件となる。

 平成17年改正前商法においては,「株式ノ移転ハ取得者ノ氏名及住所ヲ株主名簿ニ記載又ハ記録スルニ非ザレバ之ヲ以テ会社ニ対抗スルコトヲ得ズ」(第206条第1項)であり,株式の相続についても対抗要件主義が採られていたが,会社法の下では,相続については明文の規定は置かれていない。この点,立案担当者によれば,名義書換えを要することなく,株式会社に対抗することができるものと解されている(相澤哲ほか編『論点解説 新・会社法』(商事法務)139頁)。

 もっとも,株式の共有者は,権利行使者の指定をして,株式会社に対し,その通知をしなければ,株主として権利行使をすることができない(会社法第106条本文)。

 改正民法は,共同相続における権利の承継の対抗要件に関する第899条の2の規定を新設し,自己の相続分を超える部分については,対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない旨を定めているので,株式の相続においても,この規定が適用されることになる。


3.遺言執行者
 株式の遺贈がされた場合,遺言執行者があるときは,遺贈の履行は,遺言執行者のみがすることができる(改正後の民法第1012条第2項)。

 したがって,株式の遺贈による名義書換えについては,遺言執行者は,受遺者に協力して手続をしなければならない(同条第1項)。

 特定財産承継遺言(いわゆる「相続させる遺言」)により株式の承継がされた場合,遺言執行者は,承継した相続人が上記第899条の2第2項に規定する対抗要件を取得するために必要な行為をすることができる(改正後の民法第1014条第2項)。

 したがって,遺言執行者は,この場合の株式の名義書換えについて,手続をすることができる(承継した相続人が自ら手続をすることができるのは,もちろんである。)。


4.遺留分を算定するための財産の価額
 従来,事業承継のための株式の生前贈与に関しては,相続開始前の例えば30年前にされたものについても,特別受益に該当するものとして,遺留分を算定するための財産の価額に算入すべきものとされていた。そのため,贈与の時点では株価が低くても,相続開始の時点で株価が高騰している場合に,大きな問題となっていた。

 この問題を解決するために,いわゆる中小企業経営承継円滑化法が制定されたのであるが,税務上の問題があるとして,なかなか活用されないままであった。

 改正後の民法第1044条第3項は,この点を「10年」に限定するものであり,事業承継のための株式の生前贈与を安心して行うことができることになったといえよう。


5.遺留分侵害額の請求
 現行民法において遺留分減殺請求がされた場合,現物返還が原則(民法第1036条)であり,例外的に金銭による返還をすることができる(民法第1041条第1項)ものとされている。

 改正後の民法第1046条第1項は,遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求権を定め,例外を認めていない。

 したがって,受遺者又は受贈者である後継者は,遺贈又は贈与された株式を返還することを要しないこととなった。

 また,株式の遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。)又は贈与に対して遺留分侵害額の請求がされた場合に,受遺者又は受贈者は,裁判所に対して,負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限の許与を請求することができる(改正後民法第1047条第5項)。

 よって,直ちに負担額の支払をすることができない場合にも,将来の利益等で分割払をすることが,明文で認められたといえる。

 なお,改正後の民法においては,例外はなく,金銭請求とこれに対する金銭支払のみであるから,合意により現物を返還するとしても,法的には代物弁済契約という別個の契約に基づく履行行為となる。


6.配偶者居住権
 中小企業の事業承継においては,相続財産がその会社の株式と事業用不動産しかないケースが多く,そのため,遺産分割の場面で,事業用不動産の売却を余儀なくされることがネックとなるとされてきた。

 改正後の民法で新設される配偶者居住権(改正後の民法第1028条以下)を活用すれば,当該建物を売却することなく,円満に遺産分割をすることができる場合もあるであろう。


7.自筆証書遺言の方式の緩和
 株式を遺贈しようとする場合,株券発行会社にあっては「株券」の写しを,株券不発行会社(定款に株券を発行する旨の定めがない株式会社に限る。)にあっては「株主名簿記載事項証明書」(会社法第122条第1項)を,自筆証書遺言に添付する財産目録として利用することができる(改正後の民法第968条第2項)。
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家の相続人「未定」が過半数

2018-08-25 18:36:48 | 不動産登記法その他
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34551420U8A820C1PPE000/

「戸建て住居を持ち子供のいる50代以上の600人に7月調査したところ、全体の55%が家を相続する人が「決まっていない」と回答した。70代以上に限ってもその割合は51%と高い」(上掲記事)

 子が複数いて,いずれとも同居していなければ,そうなりますよね。

 将来の空き家予備軍ともいえそう。
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相続法の改正と「削除」条文の新設

2018-08-25 14:28:09 | 民法改正
 相続法の改正により,民法の目次部分が次のとおり改正されるが,第7章第5節「遺言の撤回及び取消し」の部分が,不自然な動きである。


【現行】
第7章 遺言
 第1節~第4節 【略】
 第5節 遺言の撤回及び取消し(第1022条~第1027条)
第8章 遺留分(第1028条~第1044条)

【原則施行日以後】
第7章 遺言
 第1節~第4節 【略】
 第5節 遺言の撤回及び取消し(第1022条~第1041条)
第8章 遺留分(第1042条~第1049条)
第9章 特別寄与(第1050条)

【第4号施行日以後】
第7章 遺言
 第1節~第4節 【略】
 第5節 遺言の撤回及び取消し(第1022条~第1027条)
第8章 配偶者の居住の権利
 第1節 配偶者居住権(第1028条~第1036条)
 第2節 配偶者短期居住権(第1037条~第1041条)
第9章 遺留分(第1042条~第1049条)
第10章 特別寄与(第1050条)



 これは,改正法第1条(原則施行日に施行)により,

 第1028条を第1042条とし,第5編第7章第5節中第1027条の次に次の14条を加える。

第1028条から第1041条まで 削除

とされ,その後改正法第2条(第4号施行日に施行)により,

 第1028条から第1041条までを削り,第5編中第9章を第10章とし,第8章を第9章とし,第7章の次に次の1章を加える。

 第8章 配偶者の居住の権利
【以下略】

とされるためである。


 すなわち,施行時期が異なる関係で,まず原則施行日に「第1028条から第1041条まで 削除」という14条の条文を作出し,次いで第4号施行日にこれを削って,新たに新章(第1028条から第1041条まで)を追加するという,テクニカルな方法が採られるためである。

 なるほど~。

cf. 平成28年3月2日付け「「削る」と「削除」の違い」
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