昨晩七時ころ、家に入ろうとしたら、クワァクワァという鳥の鳴き交わす声がかすかに聞こえた。上空低くかかっている厚ぼったい雲は、鳥たちの姿をすっかり覆い隠している。雲のずっとかなたの明るいところを、真っ白なV字を広げて駆け抜けていく鳥たちがいるのだ。
夜、九時過ぎころ、家の二階に上がると、遠くの方からまたクゥックゥッというくぐもった鳥たちの声が聞こえた。障子を開けて見上げたが、漆黒の空に彼らの姿の気配さえない。ヒマラヤ山脈を越えて渡る鳥がいるというのだから、高度一万メートルまで上昇すれば、夜空のただ中もなんなく突っ切れるのだ。それにしても、こんな遅い時間に飛ぶのは、急がないと冬の寒さに追いつかれてしまうということなのか。(2014.10.30)