2007/6月中旬 谷川岳・変形チムニ-
入梅
「変チ」がいた!三人パ-ティ-!
前夜、登山指導センタ-に山行計画を提出し終えた時のパ-トナ-のひとことだ。
入梅にもメゲず、計画を諦めなかった甲斐はあった。嬉しい誤算で梅雨のハシリに晴れをもたらしてくれた。
早朝、一の倉沢出合が盛況なのは、この天候の影響が大きい。
見渡す限りでも5パ-ティ-。奇妙な緊張感にとらわれるのは毎度のこと。
とはいえ、そうもたくさん変チパ-ティ-がいるはずも無く、幾分落ち着きを取り戻す。
出合から右岸の巻き道をシバラク行っても雪は出てこない。
去年の7月はこの辺で雪渓だったのだが、さすがに今年は雪が少ないのであろう。
ようやく雪渓が出てきたものの、前方にシュルンドが大きな口をあけていた。
丁度、秋の巻き道に上がるリッジのあたりだった。
リッジに上がり、なんとなくそこを上がっていくと、ぐんぐんと高度を上げ、とても雪渓に降りられなくなったので
それならとそのまま秋道を行くこととした。
下降地点に着くと、先行の5人パ-ティ-がフィックス頼りにクライムダウンしていた。
テ-ルリッジはところどころ湿ってはいるもののフリクションが良く効き快適だ。
快適だが反比例して息が上がる。このところ山に遠のき、これほどに鈍っているというのが現実だ。
この先が思いやられた。
嬉しい偶然
中央稜基部。
ほかのパ-ティ-を意識しここはスル-。前の二人はダイレクトカンテ、すぐ後の2人は中央カンテへ行くという。
我々も変形チムニ-の取り付きへと急いだ。
烏帽子沢奥壁には先行が2パ-ティ-取り付いていた。南稜と中央カンテ。
久しぶりの谷川。幾分興奮気味に取り付きへと向かうと中央カンテにはなんと、かの安藤さんと現場監督さんのレンジャ-パ-ティ-。 嬉しい偶然に緊張も緩む。
挨拶もそこそこに、取り付きへ。カンテの取付きから幾らも行かず、目立つところに支点があった。
ココが取り付きであろうと見上げれば、いくつかスリングが見える。と共に滴る水で岩が際立って黒い。 これはもはや沢登り。沢は沢でも烏帽子沢だ。
今日のオ-ダ-はさかぼうが先陣を切る。
濡れ濡れの岩を濡れ濡れになりながら行く。下から見えたスリングはちょっと届きそうに無いのでスル-。
左にトラバるといいランニングが見つかった。そこからさらに左に行くと格好のフェイスが見えた。
そのときである。
「オ-!ココだここ。こっちが変チだよ」件の三人パ-ティ-だ。
我々の取り付きより10mほども先に陣取った彼らは自信満々であった。で、結局はその自信満々さに負けた。
到達地点から懸垂下降し、後塵を拝する事となる。
核心
1P・リ-ド
下部はカンタンなフェ-ス。上に行くにしたがって立ってくる。
本来のビレイ点をスル-すると、水流が横切るもののフリクションは問題ない。
上部2P目手前までロ-プ一杯に伸ばし、先行で満員のビレイ点が空くのをシバラク待つが、時間ももったいない
ので手持ちのハ-ケンと岩角で支点を作る。
2P・フォロ-
正面に見えるフェ-スは少々手強いが、それを越えると傾斜は落ちる。変形チムニ-手前まで。
3P・リ-ド
変チの核心。左のフェ-スは濡れ濡れでしかもヌルヌル。
かなりイヤラシイ。
そこで下からバックアンドフットで体をズリ上げていく。
地味に地味に。あまりの地味さに嫌気がさしてA0。これで一気に体が上がる。
中間部で体を入れ替えて最後のチョックスト-ンは左から越えた。
4P・フォロ-
フェ-スを越え、カンテル-トへトラバ-ス。
意外と悪い。
爆発音
5P・リ-ド
中央カンテと合流し、チムニ-は程よく乾いて快適に越える。
爽快爽快。あとは特に印象の無いフェ-ス。
6P・フォロ-
正面を左から巻き込むようにフェ-スを行く。
上部から音も無く落石。数m先に落下。強い爆発音と硝煙。
一瞬、何がおきたのか解らなかった。
アブねぇ、アブねぇ。
7P・リ-ド
人工のフェ-ス。せっかく持ってきたので、アブミを使う。
抜け口ではヌンチャクを掛けそれにつかまり、やりたい放題のエイドクライミング。
8P・フォロ-
ハング下、左クラック。
最後の一手が見つからずA0。
四畳半テラスは、崩落で埋まってしまい今では2畳ほど。
9ピッチ・リ-ド
凹状は足元が悪く、ドロドロですべる。
泥のついたクライミングシュ-ズが乾いた岩にこれまた相性が悪い。
上部核心が終わったからといってナメてはいけないピッチ。
終了点
10ピッチ・フォロ-
草つきから凹角、最後はちょっとだけフェ-ス。
フェ-スを越えれば烏帽子岩が堂々たる姿で眼前に迫り来る。
本来はあと2ピッチ伸ばすのだが、ココで終了。
あとは空懸と徒歩で南稜終了点。ようやく人心地で遅めのランチタイム。
下降は6ルンゼ。
中央稜基部で装備の確認と靴を履き替えれば僅かな開放感が嬉しい。
先出の安藤さんと現場監督さんとも再会を果たし、お互いの山行を語り合う。
あとはよりフリクションの効きが良くなったテ-ルリッジをコロコロと
雪渓、草つきをボトボトと一の倉出合にたどり着く。
「”変チ”がいた!三人パ-ティ-! 」
睡魔のなかにもにわかな緊張と興奮を覚えた登攀前夜の微熱。
思わぬ好天に快適な登攀。圧倒的に楽しかった充実感のなかにも苦い想い。
もはやすべてが遠い過去のような、追憶の彼方。
翌日、筋肉痛に悩まされながら、あの夜を独り想う。
sak