2022/3月~4月 南会津・七ケ岳
一路、北へ。
陸羽街道から塩原を抜けて、山王峠を越えると南会津。
道の駅を左に見て、山菜ときのこの販売所を通り過ぎる。
そして会津鉄道の高架橋をくぐると「あぁ、来たな」と、いつも思う。
その南会津の前衛に鎮座するのが七ケ岳。
いつかきっとと思う反面、気軽にハイクできるだろうと今まで選から外れていた。
雪の多い季節ならば面白そうだと記録を漁るが意外と積雪期の七峰縦走はネットで見つからなかった。
というわけで、出来上がった当初プランが、
”針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根~高倉山~七ケ岳~下岳~下岳登山口~針生”
というもの。
さて、いかがなものか。
【針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根(中退)】
針生からのファーストトライは前日のルート工作(林道ラッセル)もむなしく、降雪と強風で時間切れ中退。
多雪の年、どうやら1日で抜けるのは厳しそうだ。
同行してくれた、kikさん、matさんには感謝。
再訪を予感しながら、次なる機会に望みを繋げる。
【針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根~高倉山~七ケ岳~黒森沢登山口~針生】
ファーストトライから7日。トレースが残っていることを期待したが、会津田島では直前にドカ雪が降って、むしろ雪深い林道に苦慮。
スキー板で脛まで潜るのだから、ツボ足だったら恐ろしいレベルだ。
前回、針生から2時間半で着いた登山口まで、結局4時間もかかってしまった。
スキー板をデポして、わかんに履き替え高倉山北尾根に乗るが、膝ラッセル。
なかなかに心を砕く深雪である。
こういう時は、アレだ。
「こんなの当たり前だと思い込んで行く」作戦だ。
端から見ると苦行なんだけど、「むしろこれが当たり前」なので大丈夫です。
的なアレです。
まぁ、どちらかというと辛いんですけど、なんか山やってる気がして気分は高揚します。
雪庇の発達した急登をいくつか超えると次第に視界が広がる。
こうして眺めると南会津の山々は起伏がなだらかだ。
隣に見える大平山までの稜線も廊下のように雪庇を連ねていて、楽しそうだ。
などと思って後に調べてみると、やはり歩いている方はいるのです。
しかし、ものすごい記録だ。
◆会津田島~舟鼻山~駒止湿原~黒岩山~七ケ岳の記録(3泊4日:55.6km)
とにかく、こんなの当たり前だと思い込んで行くと次第に傾斜は緩む。
こんもりとした雪原に一歩踏み出す。
そうして足跡は伸びていく。
ひとつひとつの積み重ねは、確実に頂へと近づいていく。
一方で、消失点に向かっていることもまた事実である。
頂は通過点でしかない。
刻まれてきた足跡はそのほとんどが衆目に触れることもなくやがて消える。
ただ、振り返って胸を張ればいい。
こんなの当たり前だ、と。
時間は16時過ぎ。翌日は予備日。
このままワンビバークで縦走することも考えたが、視界にはレンズ雲。
強風の予感に恐れをなして黒森沢コースを下山。
途中、闇に捕まった上にわかんのベルトが切れるアクシデント。
結局ビバークすることになるのだが、これでよかったのだと自分に折り合いをつけた。
【たかつえスキー場~七ケ岳~下岳~古内登山口~会津山村道場駅】
4月4日
明らかに3月と比べると里の積雪量が違う。というか、ほぼなくなっている。
雪庇の崩壊を懸念しながら車を走らせる。
道の駅:番屋で朝を迎えるが、あいにくの小雨模様。気温は1℃。
慌てても仕方ないので、次なる計画の偵察として桧枝岐まで車を走らせる。
そうこうしているうちに雨が上がる。
この雨の切れ間を待っていた。
今シーズンの営業を終えた、たかつえスキー場のゲレンデを直登してゲレンデトップ、高倉山まで。
山頂に着くころ、また雲に巻かれる。しかしここまでくれば雨でなく雪。気温も氷点下だ。
冷たい雨より、雪の方が組みし易い。
高倉山から七ケ岳は一投足。
とはいえ、視界が利かないからコンパスで方角セットは忘れずに。
懸念していた雪庇は一部切れ切れになりながらもなんとかつなげられた。
雪庇の立体的な造形とクラックの切れ目。
それを慎重に選びながら歩く、このシチュエーションがいい。
下岳を過ぎると時に夏道が現れる。
道標を頻繁に見かける頃に縦走路は終わり針生と古内の分岐点。
古内への下りは道を外してしまったが、問題なく林道に出る。
林道開通記念碑からは地形図にある破線、南の沢筋を行く。
渡渉が一度あったが、靴をぬらさず飛び石で通過。
あとは林道らしき雪道を行くと舗装路に出る。
事前にデポした自転車を使って舗装路を快適に下る。会津山村道場駅で一休み。
当初、たかつえまで自転車で車回収をしようと考えていたが、16インチの折り畳み自転車では1%の勾配ですら大苦戦。
中山峠の8%勾配など到底歯が立ちそうもない。
なんとか会津高原駅までたどり着き、駅に自転車を置いてデマンドタクシ-(たかつえまで900円!)のお世話になるのであった。
山々に遊ぶことを選んだ自由。
成功も、失敗も、充実も、後悔も、苦楽も。
何があろうとも、そんなの当たり前だ。
選ぶ自由がある。
その価値を忘れてはならない。
sak