2020/9/15 巻機山・米子沢
集合時間、小雨舞う桜坂。
4日前の小三本沢と同じ感覚で寝袋を出る。
さて、どうしたものか。
沢から登山への計画変更も頭に浮かぶ。
そうこうしているうち、matさんと合流。
二人とも面識のない新入会のkudさんご夫妻を探す。
駐車場には車もまばらで、すぐに合流することができた。
1時間ほど出発を遅らせ天候の様子を見たい旨伝え、身づくろいや朝食を摂っているうちに鉛空だけ残して雨は止む。
こうなると、登山への計画変更は言い出し難い。
少しだけ装備を見直してお助け紐と捨て縄、カムをザックに押し込めた。
林道を少し歩いて、案内板に沿って米子沢。
広い河原に水流が一筋。
ここで水流があるということは、水量多めの予感。
今年の記録ではおおむね水量多し、とあった。おそらくは長梅雨の影響だろう。
出発も遅れたので、タイムキ-プにも気を配らねばならない。
少し急いで河原を詰める。
米子沢は「癒しの王道」ともいうべき人気ル-ト。
その白眉は後半のナメと草原にある。
なんとか後半天候が回復してくれればいいのだが。
kudさん夫妻はクライミング経験はあるが、沢は先月始めたばかり。
沢特有のヌメに苦戦したようだが、滝登りはソツなくこなしている。
matさんも入会1年経ち、安定して滝を登る姿に頼もしさを感じる。
序盤の滝場は概ね水流脇を行く。
念のため二か所ほどお助け紐を出し、一か所5mの懸垂下降。
トイ状滝は左クラックを半ばまで。
そこから水流を渡って右に移る場面が、水量多くちょっと怖い。
一段上がったところにカムとスリングで手がかりを作って後続通過。
このあたりが「ファイト!一発!」ってな感じだ。
それでもまだ滝場は続く。
特段困難な滝場こそないが、濡れたスラブ、草付きには用心が必要。
後半戦、大ナメ帯へと入る頃には、ガスは幾分晴れ、時折青空も覗く。
一気に開放的な景観が広がる。
ここでガスが晴れるなんて、私も神がかっているではないか。
内心そんなことを考えていると、matさんが訥々と語りだす。
matさんのおばあ様の言い伝えによると、”梅干しに念ずると晴れる!”ということらしい。
記録をしたためながら今になって思うと、天日干しした梅干しはその過程といい、形といい「お日様」の象徴的存在なのかもしれないなと合点もいく。
「だから私、さっきおにぎりの梅干しに祈ったんです」
私ごときが、神がかったなどおこがましい。
すでに、神の使いがここにいらしたのだ。(祈)
大ナメで小休止し、景色を堪能しながらゆっくりと歩く。
そのあとは滝場も規模が小さくなるので緊張する場面はない。
源流を右に左に進み、避難小屋への道には気づかずに詰めあがる。
水流も極めて細くなる頃、右岸の草原に乗る。
草原に佇み、大の字になって寝転ぶ。
草葉の間からは青空。
乾いた風が頬を撫でる。
心安らぐ時。
風になびく笹葉のサラサラという音が今は祝福の拍手にしか聞こえない。
去りがたきを去り、頂へ。
そして日常へと径を下る。
sak