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エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

道徳的な感じと、騙されやすい青年

2014-11-29 06:46:44 | アイデンティティの根源

 

 青年期は危うい。それは、権力から利用されて、戦争に持って行かれかねない。

 p226の2行目から。

 

 

 

 

 

 道徳的な感じは、そのとどのつまりと捻じ曲げにおいて、人間の「進化」に本来ついて回るものですね。たほう、価値が力を回復する感じには、人間の「革命」が付いて回ります。そのご当人の「革命」には、預言者のような理想主義がついて回ることもあれば、破壊的な熱狂主義がついて回ることもあります。青年期の人は、理想に対して敏感ですから、ウソの千年大国の約束に騙されやすいものですし、新しくて、しかも、傲慢なほど排他的なやり方で、自分を確かにしようとする約束に取り込まれやすいんですね。

 

 

 

 

 青年の理想の危うさについて、フロムが的確に指摘してくれています。フロムもユダヤ人ですから、ヒットラーが示したウソの千年大国に騙された若者が、いかに残忍な形で、ケダモノのように、自分の仲間を殺したか、をよくよく知っていたはずです。その残忍を働いたのは、「理想」に燃えた若者たちでした。

 私どもは、青年がそのような愚行に走らないようにするために、何ができるというのでしょうか?

 

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最大の子育て支援策

2014-11-28 11:50:42 | エリクソンの発達臨床心理

 

 やれ、保育所が足りない、認可園も増やせ、などと言われます。その通りだと思います。いずれも、子育て支援として大事です。しかし、それだけではない、と加藤周一さんの真似をしたくなりますね。

 

 

 私が考える最大の子育て支援策は、残業の原則禁止、法定労働時間の順守です。2014年11月12日(水)の「朝日新聞」(12版▲p15)に、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科博士課程に在学中の渡辺真弓さんが、「保育園不足 描けぬ『働く母親』の未来」と題して、文書を寄せていますね。渡辺さんも、日本社会が働く女性にとって暮らしにくいのは、単に保育園が足りない、では語り切れない、と言います。そもそも日本社会は、女性が働く意欲を持ちにくい構造を内蔵している」と、日本社会の構造的欠陥を指摘しておられます。なるほどなぁ、と思います。

「主に正規雇用者に顕著な長時間労働の蔓延により、妻は重い家事・育児負担を余儀なくされる。また、同様の長時間労働をしなければ、キャリアが抑制される。働き続けることができても仕事のやりがいを持ちにくい」

 法定労働時間という、法治の不徹底がこの背景をなすことは、火を見るより明らかですね。ですから、残業の原則禁止、法定労働時間の順守、すなわち、8時間労働を徹底する、子育て時には、差別のない短時間勤務を徹底することが、何よりの子育て支援策になる訳ですね。

 日本の労働政策は、福祉政策があまりにも貧困であるのと同程度に、あまりにも貧困なんですね。労働政策の貧困が、日本社会の構造的欠陥をなしているわけです。

 この視点も、次回の投票時に、どうぞご活用くださいね。

 

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人を大事にすること=上手なセックス

2014-11-28 10:00:35 | エーリッヒ・フロムの真まこと(の行い)

 

 夫婦でさえ、本音の付き合いでなくなるのが、現代、という時代の特色です。

 p82冒頭から。

 

 

 

 

 

 

 チーム精神や、ガマンもお互い様、等を強調することは、ごく最近の展開です。それは、第一次世界大戦以降の数年間で、お互いの性的満足が、満足のいく性生活と、特に幸せな結婚生活を送るための基礎という、人を大事にする概念によって、導かれたものでした。当時信じられていたことと言えば、結婚生活が失敗する原因は、結婚相手と「性の不一致」にこそある、ということです。この誤ㇼを犯す訳は、「正しい」セックスをするのを怠ったから、すなわち、どちらかが、あるいは、双方ともに、セックスのやり方がまずかった、と見るのですね。ですから、この過ちを正すため、お互いに大事にできない、不幸な2人を助けるために、正しいセックスを教え、その相談に応える、たくさんの本が出ています。その本の通りにすれば、陰に陽に、幸せと人を大事にすることを約束してくれる、おまけつきだとでも思っているんですね。 

 

 

 

 

 面白いですね。アメリカにはこんな一面があるんですね。アメリカの本屋の品ぞろえで特徴があるとすれば、セックスのやり方の本と、ユーモアの本が多いこと。それが今日フロムが教えてくれることに由来していたとは知りませんでしたね。アメリカ人もおバカな側面があるんですね。「人を大事にすること=上手なセックス」だなてね。

 アメリカが、ベトナム戦争という試練にあってのも、ある意味納得ですね。

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まだまだ危うい青年期

2014-11-28 05:23:12 | アイデンティティの根源

 

 青年期になると、理想の良しあし、位置づけが分かってきます。日本人は、自分が得をしないかぎり、なかなか理想を求めないのが常。それがいつも間にか「最悪」に加担しないとも、限らない。

 p225下から5行目途中から。

 

 

 

 

 

それで、青年期は、倫理的なものの見方が、大体できるようになりますが、まだ、時には衝動的な判断に引っ張られたり、時には、奇妙な合理化に引っ張られたり、ということもあります。したがって、大人への階段が決ままっていて、早すぎる終点にもなれば、将来戻ってくる停車場にもなる、ということのが子どもに当てはまるように、青年期にも当てはまります。

 

 

 

 

 青年期は、倫理的なものの見方が大体できるければも、まだまだ危うい。ぶれやすいんですね。最低・最悪と、最高・最善のあいだで、大揺れしやすい。

 でも、今の日本は、ちょっと事情が違いそう。理想は、その基礎に、信頼がありますが、今の日本は、信頼が非常に揺らいでいますでしょ。

 理想は辺境にあり、というマックス・ウェーバーの説は、今も正しい。

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ポスト3.11の視点で見た、蘇える内村鑑三

2014-11-27 11:27:46 | エリクソンの発達臨床心理

 

 内村鑑三といえば、堅いキリスト教の中でも、ことさらお堅い「無教会」(無教会キリスト者)の元祖。お堅い、偉い、近寄りがたいイメージが従来ありましたね。しかし、今回鈴木先生が取り上げた内村鑑三は、実に親しみやすく、人間的、しかも、ポスト3.11のヴィジョンを携えていることがはっきりさせる、「新しい内村鑑三」でしたね。
 第1回「迷いと慰め」では、実際接した弟子、志賀直哉や矢内原忠雄などの手になる、内村鑑三の紹介で、実に親しみやすい人だったことがわかります。不完全、至らなさのある内村が、そこにいます。
 第2回「現生と後世」は、内村の代表作『後世への最大遺物』が話題の中心。しかし、この本は今まで、「各分野の一流」の人の「バイブル」のように語られることが多かったと感じますが、鈴木先生は「失敗学の書」と位置付けます。「私はこんな失敗をしました。しかし○○でありたいと願って生きています」という本だというのです。その点、カナダ留学中の学生で、かつて不登校で苦戦した人も、『後世への・・』に復活の力を得ていることが紹介されているのが、慧眼です。そこに、目先の利益のためには、ウソとゴマカシをも辞さない、今の日本の主流とは別の視点がありますからね。
 第4回「真理と寛容」は、「真理は楕円形」という視点が実に実践的ですね。「真理が円」だと、それは「美しい」のですが、「自己中心」になりやすく、したがって、対話が閉じがちです。しかし、「真理は楕円形」となれば、その2つの中心(焦点)の間にやりとり、相互性、対話が生じますし、それが、他者、異質な存在、自分とは意見が異なる人との対話にも開かれる道があります。それが寛容の基として、きわめて肝要です。
 第6回「宇宙完成の祈り」は、原発事故のただ中にいるわれわれ日本人にとって、極めて重要なところです。足尾鉱毒のために、故郷を捨てて難民とならざるを得なかった谷中村の人々は、現在原発のために、故郷を失って、難民となっている150000人のひな形でしょう。この事態の改善には、明確なヴィジョンが必要なことが示されます。また、ポスト原発のエネルギーについて考えるとき、内村が
 「エネルギーは太陽の光線にも在ります、海の波濤にもあります、吹く風にもあります、噴火する火山にもあります、若し之を利用するを得ますれば是等は皆な悉く富源であります」
と述べているのにおどろかされますね、これは、まるでこれからの日本の歩みを90年前に預言しているかのようです。
 このように、本書によって、「ニュー内村」に必ず会えますよ。

 

 

 

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