27.06. 05 お ば さ ん H NO.817
妹尾河童作の「少年H」は本で読んでよし、映画で見てよしの秀作でしたが、わたしには恩人の「おばさん
H」がいました。 10歳(とお)で神童・15で天才・20歳(はたち)過ぎればただの人、という例(たとえ)
のようなひとでした。(らしい) でも、生活力というかバイタリテーはすごい人でした。
敗戦で老若男女とも打ちひしがれて茫然自失となっていた時代、女ひとりで米軍キャンプに行き、米兵から
禁制のタバコを買ってきて(ヤミ)で転売して生活費を稼いでいました。
キャンプには兵隊崩れやヤクザ者などが寄ってきて、おばさんに嫌がらせをしたそうですが、その時には片
言の英語も話せないのに、米兵に向かって「この男はかよわい女のわたしをイジめる」と訴えて保護され、難
を免れことなきを得ていました。 小金をためて「烏金(からすがね)貸」をして日銭を稼いでもいました。
挿絵画きの亭主を「頼りない男」と言って放り出す猛女でもありました。
人間は敗戦なんてパニックに陥ると、男よりも女の方が強いという見本のようなおばさんでした。
*烏金・・・その日暮らしの職人さんや小売業者に、朝にお金を貸して夕方に回収する金貸し業。
利息は1日1割です。