本と映像の森 234 大岡信さん著『百人一首』講談社文庫、1980年
百人一首については 本と映像の森 230 林直道さん著『百人一首の世界』青木書店、1986年2012年10月24日 05時25分16秒 | 本と映像の森 で取り上げました。
雨宮家でもぼくの小さい頃は、お正月になると、百人一首の「カルタ取り」ではなくて「坊主めくり」をよくしました。今でも、雨宮家には百人一首のカルタが2つもあります。
大岡信さんの本を推薦しているのではなくて、ちょうどぼくの部屋にあったので、紹介します。
地震と津波のことを調べていたら、百人一首のある歌が、津波のことを、それも具体的に詠んでいると書いてあったので、紹介します。
清原元輔さんの歌「契りきな かたみに 袖をしぼりつつ 末の松山 波越さじとは」
歌の意味は、あなたと堅い約束をしたのだから、もし私が心変わりをしたら、あの有名な「末の松山」を波が越えていくでしょう、ということ。
この「末の松山」は、この本でも、宮城県の多賀城の付近の有名な名所で「海辺に近いのに、けっして波をかぶらないという伝承があった」と大岡さんは書いています。
ところが、この歌の作者の清原元輔さんは、あの清少納言の父親で、905年に生まれ、990年に83才で亡くなりますから、多賀城の付近を大津波が襲った、あの「貞観の大地震」のことを聞いているはずです。
つまり「末の松山」を波が越えていった、リアルなニュースを作者が知っていたはず、ということで、この歌の深さも違ってくると思います。