雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

味を知っている

2017-10-29 00:14:31 | 素敵
鍔とアイヌ」のお話がかなり長くなったので、その間、
また新しいコナ・コーヒー(Kona Coffee)さんを開けていたのです(^^)
今回は親しい友人からもらって、ストックしておいた、
この「HALA TREE(ハラトゥリー)」さんの
「Estate Grown(エステイト・グロウン)」。
フランス人のご夫婦で営まれている農園で作られているのだそうで......



封を開け、
袋の中に鼻を突っ込んでクンクンと匂いを嗅いでみると......
他のコナコーヒーより「土の香り」がかなり強い感じ。
パッケージにある通り、
コナの中でもオーガニック度が高いというコトでしょうか。
コナ最大の特徴だと思っている「風の香り」より
大地の香り」の方が強い、という個性。
プリプリっと淹れてみると......



でけた!ヽ(´▽`)/
ちょっと驚くのがその酸味の強さ。
コナでこの酸味は意外。個性的。
南米マメ系の仕上がり。
ふーーむむむ.....フランス人さんはエキセントリック!?ですなぁ。
でも、酸味以外の全体はとても濃く、深い味わい。
その辺もコナっぽくないコナです。
でも後味が爽やかスッキリ!ってトコロはやっぱり!
安心のコナなのです。ええ。ええ。



きっと、
苦労を苦労とも思わない苦労を沢山して作られている
豆のハズなのでやんす。



つい最近ですが、
そんな愛してやまないコナ珈琲さんとピッタリ合う
「読み物」さんに出会ったので、
今宵はソレを以下に転載しておこうかと思います。
ソースは「文春オンライン」というHPのコラムページ。
タイトルは「犬の散歩」。
筆者は......出ったっ!?ポップバンド
SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)
のキーボーディスト、藤崎彩織さん。
このエッセイは、元々、出来る!大学教授マーケッター
Jさん」から教えてもらったものなのですが、
書き出しの一文からして、もう、素晴らしいのです。

この冒頭の一文はなかなか書けるものじゃないな、と。

感心の感服。

とても信頼できる人。

とにかくそういう感じ。

最近読んだモノの中では一番心に沁みました。

思うに、彼女だけでなく、

僕等は大抵こんな世界を生きていたりするでしょうか。

一般的には阿呆者と呼ばれるような世界。

ソコに巣食う妖魔も沢山、居るには居ますが。

妖魔の上前すらハネる人間も居るには居ますが。

だからこそ頑張るしかないのだ!と。

おいちいコーヒー飲んで!と。

もし、ご興味がわくようでしたら、

ちょっと長めですが、秋の夜長ですから。

ええ。ええ。(^^)



======================================
貧乏の味を知っている。

デビューする前、
私の所属するバンド「SEKAI NO OWARI」はとても貧乏だった。

どのくらい貧乏だったかと言うと、
ペットボトルの水を買っている友達のことを僻んで

「あいつは親の金で生活しているに違いない」

と、陰口を叩いてしまうほどの貧乏だった。

ミュージシャンになるには、お金がかかる。
楽器代、スタジオ代等々。
特に、ライブ出演代には
どんなミュージシャンも悩まされたことがあるのではないだろうか。

それに加えて、私たちは、ライブハウスを自分たちで作っていたのだ。
ステージを作るための木材代、柵を作るための鉄代、
照明器具や音響にかかる設備代など、
全て合わせると、数百万円の借金になった。

まだ二十歳になったばかりなのに、私は大学に通いながら
地道なアルバイトで何とか毎月のローンを払い続ける生活を強いられた。
学生にピアノを教えるアルバイトから、しゃぶしゃぶ屋の仲居さん、
居酒屋のキッチン、果ては薬の治験まで。

お金がもらえればどんなアルバイトでもよかった。
ローンに追い立てられるように、私は貧乏時代を走り抜けた。



いくつもアルバイトを掛け持つと、
自ずとお金に対する価値観が出来てきた。

例えば、成人式の飲み会の会費が三千円だと聞いた時。

友達には会いたかったが、三千円は私の時給三時間分だった。

飲み会に三千円を払ってしまうと、
ローンを払うためには三時間アルバイトを増やさなくてはいけなくなる。
アルバイトの時間を増やすと、
今度はバンドの練習をする時間が無くなってしまう。
身を削るようにしてアルバイトをしているのは、
バンドの為であって、友達とお酒を飲む為ではない。
私は泣く泣く友達に会いに行くのをやめて、
成人式の日もアルバイト先へと向かった。

バンドとアルバイト、それに大学生活も重なり、
不規則な生活が続いたせいで、肌が荒れてしまった時もそうだ。

母は私の頬に出来てしまった幾つものニキビを見るなり

「病院へ行きなさい!」

と悲鳴をあげた。
私だって、自分の頬に出来ているニキビが、
皮膚科に行かなくてはいけない位酷いことは分かっていた。

けれど、そんなお金はない。

「お金が無いから……」

間接的に金銭を無心するような私の声を聞いて、
母はため息をつきながら鞄から財布を取り出した。
そしてそこから五千円札を一枚抜いて

「これでちゃんと皮膚科に行くのよ」

と手渡してくれた。

私は久しぶりに見る五千円札に、手が震えた。

これでステージ用の木材が買える!

とっさに、そんなイメージが頭に浮かんでしまった。

私は一体、何を考えているのだろう。
母がせっかく娘の顔の為に出してくれた五千円なのだから、
木材などに使ってはいけない。
私の顔は木材以下ではないはずだ。
それに病院に行かずに、ニキビが治らないままでいれば、
そのうち母だって気づくはずだ。

私はこの五千円で皮膚科に行かなければいけない!

それでも、
私の頭の中からステージのイメージが消えることはなかった。

ステージに上がってメンバーが演奏している姿。
お客さんがこちらに向かって手を挙げている未来……。

五千円の匂いは、そんな映像を浮かび上がらせた。

私は結局、その足でホームセンターへ向かった。
そして、五千円を木材に変えてしまったのだった。

貧乏であるというのは、
常に取捨選択を迫られるということだ。

友達か音楽か。現在か未来か。

私は友達との酒の誘いを捨て、バンドの時間を取った。

ニキビを治すことを諦め、ライブハウスを作った。

何かを捨てることは、
同時に何が大切なのかをはっきりとさせることだった。
それは、大切なものを、大切にすることが出来るということだった。



「大学の頃、同じサークルに毎日毎日、
牛丼ばかり食べてる先輩がいたんです。
彼は本当に牛丼が大好きだったから、なにもかも、
世界のすべてを牛丼に置きかえて考えるのがつねでした。
当時は牛丼が一杯四百円くらいだったかな。
たとえば映画の料金が千六百円って、
高いのか安いのか私にはよくわからなかったけど、
その先輩にとってはものすごくはっきりしていたんです。
千六百円あれば牛丼を四杯食べられる、だからそれは高い、って。
よっぽどおもしろい映画でなきゃ牛丼四杯分の価値はない、って。
みんなで買物に行って、Tシャツ一枚買おうか迷ったときにも、
彼の基準となるのはやっぱり牛丼でした。
三千円のTシャツを買うお金があったら、牛丼が七杯食べられる。
七杯分の牛丼を犠牲にするだけの価値がそのTシャツにあるのかどうかって、
いつもものすごく真剣に、牛丼を通して彼は世界を捉えていたんです」
(森絵都「犬の散歩」/『風に舞いあがるビニールシート』より)



私にとっての「牛丼」は、
間違いなく仲間達と作ったライブハウスだった。

「ライブハウス」という基準が出来たことで、
様々な迷いから解放された。

友達、飲み会、サークル、恋人、旅行、エステ、お洒落......
いくつもの誘惑を断ることに、躊躇がなくなっていく。

三千円あれば、五千円あれば。

その先に続く言葉は、常にライブハウス作りへと繋がっていった。
それはとても充実した日々だった。
いっときたりとも無駄な時間がなくなり、
私の生活の中心はライブハウスを軸として回っていったのだった。

揺るぐことはないだろうと思っていたその軸がぶれたのは、
皮肉にもデビューがきっかけだ。

バンドが軌道に乗るようになると、
次第にお金が入ってくるようになったのだ。

終電を逃せばタクシーに乗れるし、
年下のスタッフにご飯をご馳走することだって出来る。

大富豪になった訳では無いが、
不摂生のせいで肌が荒れて皮膚科に行っても、
楽器代を払えなくなるということはない。

取捨選択をする必要がなくなったのだ。

今までどちらかしか取れなかったものを、
どちらも取れるようになった。

けれどどこかで、
私の心にあった「牛丼」は無くなってしまったのだった。

三千円の価値は?

五千円の価値は?

三千円あれば、五千円あれば出来ること、
という価値基準は、輝きを失ってしまった。

今五千円を貰っても、ステージが作れるとは思わないだろう。
今五千円札の質感を手にしても、
ステージの上でメンバーが演奏しているところが浮かんできたりはしないだろう。

私は自分の財布を覗いて、今の自分の基準を探した。
でもそれは、なかなか思いつかないのだった。



そんな時に、インターネットを見ているとふと飛び込んできた広告に、
私の目は釘付けになった。

チャイルド・ファンド・ジャパン。

大きな黒目の女の子と目があった。
こちらに向かって、可愛らしく微笑んでいる。彼女の隣には大きく

「あなたが開く子供の未来」

と書いてあった。インターネットを通して、
恵まれない子供たちに経済的な援助ができるシステムらしい。
私はあまりのタイミングの良さに運命的なものを感じて、
サイトをクリックした。

調べてみると、どうやら、月々四千円で「里親」になれるという。

サイトを見ながら何故か胸がどきどきと高鳴って

「これだ」

と自分に正解を告げているような気がした。

私は早速チャイルド・ファンド・ジャパンに登録してみることにした。
月々二人の支援をしたいことを連絡すると

「ネパールの大地震にあって、
学校に通うことの出来ない子供たちの支援はどうでしょうか」

との返答。

ネパールのことは何も知らなかったが、
調べてみるととても大きな地震を受けて、
多くの子供達が日常の生活を送れていないことが分かった。

何故だかこの縁が、
自分の人生にとても重要な役割をするような気がしてならなかった。

支援活動には、常に賛否がつきまとってしまう。
でも、私にはこの縁を無下にする理由が見つからなかった。
無下にする理由がないからやってみる。
理由はそれで充分に思えた。

私はすぐに八千円を支払って、ネパールの二人の子供の「里親」になった。
すると急に、自分の中にすっと軸が通るような気がしたのだ。

八千円あれば、二人の子供たちを学校に行かせることが出来る。

八千円あれば、二人の子供たちの「里親」になれる。

八千円あれば。

八千円は、次第に私の価値の基準となっていった。



――それまでぐらぐらしていた毎日が、なんだか急に、なんていうか、
信頼に足るものに思えてきたんです。
世界を……っていうか、自分を、
少しだけ信じられるようになったっていうか――(「犬の散歩」より)



「里親」になった半年後、
ネパールの子供たちから花の絵が描かれた手紙が届いた。
更に一年後、子供たちから好きな先生の名前が書かれた手紙が届いた。

手紙が増えるにつれて、次第に成長していく彼らの姿を、
大人になるまで見届けたいと思うようになった。

それは、心の中の「牛丼」が、
いつも幸せの味を教えてくれるからなのだ。

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6 コメント

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出雲さんへ。 (amenouzmet)
2017-11-04 19:29:08
コナ100%のビーンズは、本来的にもトテモ貴重なものなのですが、
加えて近年は、ハワイ島でも天候不順が続いていて、
最早アメリカの国内消費で全て終わってしまう様な状況とのことです。
日本で輸入してカフェなどで出すとなると、つい先日、スターバックスでは、
ショートサイズのブレンドで¥860!というくらい商売にならない状況です。
今、もし、コナ・コーヒーと銘打っていて、値段が一杯800円以下の場合、
ホボ間違いなくコナ50%以下の豆の可能性が高いです。
詳しくは検索ウインドウで「コナコーヒー」と検索してみてください。
詳しい過去記事が沢山出てくると思います。
椿大神社は「猿田彦コーヒー」で検索してみてください。
全4話ぐらいで書かれていると思います(^^)
返信する
猿田彦様 (出雲)
2017-11-04 17:25:59
私もコナが珈琲の中では一番好きです。最近コナ100パーセントを出してくれるお店が減ったように思うのは気のせいでしょうか…最新の記事へのコメントじゃなくて申し訳ありません。来週ですが、ひょんなことから仕事で名古屋に行く事になりました。一泊して椿大神社にお参りしようかと思っています。以前に行って、境内の空気の清々しさ、荘厳な雰囲気や懐の深さや大きさのようなものを感じて感激した思い出があって、またお参りしてこようと思います。こちらのブログでも度々御名前が出る猿田彦様をお祀りしてる神社です。偶然のことですが、ご縁を頂いているようで有難い気持ちになりました。
返信する
こつぶmikoさんへ。 (amenouzmet)
2017-10-31 00:22:49
ピチピチ......という部分に惹かれますな。ええ。ええ。( ̄ー ̄)
返信する
貧乏な味を思いだします (こつぶmiko)
2017-10-30 21:58:45
私がまだまだピチピチの新人時代、安月給の中、仕事の道具を揃える為などにお金をまわし、給料日前は食事も取れずお腹がすいて眠れない時は飴を食べて過ごしたりしてました。
先日も少し話しましたが、今となっては良い思い出話です。
そんな時代を思い出させてくれて
ありがとうございます。
キンカンのど飴だったなーあの味(´ー`)
返信する
プリリンねーさんへ。 (amenouzmet)
2017-10-29 08:32:22
そうですね(*´-`)
返信する
ツカヘイ (プリリンねーさん)
2017-10-29 08:28:07
座敷わらしのツカヘイが、昨年「セカオワの歌が好き」と、言っていたのは、歌の奥にあった精神性のことだったのかと、記事を読んで感じました。

ツカヘイは、そこらへんの座敷わらしとは違うようですね。(笑)
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