追加です
先程も書きましたが、コメントの骨髄増殖性疾患について…というところから今度は本態性血小板血症に関して説明です。
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○○さんは、このたび血液のうちの血小板の数値が高くなっているということで、当診療科を紹介受診されました。
この2週間で血液検査、骨髄の検査などを行ってきました。
診断が付きましたのでご説明いたしますと骨髄増殖性疾患と言われているもののひとつである「本態性血小板血症」という疾患です。
骨髄増殖性疾患は骨髄という血液を作るところで、血液をいっぱい作ってしまい人の体に不利益を起こす病気の総称です。この病気の中には先ほども述べた「真性多血症」のほかにも「慢性骨髄性白血病」「本態性血小板血症」「特発性骨髄線維症」という疾患があります。本当にまれなものも含めるともう少しありますが、これが主な疾患です。どの疾患もすべての血液の成分を多く作るのですが、主に作るものが異なってきます。
本態性血小板血症は血小板という「止血」を担当する細胞のがんです。ほかにも真性多血症というものは赤血球のがん、慢性骨髄性白血病は主に白血球が増えるタイプを言います。
この血小板というものが無制限に作られる病気ですが、他の血液の数値も増えることがあります。○○さんの血液の数値は白血球が13000/μl、Hbは13.5g/dlと白血球が若干増加しています。しかし、この中に白血病細胞のような異常細胞は認めていません。血小板数は85万/μlと上昇していました。
その原因を確認するために骨髄穿刺、骨髄生検を行いました。どちらの検査でも巨核球という「血小板」を作る細胞が増えておりました。しかし、他の骨髄増殖性疾患を示唆する所見(線維化など)は認めませんでした。
JAK2という遺伝子の異常が50%の患者さんに診られるとされておりますが、○○さんは認めませんでした。
血小板を増やすほかの因子としては感染症などの炎症、悪性腫瘍、貧血などによる増殖刺激があるというものがありますが、感染を示唆する所見はなく、貧血もありません。CRPという炎症を反映する数値も陰性でした。
以上より「本態性血小板血症」と診断しました。
この病気は血小板が増えることによって「血栓症」を引き起こします。個人的に2回ほど経験がありますが、150万を超えると出血を起こしやすくなります。それ故に当初はアスピリンという血小板のはたらきを抑える薬で血栓症の予防を、数が増え続けると血栓症をリスクも上昇し、さらに出血も起きやすくなるので100万を超えてきたら、飲み薬の抗癌剤を使用して数を減らします。
基本的に完治させるためには骨髄移植以外にはありませんが、この疾患による死亡率は低く、骨髄線維症や急性白血病へ移行することも少ないので、一般にはそのような治療は行いません。先ほど述べたような「共存」を目指した治療を行っていきます。
脳梗塞や出血などを起こさないようにうまく数値をコントロールしながらやっていきましょう。
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こんな感じですかね
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
去年、本態性血小板血症と診断されました。アグリリン服用で、血小板も150万から80万に順調に下がっています。遺伝子検査でJAK2遺伝子とCALR遺伝子の両方に変異がありました。1つだけの変異と2つ変異があると何か違うのでしょうか?
もし、よろしければ教えて下さい。
おはようございます。コメントありがとうございます。
本態性血小板血症の診断で治療中で、ある程度血小板数のコントロールができているということでよろしいでしょうか。
ご質問のJAK2遺伝子とCALR遺伝子ですが、一般にはAJK2遺伝子変異よりCALR遺伝子変異の方が血栓症リスクが低く、予後が良いという特徴があります。
質問をいただき、今調べました。2つの変異がある場合はかなり少ないようです。夏樹さんのように2つの変異を持つ患者さんの報告例は少しあるようですが、それに意味を持たせるような解析ができていないというのが実情かと思います。
もう少し論文を調べてみようと思いますが、大学病院などでないため論文の中身を確認できるものが限られており、あまりきちんとお答えできないかもしれません。
2つの変異のある意義というのはまだわかりませんが、CALR変異の方がJAK2より優勢ならば予後は良さそうな気がします。
また、コメントいただければと存じます
早速お返事くださりありがとうございます。
わざわざ調べていただきありがとうございました
どちらの遺伝子変異が優勢かで違って来るかもしれないのですね。次回の診察のときに主治医の先生に聞いてみようと思います。また、何かわかりましたら教えて下さい。
血小板は、順調に下がってきています。もう少し数値を下げたいとのことで、次回の診察の時に血小板の数値をみて薬を増量するかを決めるそうです。
暑いのでお身体に気を付けてください。
こんばんは、コメントありがとうございます。
こちらこそ、色々学ぶ機会になります。ありがとうございます。治療も大変だと思いますが、主治医の先生と相談して頑張ってください。
また、コメントいただければと存じます