・・・・・・あわぞうの覗き穴・・・・・・

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御の字

2011年08月05日 | つぶやきの壺焼

丁寧に話す言葉には慣用句があって、自分のことではないかと思うようなところにも「お」や「ご」をつけることがある。

相手が目上の場合、「相談があるんですが…」と切り出すよりも、「ご相談があるんですが…」と言うほうが丁寧に聞こえる。「相談があるんですが…」では、乗ってくれて当りまえのように聞こえそうなのである。

こういう「お」や「ご」のつけ方は、よほど珍妙でない限り問題にせず、暗黙の了解で済まされている。

敬語、尊敬語、謙譲語、丁寧語や挨拶言葉は、理屈を考えだすときりがない。
なぜこれほどまでに多分類が必要なのかもわからない。

「これぐらいでオンの字だろう」というあいまい表現がある。「一定の」というあの意味の分からない言葉の親戚だろう。
そんなにしてやることはない、という限界と、これほどまでにという恩着せの意味が「御」の一字に含まれる。
恩を売る方には、多少の未練とともにであるにせよ、いくばくかの充実感が得られるが、受ける方には何の感慨も与えない。
授受の過程で、御の一字がことの有難みを消し去り、無形にしてしまうのだ。

ご、御は、無形にする力もあれば、変容させる力もある。

利益/御利益、これは「ごりやく」という実体のないことがらを表す無形化の一例である。ついでに本体の読み方も変わり、「ごりやく」という熟語になる。この御は不思議なことにかなで書かないらしい。

立派/ご立派、自慢/ご自慢、この「ご」では皮肉の意が付加される。

友人/ご友人様、前後に文字が加わると、用語としての適用範囲が、サービス業界用語に縮小される。

ご、御の一字の力は、一生忘れさせないほどに強力なのである。



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