商からペントハウスを取り去ると、下の躯体に打ち込んだアンカーまでなくなった形になる、面白い異体字があります。
それぞれがしんにょうとの組み合わせで異体字関係になるというものです。
見れば簡単な文字も、言い表すにはずいぶん回りくどいことになりますが、この字は「まわる」ではなく「とおい」「はるか」です。
回の底を抜くと、トンネルの先を見ている感じになるのでした。
迸は、この字よりもう少しややこしい形の「はしる」の異体字です。
「ほとばしる」と読みます。
元の文字の構造は、ああ書いてこう書いてと説明しても通じにくい、これと見てそれかと認識するより仕方のない字です。
針の先からピュッと出るくらいでは、いくら勢いがよくても迸るとは言えません。
迸る感じをつかむにはと、写真も大判になりました。
外としんにょうで逃の異体字になります。
国外逃亡には、異体字のほうが合っているようです。
家族を置いてにげるときば、ばらばらの逃が合いそうです。
病院ににげ込むのは、どちらの字も当てはまりません。
と言ってみても、にげているのではないとの言い訳には多分使えないでしょう。
且としんにょうで徂の異体字になります。
且は、「なおかつ」という言葉に使われ、加え重ねる意味があります。
且がぎょうにんべんあるいはしんにょうと組み合わされると、一歩一歩あゆみを重ねていくという意味をもちます。
父親が医師として仕えていた綱吉の不興を買って、上総本納へ家族ぐるみ、青年時代に流されたことがあります。
まさかその行ったり来たりを号にしたとも思えませんが。
正としんにょうで征服の征の異体字になります。
「いく」「うつ」「もとめる」「とる」という、どこか威張りかえった感じの字です。
正しいことも、ぎょうにんべんやしんにょうで勢いがつくと、やっつけや、とりたてになります。
とかく政治は征治に走りがちですが、あまりありがたいことではありません。
水平線の 向こうには
自分の棲み家に地続きの 半島が見え
画面に入らなかった 左側には
対岸の 半島があります
弥のつくりの部分としんにょうを組み合わせると、むやみに画数の多い「ちかい」という字の異体字になります。
漢音は「ジ」です。
もとの字はしんにょうがなくても「ちかい」「ジ」で、この文字は、「なんじ」「しかり」「それ」「のみ」などといろいろな使われかたがあり、引く手あまたです。
しんにょうのない字が、しんにょうのついた字にあてられることもあるそうです。
しんにょうのない「爾」は、色糸を編んだ吊し飾りの象形という説や、はんこの象形という説がありますが、はんこの象形ならば、べたべたした感じもなるほどとうなずけます。
はんこはだいじなものでもあり罪深いものでもあります。
はんこが押してあるというだけで、署名が偽造された初めて見る保証書でも、何億円もの連帯保証人にされてしまう判決が下ることもあるそうです、くわばらくわばら。
縦走するには どちら側から
取りついたほうがよさそうかと
考えてみたくなるような 尾根が見えます
径のつくりの部分としんにょうを組み合わせると、まっすぐに進む「みち」をあらわし「ケイ」と音読みする文字の異体字になります。
この字のしんにょうを除いた部分は、台の上にたて糸をまっすぐ張った姿をあらわしているそうです。
段通を織るときには、垂直に糸を張りますから、その状態は、たていとという呼び名にぴったりです。
これならば、文字の成り立ちの経緯も、まっすぐに理解できるような気がいたします。