会社の仕事で行っていた研究が実って、すばらしい製品ができた。
得られた利益はたかだか1千万円程度だったとう話もある。
研究の従事者は一躍有名になり、博士号も取得、国内でも種々の賞を授与された。
その後会社を退き、アメリカで大学教授に就任。
研究の成果は自分のものだからと、もと所属していた会社を相手に、200億円よこせと裁判を起こした。
はじめの裁判所命令は200億円だったが、会社が控訴して8.4億円で和解。
この発明はノーベル賞級のもので、独占利益の半額604億円が発明への対価という勘定書きをこしらえて、残り404億円の追加請求という欲ぼけ話も出ていた。
下司のかんぐりになるが、弁護士の数がむやみに多い国に行って翌年のことだから、成功報酬をがっぽり稼ごうという、お商売のネタにされたのではないかとも思う。
研究者の地位向上という大義名分らしいことを言ってみせたが、実際は逆効果で、入社する研究者は、発明権利を会社帰属にする個別契約を迫られ、褒賞もゼロでよいことにさせられてしまうところもあるそうだ。
そのうえ、昇進、賞与もなしというおまけまで付くとあっては、研究者の意欲も減退するは当然で、すべてあの裁判沙汰は、社会にはマイナスの効果しかもたらさなかったことになる。
発明研究もよいが、人間としてのほどほどの研究も、少しは心がけておいたほうがよさそうである。
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石井 正 | |
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