覗きながら待つ。
誰も現れない。
待てば来ず 待たずば急に現れる
精一杯派手にしたつもりだが、こんな姿で目にとめてもらえるだろうか。
思い出した。電車の前に座ったおばさん。
あるかなしかの首に、ありったけの飾りを下げていた。
ポーチからイヤリングを取出し、手探りでつける。
福耳でよかった。
貧耳では、耳たぶを探すのも容易ではないから。
覗きながら待つ。
誰も現れない。
待てば来ず 待たずば急に現れる
精一杯派手にしたつもりだが、こんな姿で目にとめてもらえるだろうか。
思い出した。電車の前に座ったおばさん。
あるかなしかの首に、ありったけの飾りを下げていた。
ポーチからイヤリングを取出し、手探りでつける。
福耳でよかった。
貧耳では、耳たぶを探すのも容易ではないから。
いじけたように咲いても、花は花。
みすぼらしく見えても、人は人。
しっかり咲いてもらわなくては困る花もあり、しっかりしていてもらわなくては困る人もいる。
道端と言ったほうがよいのか、畑の隅と言ったほうがよいのか、物置小屋のようだが、小屋とも言えないような箱状物体がある。
「かんじる」と書いて去った若者は、何を感じていたのだろうか。
何を感じたいと思ったのだろうか。
「自然の猛威に逆らうな」
台風の直後、水害に遭った現場に応援に出るとき、大課長は「がんばってこい」とは言わずに、こう声をかけてくれた。
退職後も何度かお会いしたが、いまはもう石の下。
胸まで水につかって土嚢を運んだそのあとでも、着替えなければ電車に乗れないなどと、あのころは気にもかけなかった。
花びらは旅人。
旅人は、ちょっとした凹みにはまると、動きたくなくなることがある。
探していたのではないのに、ふと気に入った凹みが見つかったとき、その旅は最上のものになるだろう。
本道を外れた行為に及ぶと、まずろくなことはない。
飲食店の店長が、従業員への給料が支払えず、金を工面しようと、強盗被害を受けたふりをしたり、住所不定無職37歳の男が、母親が被災したとウソをついて現金をだまし取ったり、みな外道の仕業だ。
石段が二つに分かれたところがある。上に上にと、幅の広い急なほうを駆け上がるとひとの家の庭だったりする。
写真になってから見ていたら、箱根の下り坂にあった緊急避難所を思い出した。
あそこは余程のもの好きでないと上がってみようとは思わないが。
一方飲食の世界では、ラムネにも、たこ焼風、キムチ風、カレー風、ラー油風のというのがあって、本道から外れているようでなかなかのものらしい。
本道/外道の区別は、商売がからんでくると、正邪の区別とは一致しなくなるからやっかいである。
重なり合って、やがて土を肥やすものがある。
それは、そのつもりで積まれたもの。
重なり合って、果ては何を肥やすかわからないものもある。
人びとの生活に組み込まれ、なくてはならないものだったのに。
捨てるつもりで放り出されたものから、元の持主に同情の気持ちは起きない。
捨てるつもりなどさらさらなかった、津波の跡に残されたものを見て起きる気持ちは、同情などという簡単なことばでは言い尽くせない。
花が咲くと、回りに誰もいないのが目立つ。
花が散って来年の春までは、孤独であることに気付く人は少ない。
日本の桜は、もともとはこの山桜。
わいわい集まって咲く花ではなかったと聞く。