「自分の国のことを悪くしか書かない新聞がありますね」
「その社では、悪く言うことが、ものごとへの批判だと信じ切っている、アホなデスクが揃っているからじゃよ」
「アタマのツルツルなオジサンたちですね」
「そう、みなケナシ病に罹ってるんじゃ」
「悪事は生活の貧しさからとよく言われますが」
「豊かになれば、みなまっとうになると考えるのは、おめでたい誤解じゃよ」
「大金持ちでバカなことをやってる人をよく見かけます」
「よその国に出かけて、大金持ちの振りをして偉ぶってるのもいるしなぁ」
「友好ってのはだいじなことですよね」
「そりゃそうじゃが、好かれたい一心でべたべたしすぎると、ときにはひどい目にあうぞ」
「国益もだいじですから」
「うむ、国益とかなんとか言いながら、自分の利益を囲い込んでしまう友好利権という、おかしなのもある。友好というのは外交手段なんじゃから、それを看板にしてしまうと、外国との友好をことさらに求めるようになって、これも見当違いになるがの」
「いつ見ても、閉店セールの看板をかかげている店がありますね」
「実際に店をやめてしまうのは半分より少ないらしいのう」
「消費者は"今"に弱いんですね」
「今でなければどうしてもだめかと考える人が増えると、商売がしにくくなるだろうなあ」
「人々があまりに義理がたい国では、伝染病が広がりやすいと聞きました」
「なぜじゃ」
「伝染病であろうが何であろうが、見舞いに行かないと村八分同然の目にあうのだそうです」
「お隣さんじゃな、そこの人は自国で伝染病が蔓延中なのに、外国の要人に平気で会いに行くそうじゃからのう」
赤い階段を降りたところは 崖の半ば
黒い扉があって そのなかは多分別世界
崖の下には 上がり降りできるのか
遠目にはわからないところもある
向きを変えれば トンネルの向こうに
また別の世界がありそうな
複雑で奇妙な 街の一角
「そう言ってたじゃないの、という詰め寄り方は、事実を明らかにすることへの効き目としてはどうなんでしょう」
「相手によりけりじゃ。いま言っていることでも、それが物証にはならないからのう。言ったことがはっきりしていても、それが事実の証明にはならないじゃろう」