土曜日の夕方、入梅したばかりの新宿のピカデリーに
「プリンセス トヨトミ」をみに行ってきました。
初日の席はほぼ満席、20代カップルが大半に見えました。
原作の虚構が壮大なだけに、あれを映像で見てみたいという期待が高まります。
関西の知人からは、私もあのシーンの端っこに映っている、という話も聞いていました。
「大阪国」が動き、オオサカが停止する。その大法螺。
大阪府庁と大阪城のまわりは見事に大阪のおっさんたちで埋め尽くされていました。
どれだけ駆り出したのだろうと口をあんぐりあけるほど、大勢に見えます。
ああ、この筆致。
だけど・・・という逆説の言葉をいつ書こうかと我慢しなければならない出来の作品でした。
たった数行で、褒め言葉よりも不満が先立つのはつらい。
人が集まっても、それが展開するエネルギーがない。音もない。
空き缶がいくつかほうり投げられ、誰とも知れぬ凶弾が人を撃つ。
無責任な投げ出しで、ストーリに設定がからみあわない。もう映像とはちがうところで
歯車が食い違う。
プリンセスはどうした?
あれだけ魅力的な沢木ルカさん。薬師丸ひろ子さんや、内田由紀さんがデビューした
ころを思い出した。彼女がスクリーンに出てくるつどに、輝く。
でも、彼女は何もさせてもらえなかった。やくざの息子にとび蹴りはくらわしたが、
大阪国を動かした、妙なタクシー事件はまったく行き当たりばったりで、
しーんとしての強さは無かった。
中井貴一はずるいほどにかっこいい。すでに2面性が約束されている設定で、
それを期待通りに、ぬけた父ちゃんと、総理大臣のリーダーシップを演じきる。
彼の顔が二つになるから、そのストーリーは打ち込まれる。
しかし、総理としての戦いはあまりにあっけない。彼が勝利を勝ち取ったようには
まったく感じられない。
堤 真一もよい役どころをもらっている。
強面の会計検査院。父とのエピソードは、大阪国のあり方と深く連携し、ストーリーに
奥行きを与えている。その彼にしろ、秘密に迫り、城の扉を開けるにいたる
賢さが描かれることは無い。
そう、つまり、この映画はばらばらなパーツはそれぞれに色を放ち、話を持ちならが、
それを纏め上げる力に欠けているのだ。
大きな流れが無いのだ。
とはいえ。
今日は、沢木ルカさんを脳裏に刻んだだけでも、1800円は惜しくない気持ちくらいには
なっているので、台風が迫って雨が一日振り続けたなかでは、とてもよい時間をすごしました。