国立競技場で走れる喜びは、毎年のことながら東京マスターズの誉れであります。
小学生の時、阪神甲子園球場でリレーを走ることができた西宮市の小学生の役得と同じ範疇のことで、
いろいろなところで自慢話にできる話題の一つです。
そんなこと、興味がない人が多いのでしょうが、自分の気分高揚には欠かせない経験なのでしょう。
さて、今日の国立競技場は曇天。厚い雲はどっしりと動かないので、
汗もかかなければ、風も弱いので絶好のコンディションと申せましょう。
しかも9時50分にやり投げで、10時50分に走り幅跳びと、私にとっては実に効率的な配分です。
8時に家を自転車で出発して8時15分に到着、受付をしてスタンドの庇下に席を決めて、
8時30分にはアップを始めることができました。
ヤリのコールまでは40分、スタンド周りをJOGして体を温め、昨日のリレー練習で痛みが増したアキレス腱を
ゆっくり伸ばして血を通わせて、ひっつれが無くなったところで2本×150mの流しを入れました。
腰を高い位置に保って走るくらいの支えはアキレス腱もやってくれそうです。
では、と今度は一階にあるタータンの練習場に移ってスパイクをはいて、
軽く100mダッシュを2本。スピードも出せそうなことを確かめてからコールに向かいました。
M45のヤリでは、マスターズ同期生のT橋さんとこんにちは。理論派で技術に詳しい彼に、助走の時の骨盤の向きについて
教わります。助走してヤリをテークバックするときでも、骨盤は前を向けておいて、上半身だけひねる、そして左足を踏みだし
重心をうつせば、絞ったバネが戻るようにヤリを持った上半身が前に向かってくるというわけ。
はい、やってみると確かにヤリを引きつけてくるタイミングがつかみやすくなりました。
ありがとう、T橋さん、と感謝をしたやり投げは2投目の記録が最高で32m36㎝。
9人中6位ということで、ありがたく入賞の賞状をいただきました。
専門外種目で表彰してもらうと、なんか努力賞のような喜びがあります。
やり投げが終わるころには、ちょうど幅跳びのコールも終わるので、私は直接幅跳びのピットへ移動します。
25人はいるでしょうか、いつもながらみんな強そうに見えます。
でも今回の私は、違うはず。
岡山全国大会での失敗を受けて、踏み切りと空中姿勢のトレーニングを繰り返しました。
遠くへ、そのためには高く。
ボルトよろしく、両腕を斜め45度上に掲げて視線も高くするポーズを、スタンドの彼女に向かって捧げます。
助走練習も調子よく、2本とも踏み切り板をジャストで捉えていると審判に助言を受けましたから。
さあ、競技開始、楽しみです。
13番目にたった助走路。
助走は最初の7歩でトップスピードに持ってこれるくらいのダッシュで・・・これはスタンドまで来てくれたSコーチの指示。
集中力が沸いてきます。
中盤からは走路を90度に押すような、地面からの反力を最大に生かす走り方。
終盤はもう足が板に乗ると信じて、決して下を向くことなく、視線を高く掲げて空中へ飛び出すために踏み切るのです。
頭にそれだけ描いて、助走開始。
第一マークも第二マークもジャストで通過。
バン!大きく板も音を上げました。
高く上がります。あ、しかし反るのが遅れて、上昇した体の上部だけが前に向いてきます。
合わせて足が下を向いて・・・すると前につんのめってしまって、着地と同時に前へつんのめってしまいました。
足を遠くに投げ出す姿勢が作れませんでした。
でも滞空時間は長かった・・・え、ファール。
今日は踏み切りいたの先端に粘土が塗ってあり、シビアなところでも痕跡が分かるようにしてあるため、
厳しい判定が出るようです。
1㎝、それとも0.5㎝といったオーバー。今日も踏み切り病か・・・
ちょっとブルーになりかけたら、すぐにスタンドから「惜しい」の声援。
見知らぬベテランが一声かけてくれると、すぐに彼女とSコーチが
満面の笑みでこちらを見てくれています。
「いいジャンプ。助走はスピードに乗っているし、踏み切りもいけているから高く上がってる」
嬉しいです、赤旗で記録無しのあとにこういってもらえると、次こそうまくいきそうな気がしてきますから。
ありがたいありがたい。
自分も落ち込む場合では無いことを、気が滅入ったら競技にいい影響など無いことを気づきます。
次の試技まで20分近く待って、さあ2本目。
こんども踏み切り板は大きくなり、1回目以上に体は浮きました。
意識して遠くを見て、体を反っていったので、先ほどのような体の前回転もでてきません。
足を前へ出して着地、結構いいところまで跳んでいきました。
でもこのとき、自分でも気づいてました。
踏み切りのバン!という音に、ジャリッといいう感覚が忍び込んできたことを。
先ほど以上に足が踏み切り板を越して、粘土を深く削ったようです。
もちろん赤旗。
これは悔しいジャンプでした。
助走の流れがスムーズで、踏み切り板も怖くなく、スピードが最後まで落ちませんでした。
調子が悪いときは、踏み切り板が近づいてくると怖いし、見えないしで、スピードを落としてしますのです。
踏み切り2歩前で少しかがみを入れて、踏み切り右足を踵から突き刺すような姿勢にもっていくこともできました。
つまり、オーバーした指先以外は、今の自分にできる最高のパフォーマンスだったのですから。
逆に言えば、走り幅跳びの醍醐味を味わうと同時に、壁の高い一番の困難にぶつかってしまった感じもします。
この2本目が終わったときも、スタンドの親愛なる二人は、次こそ大丈夫、集中集中。
すごくいい調子だ!と私のエンジンにエネルギーをどんどん補給してくれました。
それに応えなければ・・・3本目こそは・・・
力みというより、少し堅さが入ったのか、はたまた2本の強い踏み切りで筋力を失ったのか。
3本目は、踏み切り前に自分で「届かない、踏み切り板に」と分かってしまうジャンプでした。
板ではなく、タータンを蹴った足は反力も少なく、ゆっくりと上へ。
バランスを崩して、また状態がふらついて着地はつんのめってしまったのです。
5m31㎝、向かい風0,2m。
決勝のないこの大会では、これが記録となりました。
M45クラスで12人中3位。
ありがたいことに銅メダルを頂いたので、気分は少し緩みました。
いつものことながら、各競技の運営を支えてくれた東京マスターズの審判員の皆さんに感謝。
一緒に競技した仲間たちに感謝。
そして盛り上げてくれた彼女とSコーチにはもてる限りのあたたかい心をお返ししたいと思います。
次は結果もつけてね。
11月18日(日)駒沢競技場での第50回渋谷区民陸上競技大会で、今期最後の幅跳びに参加します。