9月22日、朝鮮半島西側の黄海上で漂流中だった韓国海洋水産部の男性が、北朝鮮軍によって射殺され、遺体が焼却されるという事件が起きました。韓国は北朝鮮を強く非難。それに対し、北朝鮮は金正恩による謝罪の通知文を送ってきました。
韓国内では、北朝鮮の「蛮行」とともに、韓国が状況を知りながら救助しなかった韓国軍に対しても、疑問や批判の声が上がっています。
事件の経緯について、韓国側と北朝鮮側では言い分が違っており、真相は藪の中です。
韓国は、この男性が自らの意思で「北越」(北朝鮮入国)したとみています。
9月29日の聯合ニュースに、こうあります。(韓国語版リンク)
해경은 A씨가 구명조끼를 입고 있었던 점을 고려할 때 어업지도선에서 단순히 실족했거나 극단적인 선택을 시도했을 가능성은 매우 낮은 것으로 판단했다.
これを、漢字語を直訳して翻訳すると、
海警は、Aさんが救命チョッキを着ていた点を考慮すると、漁業指導船から単純に失足したり、極端的な選択を試図した可能性は非常に低いものと判断した。
この部分、聯合ニュースの日本語版では次にように訳されています。
海洋警察庁は、男性がライフジャケットを着ていたため、漁業指導船から足を滑らせて海に落ちた、あるいは自殺を図った可能性は非常に低いと判断した。(同日本語版リンク)
「失足した」は、「足を滑らせて海に落ちた」、「極端的な選択を試図した」は、「自殺を図った」と訳されています。
このうち、「失足」は、日本では使われない、韓国語独特の漢字語です。
「極端的選択」もまた、韓国語独特の表現で、自殺の婉曲語にあたります。
7月に、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長がセクハラ疑惑をかけられて自殺した時も、「極端的選択」という言葉が盛んに使われ、日本語版でもほぼそのまま「極端な選択」と訳されていました。
中央日報7月11日社説(リンク)
【社説】死は気の毒だが、真実を伏せるべきでない…ソウル市長の極端な選択
韓国語にも自殺(자살)という言葉があるのですが、なぜこのような言い換えを行うかについて、ナムウィキに次のような説明がありました(リンク)。
メディアでは、極端的選択という醇化語を使って報道する場合が多い。特に見出しでこのような用語を使うが、これは自殺についての報道で、記事の見出しに「自殺」という言葉を使わないように勧める自殺報道勧告基準があり、メディアで自殺という言葉を使うと自殺の衝動を引き起こすという論理によるものだ。したがって、メディアで「極端的選択」という表現が出てきたら、ほとんどの場合、遠回しに自殺を指しているとみてよい。
日本でも、「強姦」のことを、報道では「暴行」とか「乱暴」などに言い換えることがあります。でも、「自殺」についての婉曲表現はありません。
韓国が、自殺という言葉について神経質になり、「極端な選択」などという婉曲表現を勧める背景には、近年の自殺者の急増が挙げられます。
過去25年間の、人口10万人当たりの自殺者の推移は以下の通り。
日本 韓国
1995年 17.9人 10.8人
2000年 25.2人 13.6人
2005年 25.5人 24.7人
2010年 24.7人 31.2人
2015年 18.9人 26.5人
2019年 16.0人 26.9人
2005年以前は日本のほうが単位人口当たりの自殺者が多かったものが、最近では韓国が上回り、OECD加盟国中1位になっています。
「極端な選択」という言い換え語の推奨は、増加傾向にある自殺率をなんとか引き下げようという韓国の、言語政策面からの対策なのでしょう。
韓国内では、北朝鮮の「蛮行」とともに、韓国が状況を知りながら救助しなかった韓国軍に対しても、疑問や批判の声が上がっています。
事件の経緯について、韓国側と北朝鮮側では言い分が違っており、真相は藪の中です。
韓国は、この男性が自らの意思で「北越」(北朝鮮入国)したとみています。
9月29日の聯合ニュースに、こうあります。(韓国語版リンク)
해경은 A씨가 구명조끼를 입고 있었던 점을 고려할 때 어업지도선에서 단순히 실족했거나 극단적인 선택을 시도했을 가능성은 매우 낮은 것으로 판단했다.
これを、漢字語を直訳して翻訳すると、
海警は、Aさんが救命チョッキを着ていた点を考慮すると、漁業指導船から単純に失足したり、極端的な選択を試図した可能性は非常に低いものと判断した。
この部分、聯合ニュースの日本語版では次にように訳されています。
海洋警察庁は、男性がライフジャケットを着ていたため、漁業指導船から足を滑らせて海に落ちた、あるいは自殺を図った可能性は非常に低いと判断した。(同日本語版リンク)
「失足した」は、「足を滑らせて海に落ちた」、「極端的な選択を試図した」は、「自殺を図った」と訳されています。
このうち、「失足」は、日本では使われない、韓国語独特の漢字語です。
「極端的選択」もまた、韓国語独特の表現で、自殺の婉曲語にあたります。
7月に、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長がセクハラ疑惑をかけられて自殺した時も、「極端的選択」という言葉が盛んに使われ、日本語版でもほぼそのまま「極端な選択」と訳されていました。
中央日報7月11日社説(リンク)
【社説】死は気の毒だが、真実を伏せるべきでない…ソウル市長の極端な選択
韓国語にも自殺(자살)という言葉があるのですが、なぜこのような言い換えを行うかについて、ナムウィキに次のような説明がありました(リンク)。
メディアでは、極端的選択という醇化語を使って報道する場合が多い。特に見出しでこのような用語を使うが、これは自殺についての報道で、記事の見出しに「自殺」という言葉を使わないように勧める自殺報道勧告基準があり、メディアで自殺という言葉を使うと自殺の衝動を引き起こすという論理によるものだ。したがって、メディアで「極端的選択」という表現が出てきたら、ほとんどの場合、遠回しに自殺を指しているとみてよい。
日本でも、「強姦」のことを、報道では「暴行」とか「乱暴」などに言い換えることがあります。でも、「自殺」についての婉曲表現はありません。
韓国が、自殺という言葉について神経質になり、「極端な選択」などという婉曲表現を勧める背景には、近年の自殺者の急増が挙げられます。
過去25年間の、人口10万人当たりの自殺者の推移は以下の通り。
日本 韓国
1995年 17.9人 10.8人
2000年 25.2人 13.6人
2005年 25.5人 24.7人
2010年 24.7人 31.2人
2015年 18.9人 26.5人
2019年 16.0人 26.9人
2005年以前は日本のほうが単位人口当たりの自殺者が多かったものが、最近では韓国が上回り、OECD加盟国中1位になっています。
「極端な選択」という言い換え語の推奨は、増加傾向にある自殺率をなんとか引き下げようという韓国の、言語政策面からの対策なのでしょう。
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