感激の山葵

　二泊三日で大阪に出張してきました。

　日本に行って食べるものと言えば，しめさば，アジの開き，カキフライ，ハンバーグ…。これらは韓国でなかなか食べられない。

　ラーメンもはずせません。韓国のラーメンは，お店で食べてもインスタント（最近は日本風ラーメンも増えてきましたが）。

　そして蕎麦。

　韓国にもモミルという名の蕎麦がありますが，似て非なるもの。麺がやけにてらてら光っている。たぶんサツマイモかなんかのデンプンをつなぎに使っているんでしょう。
　つゆもいただけない。かつおぶしではなくて煮干し（ミョルチ）ベースで，甘ったるいものが多い。

　初日，午後の会議までちょっと間があり，通りすがりの蕎麦屋に入りました。機内食もしっかり食べたので軽めのざる蕎麦を注文しました。

　うれしいことに，薬味として本ワサビがついてきた。韓国では考えられないことです。

　長さ６～７センチの立派なワサビ，ミニおろし金で自分でおろす。半分ほどおろしたところで，

「これもったいないなあ」

と思っていると，その心を見透かしたかのごとく，テーブルのわきに小さなビニール袋がおいてある。

「余ったワサビはこちらに入れてお持ち帰りください」

　すばらしい心遣い！　感激ものです。

（ソウルに帰るまで三日あるけど，もつかなあ。ホテルの冷蔵庫に入れておけば大丈夫だろうか）

　私のはやる心はすでにして自宅の冷凍庫に保管されているマグロの刺し身に思いを馳せていました。

　その日，ビジネスホテルにチェックインするや，さっそく冷蔵庫にビニール入りわさびの半かけを安置しました。

　当然のことながら，その日の夜も飲み，次の日の夜は更に深く飲み，二日酔いでふらふらとチェックアウトした三日目，いとしきワサビはビジネスホテルの冷蔵庫に置き去りにされました。涙。